日本データベース学会

dbjapanメーリングリストアーカイブ(2016年)

[dbjapan] DBSJ Newsletter Vol. 8, No. 6: WebDB Forum 2015, WISE 2015, WI 2015, 読者アンケート調査へのご協力


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┃ 日本データベース学会 Newsletter

┃ 20162月号 ( Vol. 8, No. 6 )

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暦の上ではまもなく立春.まだまだ寒い日が続いております.学生は卒業に向け

て一所懸命取り組んでおられるものと思われますが,体調管理にはくれぐれもご

注意いただきたいと思います.会員の皆様におかれては,益々ご活躍のことと存

じます.

 

本号では,11月に開催されました,DB系・Web系における国内唯一の査読付き会

議である WebDB Forum 2015 の開催報告をご寄稿いただきました.国際会議報告

としてWeb分野における「WISE 2015, WI 2015」に参加された先生方 2 名に,

注目トピックの動向ならびに所感を語っていただきました.より多くの皆様にと

って,世界での活躍につながるよい刺激になれば幸いです.加えて,

DBSJ Newsletter 読者アンケート調査へのご協力をお願いいたします.

 

本号ならびに DBSJ Newsletter に対するご意見あるいは次号以降に期待する内

容についてのご意見がございましたら news-com [at] dbsj.org までお寄せください.

 

 

                                 日本データベース学会 電子広報編集委員会

 

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目次

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. WebDB Forum 2015 開催報告

    会場運営担当幹事 欅惇志 (東京工業大学),実行委員長 寺田努 (神戸大学)

 

. WISE 2015 参加報告

    高田秀志  立命館大学

 

. IEEE/WIC/ACM WI 2015 参加報告

    土方嘉徳  大阪大学

 

. DBSJ Newsletter読者アンケート調査へのご協力のお願い

    日本データベース学会電子広報編集委員会

 

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■1■ WebDB Forum 2015 開催報告     欅惇志 (東京工業大学 助教)

                         寺田努 (神戸大学 准教授)

 

8 Webとデータベースに関するフォーラム 2015

日時:2015112425

場所:芝浦工業大学 豊洲キャンパス

URLhttp://db-event.jpn.org/webdbf2015/

主催:情報処理学会データベースシステム研究会

   日本データベース学会

   電子情報通信学会 データ工学研究専門委員会

協賛企業(プラチナ):ヤフー株式会社

           株式会社リクルートテクノロジーズ

    (ゴールド):株式会社UBIC

    (シルバー):楽天株式会社 楽天技術研究所

           株式会社ネクスト リッテルラボラトリー

           株式会社日立製作所

           株式会社 東芝

    (ブロンズ):株式会社サイバーエージェント

           サイジニア株式会社

           SRA OSS, Inc. 日本支社

           日本アイ・ビー・エム株式会社

           株式会社はてな

           株式会社きざしカンパニー

           チームラボ株式会社

 

協賛:ARG Webインテリジェンスとインタラクション研究会

   情報処理学会 情報基礎とアクセス技術研究会

   情報処理学会 システムソフトウェアとオペレーティング・システム研究会

   情報処理学会 組込みシステム研究会

   Firebird日本ユーザ会

   ACM SIGMOD日本支部

   日本MySQLユーザ会

   NPO法人 日本PostgreSQLユーザ会

 

WebDB Forum 2015 は,20151124()25()の日程で,前回に引き続

き芝浦工業大学豊洲キャンパスにて開催されました(第 162 回データベースシ

ステム研究発表会と連続開催).WebDB Forum は,DB系・Web系の国内唯一の査

読付き会議である点,また,積極的に産学連携に取り組んでいるという点が大き

な特徴となっております.

 

WebDB Forum 2015 の参加者数は 404 名と,WebDB Forum 単体で比べると昨年度

よりも 100 名程度多くの方にご参加頂けました.ご協賛頂いた 14 社の企業と8

団体,更に,論文投稿やご参加頂いた皆様のご支援によって大盛況のうちに無事

終えることができました.

 

プログラム構成は例年を踏襲し,下記の通り非常に多彩なセッションが実施され

ました.

