学会員メーリングリストアーカイブ (2015年)

[dbjapan] DBSJ Newsletter Vol. 8, No. 1: 短期海外 研究, データ解析コンペティショ ンDB部会, DEIM2015, WSDM2015


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┃ 日本データベース学会 Newsletter
┃ 2015年4月号 ( Vol. 8, No. 1 )
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いつまで寒さが続くのかと思っていたところ、急に暖かくなり、そうかと思えば
また少し寒さが戻るというような気候の3月が終わり、いよいよ春がやって来ま
した。地域によっては桜がすでに満開を迎えていると思います。新しい年度の始
まりです。電子広報編集委員会は発足から2年となりました。これからも皆様と
共にますます発展していきたいと考えております。

さて本号では、海外における研究生活に関するご寄稿を頂きました。外国での研
究生活がどのようなものなのか、メリットや考えておくべき点などにも言及して
いただいています。さらに、3月に開催され今回で2回目となりましたデータ解析
コンペティションDB部会報告、同じく3月に開催され多くの方が参加されました
DEIM2015の開催報告、2月に開催されました国際会議WSDM2015の参加報告をご寄
稿いただきました。皆様のご参考になれば幸いです。

本号ならびにDBSJ Newsletterに対するご意見あるいは次号以降に期待する内容
についてのご意見がございましたら news-com [at] dbsj.org までお寄せください。

                                日本データベース学会 電子広報編集委員会

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目次
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1. 短期海外研究のすすめ
    川越恭二  立命館大学

2. データ解析コンペティションDB部会報告
    井上潮  東京電機大学

3. DEIM Forum 2015 開催報告
    天笠俊之  筑波大学

4. WSDM 2015 に参加して
    鈴木優  奈良先端科学技術大学院大学

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■1■ 短期海外研究のすすめ                  川越恭二 (立命館大学 教授)

2014年8月より3カ月間、カナダのマニトバ州ウィニペグにあるマニトバ大学を中
心として短期滞在での学外研究を行ってきました。この間、夏休みや国際会議参
加、他研究機関への訪問を含んでいますので実質的には9月中旬から10月末の1カ
月間半の滞在をカナダでしました。私は、これ以前にも、2002年6月の1カ月間
(NEC北米研究所)、2009年10月から3カ月間(ドイツLMU)、2010年4月から半年
間(オーストラリアUQ)に滞在して研究をすることができました。今回は、この
ような短期滞在で研究を行うメリットやその心得を私の経験からご紹介したいと
思います。

まず、短期海外研究のメリットですが、1)研究専念できること、2)共同研究によ
る人脈形成できること、3)短期滞在により異なる文化を知ることでしょう。短期
ですので、デメリットというか、考えておかなければいけないこともいくつかあ
ります。それらは1)短期での成果創出と、2)生活基盤の早期立ち上げです。これ
らについて以下に簡単に説明しましょう。

最初の「研究専念ができる」ということですが、これは、朝8時半から5時すぎま
で自分の研究に没頭することができるということです。もちろん、日本との電子
メールでのやり取りやSkypeでの電子会議もありますが、あらかじめ時間を決め
て対応していましたので、ほぼ毎日が自分の時間に使えます。日本では研究だけ
でなく講義、学生の研究の指導、様々な多数の会議出席などが入ります。研究途
中で割り込みが頻繁に発生します。この違いは非常に大きいといえるでしょう。

次は「共同研究による人脈形成」です。今回の短期滞在中にはマニトバ大の
Carson Leung先生だけでなく、同じ学科の先生とも知り合いになることができま
した。また、以前のLMUやUQでは若手の講師やポスドクもいましたので彼らとの
交流の機会が実現しました。実際に会い研究部門で研究生活を共に過ごすことが
できたというマインドは他の何にも代えがたい財産でしょう。

最後の「短期滞在により異なる文化を知る」というのは、研究から解放される土
日(私の研究スタイルです)は積極的に生活する町を知るようにしようというこ
とです。残念ながらウィニペグには観光の目玉というものはなく広大な大地しか
ありません。そこで、あちこちにあるショッピングモール巡りとか、フランス人
居留地訪問とか、人権博物館見学とか、オペラ鑑賞、アイスホッケー観戦などを
1カ月半で堪能できました。そこは真冬にはマイナス30度にも気温が下がる寒冷
地ですので、ショッピングモールのフードコートには幅8メータくらいある大き
な薪暖炉が2台も設置してあったのには驚きました。また、ファーストネーショ
ン(First Nations)と呼ぶ人々と西洋からやってきた人々との軋轢や謝罪の歴
史も現地で初めて知ることができましたし、△○b∩∪c(フォントの関係で正
確ではありません)のような言語の存在にもびっくりしました。今でもこの言語
は使われているようです。

