学会員メーリングリストアーカイブ (2017年)

[dbjapan] DBSJ Newsletter Vol. 10, No. 5: IJCAI 2017, KDD 2017, WI 2017, SIGIR 2017


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日本データベース学会 Newsletter

201710月号 ( Vol. 10, No. 5 )

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蝉の声も徐々に秋の虫の音に変わってきているようです.朝夕の気温が下がり,

過ごしやすい季節となりました.気温差により体調を崩さぬようお気を付けくだ

さい.

 

本号では,幅広い分野の国際会議報告として,人工知能分野のIJCAI 2017,デー

タマイニング分野のKDD 2017,Web分野のWeb Intelligence 2017(WI'17),お

よび情報検索分野のSIGIR 2017についてご寄稿いただきました.特に8月に東京

で開催されたSIGIR 2017については,開催者の視点からも大変充実した内容をご

寄稿いただきました.是非お読みになって,日本開催の雰囲気や苦労を感じ取っ

て頂ければ幸いです.

 

本号ならびにDBSJ Newsletterに対するご意見あるいは次号以降に期待する内容

についてのご意見がございましたら news-com [at] dbsj.org までお寄せくだ

さい.

 

                                日本データベース学会 電子広報編集委員会

                                                      (担当編集委員:丸橋 弘治)

 

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目次

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. IJCAI 2017 参加報告

    山口 祐人 Indeed

 

. KDD 2017 参加報告

    小宮山 純平 東京大学

 

. Web Intelligence 2017に参加して

    伏見 卓恭 東京工科大学

 

. SIGIR学生ボランティアに参加して

    工藤 瑠璃子 お茶の水女子大学

 

5.SIGIR 2017 開催報告

    神門 典子 国立情報学研究所

 

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■1■ IJCAI 2017 参加報告   山口 祐人 (Indeed)

 

2017819日から25日にかけてオーストラリア,メルボルンにて International

Joint Conference on Artificial Intelligence (IJCAI) が開催されました.

IJCAI は人工知能分野のトップ国際会議で,質の高い多くの研究発表が行われま

す.論文数は例によってここ数年右肩上がりで,今年も去年と比べて10.7%増の

2540本の論文が投稿され,そのうち660本が採択されました(採択率26%).日本

からの投稿数は92本(全体の4%)で,そのうちの37本が採択されたそうです.

 

今回特に印象的だったのは,中国コミュニティの存在感でした.論文の投稿数は

全体の37%で,EU18%)と US18%)を合わせてもそれに届かないほどでした.

開催地がオーストラリアであるという影響もあるかもしれませんが,中国系企業

がスポンサーの多くを占めている印象がありました.発表者がすべて中国人とい

うセッションも少なくなく,ポスターセッションでは中国語が飛び交っていまし

た.

 

人工知能分野のトップであることもあり,キーノートや招待講演の講演者は豪華

な顔ぶれでした.キーノートでは Artificial Intelligence: A Modern Approach

という有名な教科書の著者でもある Stuart Russell 教授が "Provably

beneficial AI というタイトルで講演をしました.講演の内容はタイトルの通

り,AI が人類にとって有益であるものにするにはどうしたらよいかというもの

でした.特に,ロボット(AI)が自身のオフスイッチを無効にしないためには,

ロボット自身の目的を "曖昧なもの” にし,人間がオフスイッチを押そうとし

たときに「人間がオフスイッチを押すのは自分の目的を達成するために必要なこ

とかもしれない」と思わせることが重要だと話していました.同じような内容の

講演が TED talk* にありましたので,興味のある方は見てみてはいかがでしょ

うか.招待講演では CMU Tuomas Sandholm 教授による,一時期話題になった

ポーカー(Texas Holdem)で世界のトッププレイヤーに勝った AI の話や,

Alibaba Rong Jin による,Alibaba のサービスでどのように Deep learning

が使われているかについての話などがありました.

