学会員メーリングリストアーカイブ (2015年)

[dbjapan] DBSJ Newsletter Vol. 8, No. : iDB Workshop 2015, VLDB 2015, KDD 2015, IJCAI 2015


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┃ 日本データベース学会 Newsletter
┃ 2015年10月号 ( Vol. 8, No. 4 )
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夜空には月が冴えわたる季節になりました.今月の下旬にはオリオン座流星群が
見頃を迎えるそうです.仕事・研究の間に少しだけ夜空を見上げてはいかがでし
ょうか.

さて本号では今年の8月に奈良で開催された iDB Workshop 2015 の開催報告につ
いてご寄稿頂きました.iDB Workshop 2015 はデータベース分野を中心にデータ
マイニングや情報検索などの関連する分野における若手研究者を対象にした会議
です.来年以降 iDB Workshop に参加される方のご参考になればと思います.ま
た国際会議として VLDB2015, KDD2015, IJCAI2015 の参加報告についてご寄稿頂
きました.それぞれの会議の特徴や技術のトレンドなど,皆様のご参考になれば
幸いです.

本号ならびにDBSJ Newsletterに対するご意見あるいは次号以降に期待する内容
についてのご意見がございましたら news-com [at] dbsj.org までお寄せくださ
い。

                                日本データベース学会 電子広報編集委員会



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目次
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1. iDB Workshop 2015を終えて
    上田 真由美 流通科学大学

2. VLDB 2015 参加 & 発表報告
    塩川 浩昭 NTT

3. KDD 2015 に参加して
    郄橋 翼 NEC

4. IJCAI 2015 に参加して
    藤原 靖宏 NTT

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■1■ iDB Workshop 2015を終えて   上田 真由美 (流通科学大学 准教授)

2015年8月4日から6日の3日間,東大寺総合文化センターにおいて,第7回デー
タベース,Web,情報マネジメントに関する若手研究者国際ワークショップ
(The 7th International Workshop with Mentors on Databases, Web and
Information Management for Young Researchers),通称iDB Workshop 2015を
開催しました.
iDB Workshop は,データベースやデータ工学,情報検索に関連する分野の若
手・中堅研究者を対象とした会議です.今年度は,実施形態を大きく変え,海
外研究者との連携を深めたい若手・中堅研究者をサポートするというコンセプ
トのイベントとしました.若手・中堅研究者から,議論をしたい海外研究者の
提案を募集し,提案者を中心としたミニワークショップを実施しました.この
ミニワークショップは,海外研究者との共同研究や,国際会議の開催,データ
ベース分野の新たなトピックを開始するきっかけとして活用していただきたい
と考え,実施しました.また,海外からお越しいただいた先生方に招待講演を
行っていただきました.
今回は,総勢で70名の参加者がありました.1日目には,海外からお越しいただ
いた先生方による招待講演が行われました.Jeffrey Xu Yu先生(Chinese
University of Hong Kong)による"Explore online social networks",Davood
Rafiei先生(University of Alberta)による"In search of the missing query",
Mohamed F. Mokbel先生(University of Minnesota)による"Towards a microblog
data management system",Christian S. Jensen先生(Aalborg University)に
よる"Recent advances in local search"という演題で,非常に興味深い内容
のご講演を行っていただきました.各先生方のご講演の後には,会場から多く
の質問が出ており,参加者にとって大変充実した時間となったと思います.さら
に1日目の夕方に,懇親会を実施しました.海外の著名な先生方を囲んで,和や
かな雰囲気の中,さらに充実した議論が行われていました.国内外の研究者間
のネットワーク作りに役立ったと思います.
2日目には,ミニワークショップを4件実施しており,午前午後を通して大変充実
した議論が行われていました.このミニワークショップは,海外研究者の招へい
を提案してくださった4名の先生方にコーディネーターをお願いし,海外からお越
しいただいた4名の先生方にはメンターとしてご参加いただきました.1件目は加
藤誠先生(京大)による"Mini Workshop on Novel Web Search Interfaces and
Systems",2件目は塩川浩昭様(NTT)による"Towards a Large-scale Graph Data
Management",3件目は白川真澄先生(阪大)による"Workshop on Event Detection
Using Microblogs",4件目が原隆浩先生(阪大)による“Workshop on Spatio-
Temporal Data Retrieval"というテーマで,本コミュニティのメンバーにとって
大変興味深いテーマのワークショップを実施していただきました.ミニワークシ
ョップは,一部を公開して行っており,一般の参加者に対しても有意義な情報が
提供されたと考えています.ミニワークショップ代表者からは,今後さらなる連
携ワークショップの実施を検討している,との話も聞かれました.また,海外か
らお越しいただいた先生からも,充実した議論にご満足されたとの感想も聞かれ
ました.
最後となりましたが,実行委員長の中野先生(芝浦工大),実行副委員長の小口先生
(お茶の水大),森嶋先生(筑波大),プログラム副委員長の原先生(阪大),ローカ
ルアレンジメント委員長の木俵様(NICT),宮森先生(京産大),財務委員長の北山
先生(工学院大),鈴木先生(奈良先端大),国際関係委員長の江口先生(神大),清
水先生(京大),広報委員長の横山先生(静大)をはじめスタッフの先生方に,迅速
かつきめ細やかなご対応をいただきました.また,エクスカーション委員長の
Jatowt先生(京大),山本先生(京大),渡辺先生(筑波大)には暑い時期に海外の先
生方に奈良をご紹介いただきました.すべてのお名前を挙げることはできません
が,iDB2015に関わったすべてのスタッフの方々のお陰で,無事にiDB2015を成功
させることができました.また,日本データベース学会,電子情報通信学会デー
タ工学研究会,情報処理学会データベースシステム研究会にご支援いただきまし
た.この場をお借りして感謝の意を表したいと思います.