このようなメリットだけでなく、考えておくべき最初の点は、「成果の短期創
出」です。短期滞在での研究でも成果を期待されますので、短期だから成果が出
せないというよりも短期でも成果が出たという考えにシフトすべきでしょう。も
ちろん、1カ月の研究でトップ国際会議に採択されるような論文は書けません
し、書かない方がいいでしょう。むしろ、滞在中に投稿可能な論文を執筆するこ
とだと思います。論文のトピックとしてこれまでの研究とは離れ新しい話題を取
り込んだ何かを考えると意欲がわいてきます。論文を共同で執筆し投稿するのが
目標です。採択か不採択かは問いません。私の場合には、最初の投稿での採択は
ありませんでした。不採択の場合にでも不採択理由を帰国後に対応した改良版を
投稿すれば別の国際会議で採択されることになります。最初から帰国後に論文を
執筆しようと思っていても、帰国後には時間がとれずに論文が完成できなかった
というのはあり得ます。とにかく帰国までに論文投稿してしまいましょう。

二つ目の点は、「生活基盤の早期立ち上げ」です。一番大きなのは家でしょう。
おそらく世界の多くの都市で日本でいうウィークリーマンションとかマンスリー
マンションのようなアパートメントがダウンタウンにあります。私が利用したの
は、すべての家具や家電がついているだけでなく食器や調理道具も付いていて、
さらに1週間1〜2回のベッドメイキングが付くアパートを利用しました。これ
で、到着してすぐに生活可能でした。家賃は1ベッドルーム(+居間、台所、浴
室)で月1600カナダドル(含インターネット)でした。市中心まで徒歩5分で行
け、そこからどこにでもバスで行けます。郊外から郊外へのバスは必ずダウンタ
ウン経由というルートになっていますので。車は必要ありません。

今はグローバルでインターネット全盛の社会ですので、短期滞在は必要ないとい
う意見もあるでしょう。が、グローバルでインターネット全盛社会だからこそ、
人と人との物理的接触をより重視すべきだと私は思います。短期での研究を実行
に移すのは制度有無や家族状況等から難しいかもしれませんが、短期での研究滞
在を経験することは他に代え難い貴重な経験だと思います。これから若い方々が
外国で積極的に短期滞在することで大きく羽ばたかれることをお祈りします。

 (川越恭二  立命館大学 情報理工学部 教授)

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■2■ データ解析コンペティションDB部会報告  井上潮 (東京電機大学 教授)

データ解析コンペティションは,「共通の実データを元に,参加者が分析を競
う」ことを目的として,平成6年度から毎年開催されています.平成24年度まで
は日本オペレーションズ・リサーチ学会と共同でこのコンペティションの予選会
を行ってきましたが,平成25年度からはACM-SIGMOD日本支部と日本データベース
学会ビジネスインテリジェンス研究グループの共同体制で,データベース分野独
自の予選会(DB部会)を開設しています.今年度のDB部会の委員構成は,次の通
りです.
主査:井上潮(東京電機大学),関根純(専修大学),委員:宇田川佳久(東京
工芸大学),大塚真吾(神奈川工科大学),鬼塚真(大阪大学),北山大輔(工
学院大学),波多野賢治(同志社大学),増田英孝(東京電機大学),アドバイ
ザ:川越恭二(立命館大学).

平成26年度は8月8日から3月31日までの期間で,全日本食品株式会社および株式
会社良品計画の2社からご提供いただいた実データを用いて実施しました.DB部
会への参加は10チームで,12月下旬に中間発表会(ウェブ上),2月25日に最終
発表会を開催しました.DB部会委員による厳正な審査の結果,「有用性が高い分
析結果を生み出す部分データの探索手法」を発表した鬼塚研チーム(大阪大学)
が最優秀賞,「ACO型時系列パターン抽出法による解析」を発表したTSUGAIKEチ
ーム(電気通信大学)が優秀賞を獲得しました.両チームは,3月13日に開催さ
れたコンペティション全体の成果報告会に出場しましたが,残念ながら入賞はで
きませんでした.