 

私は昨年度産総研で行った研究を2件発表しました.一つはラベル伝搬法に関す

る研究で,その理論的特性を確率的生成モデルの立場から解析するというもので

した.ラベル伝搬法と確率的ブロックモデルというモデルとの理論的な関係性を

示すことで,その特性を明らかにしました.また,もう一つはテンソル分解に関

する研究で,観測データのインデックスが一部欠損している場合にもテンソル分

解を行えるモデルを提案しました.観測データのインデックスが一部欠損すると

いうことは大いに考えられるため,その状況に対応するための第一歩になったの

ではないかと思います.ポスターセッションではそれなりに多くの方に聞きに来

ていただけました.

 

来年はスウェーデンのストックホルムにて開催されるようです.ICMLAAMAS

ECAIなどの会議と続けて開催されるようなので,連続して参加することも可能で

す.人工知能が世界的に注目されているいま,その中心地で体感されてみてはい

かがでしょうか.

 

*https://www.ted.com/talks/stuart_russell_how_ai_might_make_us_better_people

 

(山口 祐人  Indeed)

 

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■2■ KDD 2017 参加報告   小宮山 純平 (東京大学)

 

2017813日から17日にかけて開催されたKDD2017 (The 23rd SIGKDD Conference

on Knowledge Discovery and Data Mining)に参加し,論文発表を行ってきまし

た.KDDACMSIG-KDDが主催するデータマイニングの分野で最もレベルの高い

会議で,今年はカナダのハリファックスで開催されました.ハリファックスはカ

ナダ東海岸に位置し,日本から直行便がないため(トロント乗り換え),日本か

らかなり遠くに感じました.参加登録数1656人と,アメリカ国外で開催された同

学会では過去最高を記録し盛況でした.IT,メーカー,金融などの幅広い分野か

ら,誰もが名前を知っている(主にアメリカ・中国の)大企業がスポンサーとし

て出資しており,総額544Kドル(約6000万円)をスポンサーから集めたようです

.ハリファックス市長が基調講演でスピーチを行うなど,地元の期待も高いよう

に見えました.

 

初日にチュートリアル,2日目にワークショップが行われ,本会議は3日目から

5日目まででした.また,ネットワーキングのために,研究やキャリアについて

シニア研究者に相談できるセッションや,中国・インドの参加者交流セッション

がありました.スポンサー企業と参加者との間でジョブマッチングプログラムも

あり,600人以上のマッチングが成立したとのことです.

 

論文はリサーチトラックとアプライドデータサイエンストラックに分かれて投稿

され,それぞれ18% (131/748), 22%(86/390)の採択率でした.データマイニング

の学会は採択率が低いことが多く,この採択率は近年並のようです.査読プロセ

スはそれぞれ別のトラックに分かれて行われますが,アプライドデータサイエン

スの発表でも,一定割合の発表では何らかのアルゴリズム的な新しさを重視して

いるように思いました.近年は人工知能系の多くの学会で深層学習(Deep

Learning)の研究が盛んになっていますが,KDD2017ではそれほどでもない印象

でした.データマイニングにおける多くのタスクでは,画像・音声処理のような

明らかに深層学習が有用なタスクをゴールとすることがそれほど多くなく,ウェ

ブマイニング・時系列データ処理では深層学習をどうやって使うかは課題なので

はないかと思いました.予測タスクに関する精度が向上したかだけではなく,知

識発見(Knowledge discovery)や応用可能性があるのかを問われるというのも

あります.

 

時系列(Temporal, Time series)解析の論文がやや多めに感じましたが,会議

全体としての方向性のようなものは感じませんでした.データマイニングの研究

で最もレベルの高いものが集まってくるとすると,全体としての方向性というの

はそこまでないのかもしれません.多くの発表に共通していることは,計算機上

での実験を行っており,データを高速に処理できるという意味での実用性ぐらい

かもしれません.ただ,各分野で流行のテーマははっきりあり,分野の最新の動

向を追っておく必要はあると感じました.また,オープニングセッションでGoogle

trendにおける検索単語の移り変わりが紹介され,「Data mining」はほぼ横ばい

であるのに対して,「Machine Learning」「Data science」「Deep learning

などの単語が急激に関心を得ていることが示唆されました.私自身の関心のある

領域では,A/Bテスト(複数の設定のどちらが良いかの比較実験)を多くの米国

IT企業が行っており,独立したセッションがあったり,いくつかの企業はA/B

ストプラットフォームを宣伝していました.また,公平性のワークショップに参

加しましたが,このワークショップは発表件数が急激に増えており,来年度から

は独立した会議を開催するとのことでした.新しい会議が作られる現場を見た,

というのは初めてでなかなか新鮮でした.