・査読を経て採択された論文発表セッション (27)

・上記のうち,特に優れた論文として選ばれた論文賞セッション (3)

・産業界の活動を報告頂く技術報告セッション (10)

・特別セッションI (産学間のデータセット)

・特別セッションII (情報検索とビッグデータ分析)

・特別セッションIII (Deep Learningと自然言語処理)

・協賛企業,協賛団体による展示

・参加者間の交流と技術討論のためのポスターレセプション

 

論文発表セッションでは,DB Web に関するトピックに留まらず,関連する諸

分野のトピックの発表も見られました.データベースコミュニティ界隈のみなら

ず,他分野においても徐々に WebDB Forum の認知度とその重要性が高まりつつ

あるのではないかと感じました.

 

ポスターレセプションでは,美味しい料理に舌鼓を打ちつつも,熱心に研究に関

するディスカッションを行う姿があちこちで見られました.連続開催のデータベ

ースシステム研究発表会に投稿された論文のポスター発表も兼ねていたため,Web

DB Forum 参加者からもコメントをもらえ,データベースシステム研究発表会発表

者にとっても有益な場となったのではないかと思います.

 

WebDB Forum は,特に学生にとってさまざまな論文投稿の利点があります.論文

賞は全論文が対象ですが,学生のみを対象とした賞として,学生奨励賞と協賛企

業から授与される企業賞があり,受賞の機会が広がります.ちなみに,WebDB Forum

2015 の論文賞 3 件全ての第一著者は学生と,大活躍をされていました.また,

賞の受賞に関わらず,学生のうちから査読付きの論文に採択されることや,そも

そも挑戦するということから得られる経験は,今後どのような道に進まれるにし

ても貴重な財産になるのではないかと考えています.今後も学生の皆様からの積

極的なご投稿をお待ちしております.

 

また,2 年連続で芝浦工業大学豊洲キャンパスでの開催となりましたが,都心か

らのアクセスは良く,会場も綺麗で,参加者の皆様からは大好評でした.運営委

員の内部事情としても,昨年度のノウハウを活かすことででき,大変助かりまし

た.

 

WebDB Forum 2015 開催中にもアナウンスのありました通り,来年度の WebDB Forum

からは,大きくその形態を変更させることになっております.今まで以上に多様

な発表形態で WebDB Forum にご参加頂けることになる見込みでございますので,

今後ともどうぞ WebDB Forum をよろしくお願い申し上げます.

 

最後に,協賛頂いた企業及び団体の皆様,ご登壇・ご参加頂いた皆様,芝浦工業

大学関係者の皆様にお礼申し上げます.それでは,僭越ながら開催報告とさせて

頂きます.

 

(欅惇志  東京工業大学 情報理工学研究科 助教)

(寺田努  神戸大学 大学院工学研究科 准教授)

 

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■2■ WISE 2015 参加報告                 高田秀志 (立命館大学 教授)

 

2015111日から3日まで,アメリカ・フロリダ州のマイアミにてWISE 2015

The 16th International Conference on Web Information Systems Engineering

が開催されました.WISE 2000 年に第1回会議が香港で開催され,その後はア

ジア,アメリカ,ヨーロッパ,オセアニア等にまたがって毎年行われてきた Web

分野の主要会議です.会議録は Springer LNCS として発行されています.

 

WISE 2015 には 26カ国から 189 件の論文が投稿され,そのうち,53 件がフル

ペーパーとして,19 件がショートペーパーとして採択されました(会議録に掲

載されている件数とは異なりますが,オープニングで紹介されたものを記載して

います).日本の大学関係者からは,フルペーパーとして 2 件,ショートペー

パーとして 1 件の発表がありました.発表されている論文の分野としては,

Social Network Big DataMining に関するものが多数を占めています.ち

なみに,2001年に京都で開催された第 2 回会議のプログラムを見てみますと,

Web Search Information RetrievalXML 等に関する論文が主流ですので,

格納・検索の時代から共有・活用の時代に移っていることが分かります.

 

筆者はフルペーパーとして発表を行いました.内容は,ソーシャルネットワーク

における「影響最大化問題」を符号付きソーシャルグラフに適用したものです.