(上田 真由美  流通科学大学 准教授)

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■2■ VLDB 2015 参加 & 発表報告   塩川 浩昭 (NTT)

2015年8月31日から9月4日にかけて開催された VLDB2015 に参加し,論文発表を
行いました.VLDB は SIGMOD や ICDE に並ぶ DB 分野のトップ会議の一つで,
今回で満40周年の節目を迎えた歴史のある会議です.今回は "Big Data" を扱う
VLDB に相応しいとのことから "Big Island" と呼ばれるアメリカ・ハワイ島で
開催されました.会場はハワイ島西部に位置するコナ空港からタクシーで30分
ほど溶岩地帯を走ったところにあり,非常に眺めの素晴らしい場所でした.

今回の会議で最も印象的だったのは Stonebraker 先生によるチューリング賞記
念講演です.先生ご自身が自転車でアメリカを横断した経験になぞらえて,こ
れまで立ち上げたプロジェクトを振り返るという内容でした.講演の中で先生
は繰返し "Make it Happen" が大事だとおっしゃっていました.ここでいう
"Make it Happen" というのは,良いアイデアは早く実装しようというニュアン
スのもので,先生ご自身の経験から良いアイデアが2〜3個あるならばさっさと
プロトタイプを作り,会社を起こしてプロダクトにしてしまえと主張していまし
た.また,良いアイデアを得るにはとにかくユーザと話すことが大事だとおっ
しゃっており,産業界で多くの貢献をされてきた Stonebraker 先生ならではだ
と感じました.VLDB ではこれ以外にも,初日の reception でのチューリング賞
受賞祝賀セレモニーや,2日目には Stonebraker 先生らによる VLDB の歴史を
振り返るパネル,3日目には C-Store が VLDB 10-Year Best Paper Award に選
ばれるなど,まさに Stonebraker 先生づくしの会議となりました.

一般セッションでは,最も投稿件数が多かったのは "Text, Semi-structured data
and Data Types"(クラフ系を含む)で,次いで "Database Engines" だったと
のことですが,採録件数では "Database Engines" が最も多く採録されており,
直近の VLDB と比較するとグラフ系の勢いの弱まりを若干感じつつ,やはりシ
ステム系の研究が強いという印象を受けました.また,例年とは異なり,
「Novel Hardware Architectures」という名を冠したセッションが多く,いずれ
も立ち見が出るほどの集客があった点も印象的で,コミュニティの興味が集まり
つつあると感じました.実はこの傾向は SIGMOD2015 でも報告されており,引き
続き注視する必要がありそうです.