 

KDD2017は,他にも4件のキーノート,40を超えるチュートリアルとワークショッ

プ,4件のハンズオンなど,一人ではとても全部みて回れない内容の豊富さを感

じました.企業の研究者も多く,チュートリアル・ワークショップのいくつかは

ビジネスの立場にデータマイニング・統計的機械学習手法をどのように使うかと

いう点で有益な議論がなされているように思いました.来年のKDD2018はイギリ

スのロンドンで開催されます.また,ビジネスランチで再来年のKDD2019がアメ

リカ・アラスカ州のアンカレジで開催されることが発表されました.出口が見え

るデータマイニングの研究をされている方は投稿を考えられるのもよいかもしれ

ません.

 

(小宮山 純平 東京大学生産技術研究所 助教)

 

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■3■ Web Intelligence 2017に参加して  伏見 卓恭 (東京工科大学)

 

2017823日から26日の4日間,ドイツ・ライプツィヒ大学で開催された 2017

IEEE/WIC/ACM International Conference on Web Intelligence (WI'17)に参加

してきました.WIは,Webにおける集合知やKMKnowledge Management),ネッ

トワーク分析などを含むデータサイエンスに関する理論や分析手法を扱う会議で

す.researchペーパーとapplicationペーパーの両面から論文を投稿することが

できます.今年の採択率は38.8%180件の投稿のうち70件がロングで採択)で,

その他にレギュラーペーパー(=ショートペーパー?)による47件の発表があり

ました.日本から採択された論文は15件程度で,とても多い印象を受けました.

4日間にわたる会議は,5つのトラックがパラレルで進んでおり,ロングペーパー

の場合は発表20分の質疑5分で,1セッションあたり45人の発表でした.一般の

セッションは,大学のやや小さめな講義室での発表でした.研究テーマとしては

,ツイートやレビューデータ,POIを対象としたRecommendationやオピニオンマ

イニング,Linked Open Data,オントロジーなど多種多様でした.特別「IoT

や「Deep Learning」が多いというわけではありませんでした.今回私は,「テ

キストストリームの可視化」というテーマで発表しました.発表後の質疑では,

私とは異なる視点からのコメントなど,今後の研究の糧となる貴重な意見を頂く

ことができました.

 

開催地のライプツィヒ大学はライプツィヒの街中に位置しており,周囲のショッ

プなどと一体化しており,一見どこに大学があるのかわからない程でした.また

,学食を無料で頂くことができ,昼食には困りませんでした.各日のセッション

の間には,「City Walk」という会議参加者みんなで観光する機会も設けられて

いました.さらに,3日目の夜に開催されたbanquetでは,ベストペーパーの表彰

と次回会議の開催地(南米チリ)の魅力に関するプレゼンテーションがジョーク

を交えながら行われました.ここでも,次回会議時の観光を勧める発言が多かっ

たように思えます.

 

次回開催地は,南米チリということで現地に行くまでに多大な時間がかかります

が,南米に行くまたとない機会です.また,Webに関する興味深い研究が多く集

まる会議ですので,是非参加されてみてはいかがですか.

 

(伏見 卓恭 東京工科大学 コンピュータサイエンス学部 助教)

 

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■4■ SIGIR学生ボランティアに参加して  工藤 瑠璃子 (お茶の水女子大学)

 

8月上旬に開催されたSIGIR2017に学生ボランティアとして参加させて頂きました

SIGIRは私にとって初めての国際会議で,SIGIRほど大規模な学会,国際会議は

どのような雰囲気なのかとボランティア初日は緊張しながら会場へ向かいまし

た.