この研究は,実は中国の大連理工大学ソフトウェア学院から研究生として受け入

れた大学院生が主体となって実施したものなのですが,VISA 取得の関係で残念

ながら本人がアメリカへ渡航することができず,筆者が共著者を代表して発表し

たものです.筆頭著者の Shen 君は,筆者の研究室に滞在していた3ヶ月間でこ

の研究をやり遂げ,粘り強く論文の改訂を重ねた結果,今回の採択に至りました.

非常に優秀な学生だと思います.

 

ここで,最終日のキーノートとして行われた Bell Labs Markus Hofmann

の講演が興味深かったのでご紹介します.一言で言えば,「最近の人々は何か知

りたいことがある時,もはや検索などはしない,チャットで聞く」というもので

す.チャットの相手は人であろうがコンピュータであろうがどちらでも良い.人

々が持つ知識や経験と Web 上に大量に蓄えられている情報を元にして知りたい

ことにチャットインタフェースを介して答えてくれる.Apple Siri NTT

docomo の「しゃべってコンシェル」などにも用いられている音声認識と組み合

わせることによって,「Web ブラウザ」に代わる未来のインタフェースとしての

可能性を感じました.

 

2016年の WISE は中国・上海での開催が確定しているそうです.WISE は筆者の

恩師で,本学会の初代会長でもある故上林弥彦先生が設立に関わられた国際会議

ではありますが,上で述べた数字が示すように,日本の大学関係者の影は薄くな

っているようです.筆者自身もその責任の一端を負っていることは重々承知して

いますが,日本データベース学会のコミュニティから立ち上がった国際会議をこ

れからも支え,盛り上げていこうではありませんか!

 

(高田秀志  立命館大学 情報理工学部 教授)

 

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■3■ IEEE/WIC/ACM WI 2015 参加報告   土方嘉徳 (大阪大学 准教授)

 

The 2015 IEEE/WIC/ACM International Conference on Web Intelligence

(WI'15)

日時:2015126日(日)- 129日(水)

場所:Singapore Management University (SMU)

URLhttp://wi-iat15.ntulily.org/

 

2015126日から9日まで,Singapore Management University (SMU) にて,

IEEE/WIC/ACM WI'15 が開催されました.WI は,Web インテリジェンス技術に関

する世界準トップクラスの国際会議です.年によって異なりますが,IEEE/WIC/

ACM International Conference on Agent Technology (IAT) との合同開催であ

ることが多く,キーノートやソーシャルイベントはシェアしています.そのため,

データ工学系の研究者だけでなくエージェント(人工知能)系の研究者も集まる

ため,貴重な相互交流の機会となっています.日本からは,データ工学系の研究

室として京都大学の田中克己教授の研究室が,自然言語処理系の研究室として東

京工業大学の奥村学教授の研究室が常連となっています.

 

今回の WI-IAT では,参加者数は 250 名でした.6つのキーノートと,7つのワー

クショップ,3つのチュートリアルと,21 のテクニカルセッション,さらにデモ・

ポスターセッションがありました.WIは,173 の論文投稿があり,43 がフルペー

パー採録(採択率 24.9%),49 がショートペーパー採録(採択率 53.2%)でした.

昨年ワルシャワで開催された WI'14 では 242 の論文投稿があったのですが,そ

れから見ると激減しています.ヨーロッパとアメリカのいずれからも遠く,直行

便の無い国も多かったことが,投稿を敬遠したのだと思われます.運営委員会も

それを見越していたのか,今年からショートペーパー採録というカテゴリが設け

られました.例年の採択率は 35-40% 程度であったことを考えると,フルペーパ

ー採録はやや難しくなり,ショートペーパー採録によりかなり間口は広くなった

ように思われます.その影響からか,例年よりも日本人が多かったのも特徴の一

つでした.

 

キーノートは,「The Internet of Things - The Ultimate ICT Revolution

Joseph Sifakis, EPFL, Switzerland),「Adventures in Urban Informatics

Steven KooninNew York University, USA),「Computer Agents that Interact

Proficiently with People」(Sarit KrausBar-Ilan University, Israel),

From Interactive Search to Interactive Data Exploration」(Dominik Slezak,

University of Warsaw, Poland)でした.IOT 時代におけるシステム設計につい

てと,都市に関するデータをセンシングして科学的に分析する新しい学問につい

て,自律エージェントと人とのインタラクションについて,データマイニングに

必要な属性を様々な評価指標を用いて選択する方法について,それぞれ講演があ

りました.