また,今回は私も研究発表の機会を頂きました.内容は,大規模グラフからク
ラスタやハブノード,外れ値ノードを超高速に検出するというもので,DEIM
2014 で発表し iDB Workshop 2014 でメンタリングしていただいた論文が今回
採録となった経緯があります.従来のクラスタリング技術は基本的に全てのエッ
ジを計算する必要があることから極めて大きな計算時間を要したのですが,本
研究ではグラフのクラスタ性に着眼することで,計算コストの大幅な削減を実
現しました.発表やポスターでは多くの方々から質問をいただきました.特に
印象的だったのは Facebook の研究者で,彼らは事前にアポをとってきたうえ
でポスターに来てくださり,非常に濃い議論をすることができました.

統計情報については,今回はリゾート地開催ということもあり参加者は約800名
でした.そのうち,北米からの参加が半数以上を占めており,予想に反して日
本やアジア各国からの参加は少ない印象でした.Research Track の投稿数710
件のうち採択数は139件でほぼ例年通りでした.VLDB は2008年頃から2 round 制
の査読方式を採っていますが,1st round での採択(一発採録)率は4.8%,
2nd round での採択率は84.6%となっており,1st roundを通過することができ
れば高い確率で採録になる傾向のようです.

2016年の VLDB はインドのニューデリーで開催,それ以降は,2017年はドイツ
のミュンヘン,2018年はブラジルのリオデジャネイロ,2019年は北米(予定)
とのことで,これからも世界各地を巡るように会議が開催されるようです.
現状の VLDB は欧米からの投稿・採録がマジョリティであり,日本勢はまだま
だ薄い印象です.皆さん,興味を持たれた方は是非VLDBへの投稿をご検討いた
だければ幸いです.

(塩川 浩昭 NTT)

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■3■ KDD 2015 に参加して  郄橋 翼 (NEC)

2015年8月10日から13日にかけて,データマイニングに関するトップ国際会議
ACM SIGKDD Conference on Knowledge Discovery and Data Mining (KDD) 2015
に参加しました.KDD はデータマイニングの基礎理論から応用まで幅広いトピ
ックを対象とした会議です.

第21回目の開催となる KDD2015 は冬のオーストラリア・シドニーで開催されま
した.参加者数は1182 人と大変盛況であり,内,アカデミアが533,学生が249,
企業から502,政府系・官公庁から120人と,産学官から幅広く関心を集めてい
ました.なお,昨年比では参加者数は約半減ですが,それでも過去2番目の規
模です.また,全日程で昼食と夕食(バンケットやレセプション)が提供され,
羽振りの良さに驚くとともにビッグデータバブルのようなものを感じました.

リサーチトラックには819件の論文投稿があり,160件が採択されました(採択率
19.5%).近年のKDD と比べると高い採択率です.日本からも多くの論文が採択
され,著者数では米国,中国に次ぐ3 番目とのことです.リサーチトラックで
は,ソーシャルやグラフ関連の研究が引き続き多く,ヘルスケアや特定のアプ
リケーションに関する研究も比較的多かったのではないかと思います.実課題
を解くことが重視されているように感じました.

KDD2015 は,他にも4件のキーノート,11件の招待講演,15の併設ワークショッ
プ,12件のチュートリアル,2件のパネルトークなどバラエティに富んだ内容で
した.VISA や MOOC など企業からの講演も多く,保有するデータや分析事例等
が紹介され,高い関心を集めていました.また,企業や官公庁のブースも賑わ
っていました.このように KDD は様々な背景の参加者に意義のある会議とし
てオーガナイズされていると感じました.

過去の実績に与えられる KDD Innovation Award は,著名なクラスタリング法
DBSCAN の Hans-Peter Kriegel 先生に送られました.また,併設のデータマイ
ニングコンペティション KDD Cup 2015 では,日本の企業連合チーム
FEG&NSSOL [at] DataVeraci が準優勝という素晴らしい成績を挙げていました.今回
の課題は,オンラインコースの脱落者予測でした.

