学会員メーリングリストアーカイブ (2013年)

DBSJ Newsletter Vol. 6, No. 2


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┃ 日本データベース学会 Newsletter
┃ 2013年6月号 ( Vol. 6, No. 2 )
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新緑が眩しい季節になったかと思えば,早くも西の方から梅雨入り,鬱陶しい季
節となりますが,会員の皆様におかれては健康にご留意いただきご活躍されます
ことを祈念いたします.

本号では,データベース・データ工学領域の最難関国際会議 ICDE2013 に,本学
会の助成を受けて参加された 奥 健太 氏による参加報告と,ICDE2013で口頭発
表の機会を得た 藤原靖宏 氏に体験談を語っていただきました.

本号ならびにDBSJ Newsletterに対するご意見,あるいは次号以降に期待する内
容についてのご意見がございましたら,news-com [at] dbsj.org までお寄せください.

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目次
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1. ICDE2013 に参加して
    奥 健太 立命館大学情報理工学部

2. ICDE2013 採録までの道
    藤原靖宏 NTTソフトウェアイノベーションセンタ

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●1● ICDE2013国際会議に参加して
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2013年4月8日から11日に,オーストラリアのブリスベンにて,29th IEEE
International Conference on Data Engineering (ICDE) が開催されました.26
ヶ国から,380名が参加しました.443本の研究論文が投稿され,うち95本の論文
が採択されました.採択率は21.4%でした.また,インダストリアル論文は投稿
数20本の投稿のうち8本が,デモ発表は69件のうち27件が採択されました.研究
論文セッションは32件あり,7パラレルで進行するという構成でした.研究論文
セッション以外にも,9件のチュートリアル,3件の基調講演,1件のパネルがあ
り,非常に充実した内容となっておりました.

パネルセッションでは,「Big Data for the Public」という題目で,司会者で
あるDimitrios Georgakopoulos氏(CSIRO, Australia)をはじめ,Karl Aberer
氏(EPFL, Switzerland),Ashraf Aboulnaga氏(U. Waterloo, Canada),
Kevin Chang氏(UIUC, USA),Xin Luna Dong氏(Google Mountain View)がパ
ネリストとして議論されました.ビッグデータを公開させるには,また公開され
ているビッグデータを利用するには,どのようなインフラが必要であるか,どの
ような課題があるか,について,聴衆者も巻き込んで白熱した議論が繰り広げら
れました.特に,ビッグデータを公開する側のインセンティブ,利用する側のイ
ンセンティブをうまく設計することで,両者が共に恩恵を受けられるような経済
モデルを踏まえたインフラを構築する,という考え方は興味深かったものです.

一方で,本当にすべてのデータを公開すべきなのか,プライバシー問題について
はどう解決するのか,データの所有権は誰にあるのか,データの良さをどのよう
に評価するのか,などなど多くの課題が指摘されました.ビッグデータを公開ま
た活用することにより受けられる恩恵は大きいものであるといえますが,それを
実現するためのインフラを整備するには依然として,さまざまな解決すべき課題
が残されており,今後も注目される研究分野であるといえます.

今回,私はACM SIGMOD日本支部による国際会議派遣によりICDE 2013に参加する
ことができました.本報告で取り上げたパネルセッションをはじめ,多くの著名
の研究者による基調講演やチュートリアル講演,研究発表などを聴講することが
でき,大変有意義な時間を過ごすことができました.このような貴重な機会をく
ださった,ACM SIGMOD日本支部の皆様に心より感謝致します.

(奥 健太 立命館大学情報理工学部 助教)


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●2● ICDE2013 採録までの道
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今回オーストラリアで開催されたICDE2013に参加いたしました.ICDEはSIGMOD,
VLDBに並ぶデータベースにおける最難関の国際会議で,普段聞けないような非常
に興味深い研究発表が多く,参加することで非常に刺激を受けました.

今回のICDEでは1件発表する機会を頂きました.研究内容はSimRankというグラフ
におけるノードの類似度に基づいて高速検索を近似的に行うというものになりま
す.実はこの研究はICDEがはじめて投稿した国際会議ではありません.この研究
は採録されるまでデータベース以外の分野の国際会議に何度か投稿していたので
すが,残念ながら不採録となっていました.手法としてはやや複雑な行列演算を
用いて検索の近似処理を行っています.しかし高速化が目的のためかデータベー
ス以外の分野の査読者にはそれほど興味を持ってもらえてないようでした.

不採録が続いたので分野をデータベースに変えてICDEに投稿することとしたので
すが,問題となったのがページ数です.ICDEの論文の長さは12ページですが,そ
れまでデータベース以外の国際会議に投稿していたので論文はおよそ10ページ分
しか用意できていませんでした.しかしICDEは内容の薄いことを追加しても通る
ほど簡単な国際会議ではありません.そのため近似手法を新たに1つ追加しまし
た.新たに追加した近似手法はもう1つの近似手法より経験的に精度は悪いが理
論的な誤差を持ちうるという性質があります.論文としては2つの近似手法を提
案しそれらの理論を説明するとともに,実験でそれらの有効性を確認するという
ストーリーに変更しました.結局これらの変更が功を奏したのか,無事に論文は
採録されることとなりました.

私自身ICDEに参加するのは2度目になります.初めて参加したのはICDEが東京で
開催された2005年になります.当時はデータベースの研究を始めたばかりの頃で
発表される研究を追いかけることだけで必死で,まさか自分が発表する機会に恵
まれるとは思いもしませんでした.また今回改めてICDEに参加してみると研究発
表だけでなくPhDシンポジウムやセミナーやパネルディスカッションなど様々な
企画が開催されていて,研究における知識や人脈の幅を広げる非常に有意義な機
会であると思いました.

次回のICDEはアメリカのシカゴで開催される予定です.データベースコミュニティ
を盛立てていくように,私を含めて若手の研究者が頑張っていかなければならな
いと感じました.

(藤原靖宏 NTTソフトウェアイノベーションセンタ 研究員)