学会員メーリングリストアーカイブ (2010年)

[dbjapan] 祝:喜連川先生 電 子情報通信学会 業 績賞受賞


日本データベース学会の皆様

電子情報通信学会データ工学研委員長の石川です.

ご報告が遅れましたが,東京大学 喜連川優先生が電子情報通信学会の平成21年
度(第47回)業績賞を受賞されました.Codd Innovation Awardに続き,コミュ
ニティにとってもおめでたいニュースかと存じます.データベース分野からは,
平成14年度(第39回)の西尾章治郎先生以来となるかと思います.

長くなりますが,今月号の電子情報通信学会誌(7月号,527ページ)に掲載され
ました文面を送付させていただきます.

受賞タイトル:高性能データベース問合せ処理方式の開発
受賞者:喜連川 優
受賞理由:
 関係データベースシステムは,1970年代にその理論的基盤が構築され,その後
の継続的な研究開発により,今日では広汎に利用され,情報社会を支える基盤技
術として必要不可欠なものとなっている.
 受賞者は,関係データベースシステムの高性能化を実現する上で根幹となる問
合せ処理において,ハッシュ法に基づく手法を中心に数多くの手法を提案すると
ともに,実装・評価を行いその有効性を明らかにし,多大な貢献を果たしてきた.
関係データベースにおいて重要かつコストの高い処理として結合処理が挙げられ
るが,受賞者は,ハッシュ結合アルゴリズムの先駆的な研究を行った.その研究
は,1980年代初頭のGRACE関係データベースマシンの提案にさかのぼり,受賞者
は最も初期の主要な研究者の一人である.以降、動的デステージングハッシュ結
合方式,バケツ平たん化並列ハッシュ結合方式等多様な手法を創案するとともに,
数多くの論文を継続的にトップカンファレンスにおいて発表し,常に当該分野を
国際的にけん引してきたといえる.ハッシュ法に基づくデータベース問合せ処理
は,今日ではほとんどの商用のデータベース管理システムにおいて実装されてお
り,産業界に対しても多大な貢献を果たした.
 受賞者は手法の提案にとどまらず実際にシステムを構築してきた.共有メモリ
アーキテクチャに基づく並列関係データベースシステムである「機能ディスクシ
ステム」は,当時の主要な性能評価指標であったウィスコンシンベンチマークに
おいて,他のシステムに比べ圧倒的に高い性能を達成し,ハッシュ法を基盤とし
て関係データベース問合せの効率的な並列実行が行えることを実証した(本会論
文賞受賞).また,受賞者は,ハッシュ法に基づくアプローチを並列データマイ
ニングに適用した第一人者としても知られており,この貢献も大きい.
 ハッシュ法を基盤とした問合せ処理技術は,関係データベースのみならず,近
年大きく着目されているクラウドにおいても活用されている.Googleの
MapReduceに代表される大規模データの並列分散処理においてもハッシュ法に基
づく技術が利用されており,受賞者の研究成果が実社会へ更に波及していること
が分かる.
 上記を中心とし、大規模PCクラスタ形並列データベースや超高速ソータ等の業
績も含め,受賞者は2009年にACM SIGMOD Edgar F. Codd Innovation Awardを受
賞している.この賞はACMのデータベース研究部会であるSIGMOD (Special
Interest Group of Management of Data) により贈られる賞であり,関係データ
ベースの概念を提案した故Edgar F. Coddの名を冠した名誉ある賞である.デー
タベースの研究分野では最も権威のある賞として位置付けられている.現在まで
18名の受賞者が存在するが,日本人としてあるいはアジアの研究者として初の受
賞を果たしている.
 本会に限っても,データ工学研究専門委員会委員長を務め, 2005年にはフェ
ローを授与されている.また、2005年に東京で開催された,データベース分野に
おける主要国際会議であるICDE(Int. Conf. on Data Engineering)では会議委
員長を務め,成功に導いた.更に,科研費特定領域「情報爆発IT基盤」において
は,領域代表として国内の多くの情報系研究者から構成される大規模プロジェク
トを躍動的に推進しており,その功績は大きい.このように学会活動においても
その業績は極めて顕著であり,本会業績賞にふさわしいものである.