学会員メーリングリストアーカイブ (2015年)

[dbjapan] DBSJ Newsletter Vol. 8, No. 5: UbiComp 2015, CIKM 2015, ACMMM2015



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┃ 日本データベース学会 Newsletter
┃ 2015年12月号 ( Vol. 8, No. 5 )
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今年もはや師走,一年の締めくくりの時期となりました.論文執筆をはじめ,
「結果にコミット」しつつ,最後まで気を引きしめて参りたいものです.
 
本号では,今年9月に大阪で開催された,ユビキタスコンピューティング分野の
トップカンファレンス「UbiComp」をはじめ,情報検索,データベース,ナ
レッジマネジメントおよびマルチメディア分野での最重要国際会議「CIKM」と
「ACMMM」について取り上げます.会議の特徴や研究内容の傾向に加え,運営サ
イド視点でのご示唆など,貴重な情報をご寄稿いただきました.より多くの皆様
にとって,世界での活躍につながるよい刺激になれば幸いです.
 
本号ならびにDBSJ Newsletterに対するご意見あるいは次号以降に期待する内容
についてのご意見がございましたらnews-com@dbsj.org までお寄せください.

                                日本データベース学会 電子広報編集委員会

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目次
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1. UbiComp 2015 開催・参加報告
    前川卓也  大阪大学

2. CIKM 2015 参加報告
    酒井哲也  早稲田大学

3. ACMマルチメディア2015に参加して
    井手一郎  名古屋大学

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■1■ UbiComp 2015 開催・参加報告           前川卓也 (大阪大学 准教授)

The 2015 ACM International Joint Conference on Pervasive and Ubiquitous
Computing (UbiComp 2015) 
日時:2015年9月7日(月)- 9月11日(金)
場所:グランフロント大阪

2015年9月7日から11日まで,グランフロント大阪にてUbiComp 2015が開催されま
した.UbiCompはユビキタス・モバイルコンピューティング分野の世界トップク
ラスの国際会議であり,2013年からウェアラブルコンピューティングのトップ会
議である International Symposium on Wearable Computers (ISWC)と併設して
運営されています.今回のUbiComp/ISWCは参加者数が歴代最多の861名となり,
157件の口頭発表セッション(計30セッション),68件のポスターセッション,
43件のデモセッションが組まれました.UbiCompのオーラル採択率(フル
ペーパー,ノート合算)が30.5%(本会議発表数120件),ISWCのオーラル採択率
(フルペーパー,ノート,ブリーフ合算)が30.6%(同37件)であり,昨年の採
択率(UbiComp: 20.7%)に比べて採択率が上昇しました.

口頭発表では,これまでのUbiComp/ISWCの流れと同様,センシング手法や行動認
識,屋内位置推定などの発表が多く見られましたが,それらに加えて行動認識の
評価方法に疑問を投げかける論文やこれらの技術を基にした行動のアセスメント
(評価)に関する発表も見られました.また最近のトレンドに乗って,深層学習
をコンテキスト認識に取り入れた研究なども見られ,例えばDNNを組み込みデバ
イス上で動作するように改良する研究や一人称視点映像による行動認識にDNNを
利用した研究などが発表されました.

今回のUbiComp/ISWCは日本開催ということもあり,大変喜ばしいことに日本から
も多くの口頭発表論文が採録されていました.国内で開催される会議の場合,旅
費のコストを心配せずに多数の論文を投稿できるためかと思われます.大阪大学
の私の研究グループも旅費がほぼかからないため心置きなく論文を投稿すること
ができ,幸いにも3本のフルペーパーが採録されました.ただこの分野では相変
わらずアメリカ勢が強く,私が調べた限りでは最も論文が採録されていたのは,
4本のフルペーパーを通していたUniversity of Washingtonのグループでした.