 

聴講した発表会場では,座長さんがジョークを交えて和やかな雰囲気の中で会議

が進められていて,今まで参加した国内会議とは異なる印象を受けました.そし

て何より,どの発表も質が高く,さすがトップ会議だと思いました.洗練された

スライドや堂々とした話し方などとても勉強になりました.また,女性の発表も

何件かあり海外の女性研究者が活躍している姿を間近で拝見することができ嬉し

かったです.

 

coffe breakbanquetでの参加者・ボランティアの他大生との交流もとても貴重

な体験でした.私は英語に苦手意識があり自分から話しかける勇気はなかったの

ですが,積極的に話しかけてくだった参加者の方もいて,苦手なりになんとかコ

ミュニケーションが取れたのではないかと思います.話す内容はやはり研究のこ

とが多く,自分の研究テーマを英語で説明するということを初めて経験しました

.私の所属している研究室はシステムやネットッワーク関連のテーマが主流なの

ですが,私はIRにも関係があり,且つ,インバウンドを対象としたテーマに取り

組んでいます.今回,その分野を専門としている方々や,まさに外国から日本に

来ている参加者から話を聞くことができたことは,今後研究を進める上で役立ち

そうです.また,企業の研究者の方とお話した際には,実際にその企業で使って

いる技術や課題となっていることを聞くことができました.研究室で扱っている

技術やテーマとそう遠くない話も多く,今以上に研究や研究室のゼミに真摯に取

り組もうと思えました.

 

そしてSIGIRに参加した数日間を通して痛感したのが英語の必要性です.情けな

いことに大学に入ってから殆ど英語の勉強をしてこなかったため,様々なバック

グラウンドの方と交流ができる場で上手くコミュニケーションが取れなかったこ

と,発表を聴いても理解が追いつかなかったことが本当にもったいなかったと思

っています.今回,英語の必要性をひしひしと感じたのでこれから勉強したいと

思います.

 

最後になりますが,情報検索分野の最高峰と言われる会議が東京で開催され,ボ

ランティアができたことを幸運に思います.今回経験したことを今後の研究生活

などに生かしていきたいです.

 

(工藤 瑠璃子 お茶の水女子大学 人間文化創成科学研究科 理学専攻

情報科学コース 小口研究室)

 

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■5■ SIGIR 2017 開催報告  神門 典子 (国立情報学研究所)

 

The 40th International ACM SIGIR Conference on Research and Development

in Information RetrievalSIGIR 2017

40回情報検索における研究と開発に関するACM SIGIR国際会議

http://sigir.org/sigir2017/

 

主催:ACM Special Interest Group on Information Retrieval (ACM SIGIR)

運営:ACM SIGIR 2017組織委員会

日程:201786日(月)- 811日(金)

会場:京王プラザホテル(東京・新宿)

 

SIGIR 2017開催概要

 

SIGIR (Association for Computing Machinery - Special Interest Group on

Information Retrieval) は,情報検索における世界最高峰の国際会議です.記

念すべき40周年に,初めて,日本で開催することができました.アジアでの開催

は,2008年シンガポール,2011年北京についで3回目です.

 

会議参加者は,SIGIR史上最多の911名(2016年の57%増,2015年の161%増).登

録が700名を超えた時点でACM国際本部からプレスリリース[1]しました.国別上

位は,日本264名,米国177名,中国140名でした.加えて,協賛企業展示スタッ

50名,海外からの参加者の同伴者238名,事務局スタッフ8名と大所帯となりま

した.

 

本会議の研究発表は,フルペーパ78件(採択率22%),ショートペーパ121件(採

択率30%),デモ17件でした.国別投稿数は,米国と中国が非常に多く,英国,

シンガポール,ドイツ,オーストラリア,日本と続きました.いずれも前回より

投稿数が増加し,とくにショートペーパは大幅に増えSIGIR史上最多となりまし

た.SIGIR新執行部の「質がよければ可能なかぎり多数採択したい」という方針

により,採択数も前回より増加しました.また,初日の7つのチュートリアルと

博士学生コンソーシアム,最終日の8つのワークショップは多彩なトピックをカ

バーし,盛況のうちに終えることができました.SIGIR2017の参加者・協賛企業

・後援団体のみなさま,運営にご協力くださった多くのみなさまに心よりお礼申

しあげます.