今年度のDB部会の活動において良かった点は,参加チーム数が昨年度と比べて倍
増したこと,大学だけでなく企業のチームにも参加してもらえたこと,各チーム
の発表内容が充実してきたことなどが挙げられます.逆に残念だった点は,最終
報告内容のレベルが極端に低いチームがあったこと,DB部会の代表チームと他部
会の代表チームの間にまだレベルの差があったことなどです.来年度は3年目に
なるので,さらに参加チーム数を増やすとともに,各チームのレベルを向上さ
せ,コンペティション全体の成果報告会で入賞できるようにしたいと考えていま
す.今後とも皆様方のご理解とご参加をよろしくお願い致します.

参考URLは,以下の通りです.
経営科学系研究部会連合協議会: http://jasmac-j.jimdo.com/
データ解析コンペティションDB部会: http://www.sigmodj.org/dbcomp/

 (井上潮  東京電機大学 工学部情報通信工学科 教授)

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■3■ DEIM Forum 2015 開催報告              天笠俊之 (筑波大学 准教授)

第7回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM Forum 2015)
第13回日本データベース学会年次大会
http://db-event.jpn.org/deim2015/

主催:電子情報通信学会データ工学研究専門委員会
      日本データベース学会
      情報処理学会データベースシステム研究会
協賛:筑波大学知的コミュニティ基盤研究センター

日程:2015年3月2日(月)〜4日(水)
会場:磐梯熱海ホテル華の湯(福島県郡山市熱海町熱海五丁目8-6)

【報告者:実行委員長 筑波大学 天笠俊之】

データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIMフォーラム)は,デー
タ工学と情報マネジメントに関する国内最大の研究集会です.2015年は,福島県
郡山市の磐梯熱海ホテル華の湯で開催されました.この会場は,2013年に続き2
度目となります.館内に多くの温泉があることが目玉で,今回も多くの方から好
評を頂きました.

◎DEIMフォーラム2015開催概要・ハイライト

今回は過去最多の332件の研究発表があり,545名と数多くのみなさまのご参加を
頂きました.

プログラムのハイライトですが,まず異なるトピック/分野から2件の招待講演
を頂戴しました.情報通信研究機構 隅田様,河井様,木俵様からは,「ビッグ
データで多言語音声翻訳技術はここまできた -2020年に言葉の壁を越える社会を
実現するグローバルコミュニケーション計画-」と題して,音声処理技術と翻訳
技術の側面から多言語音声翻訳の最新の動向について分かりやすく丁寧なご講演
をいただきました.また,JAXA 海老沢様からは,「科学衛星データアーカイブ
の目指すもの」と題して,科学衛星データ利活用の歴史とアーカイブの意義につ
いて熱く語っていただきました.

特別セッションでは,新進気鋭の若手研究者3名の方に楽しいご講演を頂きまし
た.「郷に入っては…新しい分野へのチャレンジを通して学んだこと」(阪大荒
瀬様)では,ご自身の経験を踏まえた研究の楽しさ,難しさ,コツなどを,
「Inside Apache Hadoop: オープンソース開発の様子と研究者としての関わり
方」(NTT 小沢様)では,なかなか知り得ないHadoop開発コミュニティの様子や
その中でのご自身の活動などを,「1000コアとNVRAM向けの新たなDBMS」
(HP Lab. 木村様)では,現在開発中の新しいデータベースの概要を,それぞれ
とても楽しく,熱く語っていただきました.

日本データベース学会表彰式では,各種表彰が執り行われました.紙面の都合で
詳細は割愛させていただきますが,受賞された皆様大変おめでとうございまし
た.日本データベース学会功労賞記念講演では,植村先生から,「職業としての
研究者 〜大卒50周年記念同窓会で考えたこと〜」題して,さまざまな話題とご
示唆に富んだご講演を頂戴しました.こちらはスライドがDEIMのページにアップ
ロードされていますので,みなさまぜひご覧下さい.富士通株式会社 安永様か
らは,「IoT時代のデータベース−誰もが簡単に情報活用できる未来へ」と題し
て,富士通の学会との関わりから,データベース開発の将来についてお話を頂戴
しました.

夜は,恒例のBoFセッションが開催されました.トピックは,「データ工学知恵
袋〜困ったことはベテランに聞け!〜」,「研究職は本当にブラック!?若手研
究者交流会」,「企業人が語る! 研究生活の光と闇」,「Academic Environment
and Career Planning in Japan -- A Point of View from Gaijin」,「若手研
究者必見!外部研究資金の獲得と研究者キャリアの構築」とバラエティに富んで
いて,どれも夜遅くまで盛り上がっていたようです.