私は今回のUbiCompではsecretaryという名の役職でGeneral chairの名古屋大学
間瀬健二教授の元で助成金などの金銭周りに関する仕事に従事し,グランフロン
トなどの会場費や食費がかさむ場所で行われる会議でのお金の大切さを学ばせて
いただきました.また,TPCメンバーとして少しだけですが論文の採否判定にも
貢献させていただきました.UbiCompやPerComなどのユビキタスコン
ピューティング分野のトップ会議では,論文の採否判定会議(TPC meeting)が
Face to faceのミーティングにより行われており,基本的にTPCメンバーが全員
参加する形式が取られています.最後にこれらの国際会議の判定会議に参加した
際の感想を共有させていただこうかと思います.多くの国際会議では1本の論文
を複数のTPCメンバーとexternal reviewerが査読します.External reviewerは
判定会議には参加せず,TPCメンバーのみで話し合って採否が決定されます.こ
のとき,TPCメンバーとexternal reviewerのスコアの合計が同じ論文であって
も,TPCメンバーがより高得点を付けた論文ほど通りやすい傾向にあります.
External reviewerが高いスコアを付けてくれたとしても,会議でchampion(支
持)してくれる人がいなければ,やはり不利に働きます.高いスコアを付けてい
たTPCメンバーが都合により会議を欠席することもあります.このあたりは運次
第なので,論文の採否にも多少なりとも運の要素が絡んできます.こればかりは
対処しようのないことですので,私としてはできるだけ数多くの論文を投稿され
ることをお薦めします.質の高い論文を多数投稿することはかなり命を削ります
が,事前からある程度余裕を持ってスケジューリングすればきっと何とかなりま
す.

来年のUbiComp/ISWCはドイツのハイデルベルグで開催されます.是非とも投稿を
ご検討されてはいかがでしょうか.

(前川卓也  大阪大学大学院 情報科学研究科 准教授)

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■2■ CIKM 2015 参加報告                 酒井哲也 (早稲田大学 教授)

CIKM 2015 (The 24th ACM International Conference on Information and
Knowledge Management) は10月19~23日に豪メルボルンで開催された.筆者はフ
ルペーパー1件の共著者,および併設ワークショップECol 2015 (Evaluation on
Collaborative Information Retrieval and Seeking) の共同主催者として参加
した.ただし参加できたのは10月21日からであり,会議の全体像を報告すること
ができないことを予めお断りしておく.また,CIKMは情報検索・データベース・
ナレッジマネジメントを横断するトップカンファレンスであるが,筆者は情報検
索分野の研究者であるので,あくまでこの立場から報告を行うことをお許しいた
だきたい.

情報検索国際会議の最高峰SIGIRの採否通知が4月であり,CIKMの投稿締切は通常
5月頃であるため,SIGIRで採録されなかった論文はCIKMに流れる場合がある.し
かしCIKMに実際に採録されている論文を見てみるとSIGIRに比べても遜色ないも
のが多いように感じる.思いつくままに書くと,例えばRobertsonらがCIKM 2004
で発表したSimple BM25 Extension to Multiple Weighted Fieldsや,Armstrong
らがCIKM 2009で発表したImprovements That Don't Add Up: Ad-hoc Retrieval
Results since 1998 など,SIGIRのフルペーパーとはいささか毛色が違うものの
インパクトが大きい論文がごろごろある.

筆者がこれまでに参加したCIKMの中では参加者1000人規模のものもあったが,今
回は開催地が豪州であることから500人に満たない程度であった.国別の参加者
トップは,豪州約140人,中国約80人,米国約80人,韓国約30人,ドイツ約22
人,日本約19人である.学生約190名の参加があったが,このうち90名に対して
はトラベルサポートがあった.日本の学生諸君にも,このような制度を活用して
積極的に国際会議で活躍していただきたい.なお,メルボルンは観光地としても
楽しいところである.

CIKM 2015の実際の雰囲気や話題となったトピックについては,twitterで
#CIKM2015 というハッシュタグで検索すると (断片的ではあるが) 臨場感のある
情報が得られるので,試していただきたい.また,特に情報検索分野に興味のあ
る方は,twitterで [at] sigirf (SIGIR filter) というアカウントをフォローするこ
とをお薦めする.情報検索関係の国際会議の会期中,興味のないフォロワーへの
配慮として [at] sigirf 宛にツイートを行う研究者が少なくないからである.