 

日本データベース学会では,SIGIR 2017後援に加え,このDBSJ Newsletterでの

SIGIR2017連載企画,DEIM2017での特別セッション「わたしの愛したSIGIR論文」

BoF「情報検索クイズ・SIGIR2017東京開催記念杯」など,SIGIRのいろいろな

魅力をご紹介する機会をいただきました.重ねて御礼もうしあげます.

 

■プログラムハイライト 1: 基調講演と口頭発表セッション

 

基調講演1は,SIGIR Gerard Salton賞(生涯にわたる非常に顕著な功績に対し

3年に1度顕彰するSIGIRの最高栄誉)保持者であるStephen Robertson教授が

Forward to the past: notes towards a pre-history of web search」として

Web検索に関して,これまでの情報検索研究を展望して,新たな視点と論点を

指摘する40周年にふさわしいトピックで,質疑応答も活発に行われました.スラ

イドは公開予定です.基調講演2は,Yahoo Vice President of Research

Yoelle Maarek博士による「Mail Search: Its Getting Personal!」で,メー

ル検索の特徴と研究成果を分かりやすくお話いただきました.

 

口頭発表は3パラレルで,A会場では,「Evaluation(評価)」「Search and

Interaction」がそれぞれ2回ずつ,そのほか「Filtering and Recommending」と

Retrieval Models and Ranking(検索モデルとランキング)」が3セッション

,「Document Representation and Content Analysis(文書表現と内容分析)」

2セッションありました.評価,検索モデルは伝統的に情報検索の中心的トピッ

クであり,近年はユーザとインタラクション,フィルタリングと推薦などへの関

心が高まっています.そのほか「Efficiency and Scalability」「Conversations

and Question Answering」「Personalization and Privacy」「Social」などの

多様なセッションがありました.

 

■プログラムハイライト 2: 最優秀論文賞とTest of Time Awards

 

ベストペーパ賞は,Bob Goodwin (Microsoft)らの「BitFunnel: Revisiting

Signatures for Search」,Best Student Paper Awardは,Fan Zhang(中国・清

華大)らの「Evaluating Web Search with a Bejeweled Player Model」,Best

Short Paper Awardは,Michael R Evans (Microsoft Corp)らの「LiveMaps ?

Converting Map Images into Interactive Maps」,10年のときをへて,なお強

い影響力を有する論文を表彰するTest of Time AwardJaime Teevan (Microsoft

Research)らのPersonalizing search via automated analysis of interests

and activities (SIGIR 2005) でした.近年のベストペーパ賞はユーザやインタ

ラクションに関する論文と,高速化や圧縮などDBコミュニティにも関連の深い論

文が選ばれる傾向です[2]が,今年は,ベストペーパは後者,その他の授賞は前

者でした.詳しくはhttp://sigir.org/sigir2017/program/awards/ をご参照く

ださい.

 

■プログラムハイライト 3: 特筆すべき話題

 ― ニューラルネットワークと評価,SIRIP

 

特筆すべきは「Neural Networks for Information RetrievalNN4IR)」への関

心の高まりです.本会議の研究発表でのディープラーニングを用いた論文数の増

加に加えて,初日のNN4IRチュートリアルは事前登録が約250人(チュートリアル

中最大.SIGIRの会議運営マニュアルではチュートリアルとワークショップ会場

50名用の部屋を用意せよとなっていますが,,,),同じ話題のワークショッ

プも180名以上の参加者でした.他方,「評価」と「ユーザ試行」 は,情報検索

の主要な話題のひとつですが,現在,社会のいたるところで,多様なコンテンツ

が多様なユーザによって多様な目的のために検索され,情報検索が必要不可欠な

社会基盤となっており,社会と研究と技術の発展にともなって評価とユーザ試行

のあり方も多様な問題を含んで発展し,SIGIRでは,毎回,重要なセッションの

ひとつと位置づけられています.