来年のKDD は米国のサンフランシスコで開催されます.引き続き大きな盛り上
がりが期待されます.皆様も是非投稿およびKDD Cup へのチャレンジをご検討
頂ければと思います.

(郄橋 翼 NEC)

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■4■ IJCAI 2015に参加して  藤原靖宏 (NTT研究所)

2015年7月25日から31日までに開催された IJCAI2015 (The 24-th International
Joint Conference on Artificial Intelligence ) に参加し,論文発表を行っ
てきました.IJCAI は AAAI と双璧をなす人工知能のトップカンファレンスで,
今年はアルゼンチンのブエノスアイレスで開催されました.南米での開催は初
めてとのことです.ブエノスアイレスはアルゼンチンの首都で,会場へは空港
から1時間ほどでアクセスできます.しかし南米にあるため日本からは非常に
遠くに感じました.アルゼンチンは2001年にデフォルト(債務不履行)に陥っ
たのですが,今でもインフレに起因する物価上昇が続いています.また必ずし
も治安は良いとは言えず,私も危うく難を逃れたものの身に危険を感じること
がありました.

今回の投稿数は1,996本でそのうち575本の論文が採録されました.採録率は
28.8%で例年通りでした.IJCAI2011 と IJCAI2013 の投稿数はそれぞれ1,325本
と1,473本で,今回の投稿数は今まででもっとも多かったとのことです.投稿数
は欧米,中国,アメリカの順で多く,日本からはエリア別で6番目の60本近く
の投稿があったとのことです.私は Belief Propagation という機械学習の手
法の高速化について発表を行ったのですが,投稿された論文も機械学習におけ
るものが一番多く,続いてエージェントや知識表現などの分野の論文の投稿が
多かったとのことです.講演を直接聴いた感覚ではゲーム理論,自然言語処理,
ロボティクスについての論文も多く,非常に多くの分野の論文が採録されてい
る印象を持ちました.

今回IJCAIの投稿数は過去最多を記録しましたが,これは AAAI の開催時期が
変更になったことが大きいと考えられます.IJCAI と AAAI は人工知能の分野
のトップカンファレンスですが,2年前まで両方の会議ともに冬に投稿で夏に
開催というスケジュールで運用されていました.そのため両方の会議に同時に
投稿することはできず,もし論文が不採録なら1年間投稿を待たなければなら
ないという状況でした.それが去年からは AAAI の投稿・開催が半年移動した
ため,もしどちらかの会議に投稿し不採録となっても半年後には再度投稿でき
る形になりました.また会議の参加者に聞いたところ,IJCAI に投稿する理由
としてページ数が短いことがありました.データベース系の国際会議が12ペー
ジなのに対して,人工知能の国際会議はせいぜい7ページ程度なので投稿しやす
いとのことでした.

今回の IJCAI のテーマは「AI and Arts」でした.人工知能と芸術がテーマと
いうのはかなりチャレンジングに思いましたが,会議ではピアノの演奏から自
動的に楽譜を検索する研究や 1/f の揺らぎのある音を生成する研究などが発表
されていました.また会議ではロボットと人工知能の未来についての招待講演
なども行われ,ロボットの軍事利用における人工知能研究についての議論など
も行われていました.このことは報道もあったのでご存知の方もいらっしゃる
かもしれません.
http://www.sankei.com/life/news/150802/lif1508020014-n1.html

IJCAI では研究の多様性は認めつつ,コミュニティとして核となるビジョンを
共有していくことで人工知能分野全体を大きくしていると会議に参加して思い
ました.この多様性の許容とビジョンの共有というのは今後日本のデータベー
スコミュニティのあり方としても参考になると思いました.次回の IJCAI はア
メリカのニューヨークで2016年7月9日から15日で開催されます.関連の深い研
究をされている方,興味を持たれた方は投稿をご検討いただくと良いかもれま
せん.

(藤原靖宏 NTT研究所)

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