ここでは,筆者が聴講したindustry trackにおいて特に気づいた点のみ挙げてお
く.Huawei (華為技術) のNoah's Ark 研究所所長Hang LiがBuilding a Better
Connected World with Data Mining and Artificial Intelligence
Technologies というタイトルでディープラーニングに基づく自然言語対話に関
する取り組みについて講演を行ったのだが,その直後にMicrosoft Research
Asiaの副所長 Wei-Ying MaがBuilding an Artificially Intelligent and
Socially Engaging Conversation Engine というタイトルで,これまた同じよう
な話をしたのが個人的には印象に残った. (Wei-Yingが話したのは中国語の対話
サービスの話であったが,このサービスの日本語版はLINEの「りんな」というア
カウントになっており,誰でも体験できる.) CIKMにおいてディープラーニング
による自然言語対話という話題で「つばぜり合い」が見られたことは,文献検索
から始まった情報検索という研究分野の今後に関する何らかの示唆を含んでいる
ようにも感じられる.

CIKM 2016は米インディアナポリスで,CIKM 2017はシンガポールで開催される.
なお,情報検索分野で研究されている方にはイタリア・ピサで開催されるSIGIR
2016および新宿で開催されるSIGIR 2017 (日本初のSIGIR) も是非狙っていただ
きたい.

(酒井哲也  早稲田大学 基幹理工学部 情報理工学科 教授)

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■3■ ACMマルチメディア2015に参加して     井手一郎 (名古屋大学 准教授)

今回で23回目を迎えたACMマルチメディアに関する国際会議(ACMMM2015)は,初
めて南半球に渡り,オーストラリアのクイーンズランド州ブリスベン市で,10月
26日〜30日に開催されました.会場は,1988年にブリスベン万博が開催されたブ
リスベン川南岸のSouth Bank地区にあるブリスベン会議・展示センター(BCEC)
でした.近代的なオフィスビルが立ち並ぶ対岸と対照的に,緑地帯や砂浜,観覧
車や飲食店等に囲まれ,リラックスした雰囲気の中で開催されました.

会期中は,中3日間の本会議を挟んで,1日目と5日目に合わせて8つのチュートリ
アルと9つのワークショップが開催されました.特に,1日目に開催された「マル
チメディアの最前線」に関するワークショップは,過去10年以内に博士号を取得
した若手研究者のなかで優れた業績を挙げた者を集めた招待講演会として,今回
初めてトップダウンに企画され,多くの聴衆を集めていました.筆者はもはや若
くも優秀でもないので,当然これには招待されず,CrowdMMというCrowd
Sourcingを扱ったワークショップで,後述する採択されなかった論文のうちの1
件を書き直したものをひっそりと発表して参りました.

本会議へ投稿された論文は,システム,体験,理解,参加の4テーマに分かれた
15の研究分野毎に査読が行われ,その結果56件のフルペーパ(口頭発表及びポス
タ発表)と117件のショートペーパ(ポスタ発表)が採択され,発表されていま
した(各々の採択率は22.2%と30.3%).筆者らは,2件ショートペーパを投稿
したものの,今回は残念ながらどちらも採択されませんでした.採択された論文
を見渡すと,昨年に続き,socialやsentimentといったキーワードが目立つよう
に思います.

最優秀論文と学生最優秀論文は,4件の候補のうち,ディープラーニングの
ツールに関する論文と理論に関する論文を押しのけて,最終的に「Analyzing
free-standing conversational groups: A multimodal approach」と「An
affordable solution for binocular eye tracking and calibration in
head-mounted displays」が各々選ばれました.これからも分かるように,本会
議は応用を強く意識し,またマルチメディアを効果的に活用した研究をより高く
評価する傾向があります.

このほか,通常のセッションに加えて,「Open Source Software
Competition」,デモだけでなく映像も展示する「Demo / Video」セッション,
いくつかの企業から出された課題の解法を競う「Grand Challenge」
セッション,萌芽段階の斬新な研究を取り上げた「Brave New Ideas」
セッション,若手研究者の交流とメンタリングを狙った「Doctoral
Symposium」,女性研究者の交流を狙った「Women in SIGMM Lunch」,メディア
アートを実際に体験できる「Art Exhibit」など,恒例の多彩な企画が行われて
いました.

次回は,来年10月15日〜19日にオランダのアムステルダム市で開催されます.原
稿締切はフルペーパが4月3日,ショートペーパが4月末頃の予定です.筆者らも
懲りずに投稿して参加するつもりですので,一人でも多く,日本からの研究者に
お会いできることを楽しみにしております.ご興味がある方は,以下のウェブサ
イトから詳細についてご確認下さい.

   ACMMM2016: http://www.acmmm.org/2016/

(井手一郎  名古屋大学 大学院情報科学研究科 准教授)

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