◎DEIMフォーラム運営の裏話

せっかくの機会ですので,運営側の裏話を少し.といっても,会場に来られてい
た方はお気付きだったと思いますが,今回,初めてスタッフにインカム付きのト
ランシーバが導入されました.いわゆる昔ながらのトランシーバなのですが,効
果は絶大で,運営の労力がかなり削減され,さらにスタッフがひと目で分かると
いう利点もありました.同じようなイベントを運営するときにはオススメです.

◎おわりに

DEIMフォーラムのような規模の大きな学会は,準備から後処理まで含めると,ほ
ぼ1年がかりの大仕事です.数多くの実行委員会,プログラム委員会,コメンテ
ータ,学生スタッフ,その他のみなさまのご協力を得て,つつながく開催するこ
とができました.ご尽力頂いたみなさまに心から感謝申し上げます.また,学会
は発表者と参加者がいて初めて成立するものです.遠路福島までご参加頂いたみ
なさまにも心より御礼を申し上げます.最後に,福島県,および,郡山市からも
多大なご支援を頂戴しましたことを付け加えさせて頂きます.

学会運営は,基本的にボランティアで大変なこともありますが,大勢のスタッフ
の協力で運営がうまくいったときの達成感は他では得難いものです.DEIMに限ら
ず,機会があればぜひ運営側としてもご参加頂ければと思います.

次回のDEIMフォーラムですが,既に検討が進んでいると伺っています.場所と日
程が決まり次第,各種チャネルでアナウンスがあると思われます.次回も,DEIM
フォーラムでお会いしましょう!

 (天笠俊之  筑波大学 システム情報系 准教授)

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■4■ WSDM 2015 に参加して
                         鈴木優 (奈良先端科学技術大学院大学 特任准教授)

2015年2月3日から5日まで,中国の上海でACM WSDM(Web Search and Data
Mining)へ参加しました.WSDMは,Web検索やデータマイニングに関するトップ
カンファレンスの一つです.復旦大学の前にある道を挟んだところにある,クラ
ウンプラザ上海復旦(上海復旦皇冠假日酒店)というホテルで開催されました.
上海の空港からバスで1時間半くらい,バス停から徒歩で30分という,交通の便
はあまり良くありませんでした.周りはほぼ復旦大学の施設なので,買い物をす
る場所も無ければレストランもありません.

参加者数は25か国から272名,そのうち36%は中国(開催国),27%はUS,14%は韓
国,日本は5%で4位でした.アカデミアの参加者と産業界の参加者は丁度半々,
産業界からはMicrosoft,Alibaba,Google,Yahoo!,Baiduなど42の企業,アカ
デミアからは73の大学,研究所から参加されています.

投稿数は238件,そのうち39件(16.4%)が採録されています.このうち21件はロ
ングペーパー,18件はショートペーパーです.全ての論文はポスターセッション
でも発表があります.日本からの投稿は6件ほどだったようですが,全て不採録
でした.著者全員がアカデミア,もしくは産業界という論文よりも,アカデミア
と産業界のどちらからも著者に入っている論文のほうが採択率が高いという結果
が得られているようです.

2011年から2014年まで350件以上の投稿があったにもかかわらず,今年は250件を
下回る大幅な減少となっていたようです.この原因の一つとして研究分野が絞り
込まれ過ぎているのではないか,ということが考えられ,解決策としてソーシャ
ルネットワーク,ビッグデータ処理基盤,Webのアプリ化などを分野に取り入れ
ようという話でした.

私の印象としては,Webやソーシャルネットワークなど若干派手な印象のある研
究分野がターゲットであるにもかかわらず,地味で堅実な研究が多いと思いまし
た.投稿される論文のトピックはsocial networkが目立ちます.あとは
sentiment analysis, ontology analytics, recommendations, topic models,
matrix factorizationなどです.一方で採録された論文のトピックはsocial
networkは無く,あるのはonline ranker evaluation, media, engagement
periodicityなどです.投稿論文と比較してかなり異なります.ちなみに今回の
best paperは,inverted indexの圧縮による効率化についてでした.inverted
index自体は非常に古い話題であると感じましたが,内容を見ると堅実で,興味
深い話題であると感じました.

2016年はアメリカのスタンフォード大学,2017年はイギリスのケンブリッジ大学
で行われます.2018年はアメリカ,2019年はアジアということです.

 (鈴木優  奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 特任准教授)

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