 

口頭発表ですが,WI の会議自体が Web に関する技術全般を包含しているため,

自然言語処理,データ工学,セマンティクス,ヒューマンインタフェースなど,

多くのスタイルの研究があります.今年のプログラム委員長がオープニングで今

年の流行りのキーワードをワードクラウドで表していましたが,最も多かったキ

ーワードは "Data" で,その次は "User" でした."Web" というキーワードはあ

まり多くの研究者は用いておらず,Web を対象としていることは前提で,今は

Big data からの知識抽出や,実ユーザを対象とした研究が流行りなのだと思い

ます.

 

個人的に面白かった研究は,東京工業大学の高村先生の発表された「Collecting

Microblog Posts Implicitly Related to Announcement Post」でした.Twitter

におけるイベントの告知に対して,明示的にリツイートを行う(さらにコメント

を付与する)ものもありますが,明示的にリツイートは行わないがその告知イベ

ントに対する反応(暗黙的的反応)もあり,後者を特定する研究でした.課題が

新しく面白い点と,そのような反応を推定するために,告知と共起する単語や告

知からの時間,感情表現,リツイートに伴うコメントとの単語数の類似性などを

用いており,それらの違いを詳細に分析しており興味深い結果を出していました.

 

一般セッションを聞いていて,一つ気が付いたことがあるのですが,日本人によ

る発表は多くが Twitter を対象とした研究であるのに対し,外国人による発表

では Twitter を対象とした研究は少数派でした.国内の会議である WebDB Forum

ARG Web インテリジェンスとインタラクション研究会でも,Twitter を対象

とした研究が主流になっています.しかし外国人の発表は,Web 技術を支えるた

めの基本技術に関する発表が多かったように思います.例えば,オントロジーの

作成方法と運用フレームワーク,テキストマイニングの方法論と抽出フレームワ

ーク,Webユーザビリティなど,特定の Web アプリケーションを対象にしたもの

ではなく,広く用いることができるような一般的な方法論やフレームワークにつ

いてです.Twitter は研究に必要な貴重なデータを提供してくれているメディア

であると言えますが,それで本当に汎用的な方法が提案できているのか,少し気

がかりな傾向です.

 

次回の WIは,20161013-16日に,米国ネブラスカ州のオマハで行われます.

日本人にはあまりなじみのない街ですが,ちょうどアメリカのど真ん中にありま

す.WI'16 では,これまで別の会議として運営されてきた IAT WI に吸収さ

れます.IAT WI に比べると論文投稿数が少なく,レベルもそれに準じてやや

低かったため,吸収することにより運営面での不安や格差を解消するのが目的と

思われます.今年のようにフルペーパー投稿された論文をショートペーパー採録

するというシステムが残るのかどうかは,今のところ不明です.改革の最中にあ

るように思われ,少し様子見する方が良いように思います.

 

(土方嘉徳  大阪大学大学院 基礎工学研究科 准教授)

 

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■4■ DBSJ Newsletter読者アンケート調査へのご協力のお願い

 

DBSJ Newsletter をご覧いただきまして、まことにありがとうございます。この

たび、今後の DBSJ Newsletter をより良くしていくために、アンケート調査を

実施いたします。いつも DBSJ Newsletter をご覧いただいている方からも、そ

うでない方からも、率直なご意見をお聞かせいただきたいと思います。本アンケ

ートは最長でも 5 分程度でご回答いただけます。

 

【対象者】本メーリングリストを購読されているすべての方

 

【実施期間】201621日〜201631

 

【実施方法】以下のページからご回答下さい。

  http://goo.gl/forms/48MXEv0rIT

 

【調査から得た情報の取り扱いについて】

本アンケートは DBSJ Newsletter など日本データベース学会電子広報の改良改善

を目的に、匿名で実施するものであり、他の目的には使用しません。情報を公開

する場合には、統計的な処理を行い、個別の回答が特定されることがないように

配慮いたします。

 

本アンケート調査に対するご質問やご意見につきましては、日本データベース学

会電子広報編集委員会(news-com [at] dbsj.org)までお寄せ下さい。ご協力のほど、

何とぞよろしくお願いいたします。

 

(日本データベース学会電子広報編集委員会)

 

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