 

2007年から始まったIndustry Track (2014年からはSIRIP (Symposium on IR in

Practice)) は,産業界から最新の研究開発が紹介される人気のセッションです

.今回は,Start-upにフォーカスをあて,アジア,日本からも多くの発表があり

ました.

 

■プログラムハイライト 4: ソーシャルプログラム

 

ウェルカムレセプション,(学生及び学生と交流したい人のための) 学生

Get-Together,学生昼食会,Diversity & Inclusionランチ会,バンケットなど

多彩なソーシャルプログラムにより,参加者相互の交流を深めました.また,東

京都のご支援による同伴者用の無料のバスツアーと文化体験プログラム(着付け

,茶の湯)は,初日にすべて満席になるほど好評でした.

 

SIGIR 2017の新たな取り組み 1: 40周年記念企画

 

SIGIR 2017では40周年を記念した企画が多数ありました.SIGIR国際本部の企画

として,Pre-2002 Test of Time Award 2013年に始まったTest of Time Award

2002年以降の論文が対象.それ以前の重要な論文が選定されました.受賞論文

全文と推薦者による紹介文は[3]でご覧になれます.過去のSIGIRの多様な場面の

写真をあつめたPhoto Archive Videoは,会場ロビーとバンケットで流し続け,

好評を博しました[4]SIGIR 2017では,40年間の発表論文から,「もっとも長

いタイトル」「もっとも頻繁にタイトルに使われる語」などちょっとひねった観点

でフォーカスした40周年記念賞,さらに,参加者同士の交流や話のきっかけにな

るように,Name Badgeにこれまでに参加したSIGIRの回次を示すカラーシールを

貼る,世界地図にSIGIRと思い出の地を書き込むなどの小さな楽しみも用意しま

した.

 

今年から,SIGIRと関係の深い「ACM Transactions of Information Systems

TOIS)」に前年に掲載された論文を,SIGIRが主催するSIGIRCHIIRICTIR

3つの会議の中から著者が一つを選んで口頭発表できることになりました.SIGIR

2017では,12件のTOIS掲載論文が,テーマに応じて,通常のフルペーパと同じセ

ッションで口頭発表を行いました.これは,ジャーナル論文執筆をエンカレッジ

し,かつ,最新の研究を一同に集め,議論の場を提供するという意図によるもの

です.

 

SIGIR 2017の新たな取り組み 2: 査読方式の改良と優秀査読者賞

 

SIGIR 2017 PC Chairsの発案で,査読者の選定方式とシニア査読者の役割を見直

し,査読の質をさらに高める努力をするとともに,重要な責務を担う査読者の労

に報いるためOutstanding ReviewersOutstanding Senior Reviewersの表彰を

開始しました.これらが,SIGIRの質の高い,建設的な査読の文化を継承発展す

る力となることを祈念します.

 

SIGIR 2017の新たな取り組み 3: Diversity & Inclusion (多様性と受容)

 

SIGIR新執行部は,Diversity & Inclusion (多様性と受容,以降D&I),すなわ

ち,多様なメンバそれぞれが安心して居場所をみつけられ,他のメンバと対等に

コミュニティにかかわることができることの重視という方針を打ち出しました.

SIGIR 2015に草の根的に始まったWomen in IRは,SIGIR 2017では男女共同参画

にむけて,登壇者発表とフロアとの活発な議論セッションを行い,出席者の1/3

以上は男性でした.D&Iランチ会では,より多面的なD&Iとその意義についてライ

トニングトークを行いました.SIGIR 2017では,論文募集で例示するトピックの

多様性も広げ,会期中のケータリングでも多様なレベルのベジタリアン,ハラー

ル,コーシャー,グルテンフリーなど,各参加者の状況にきめ細かく対応し,か

つ,全員が同じテーブルで食べられるよう特に配慮しました.参加者からのご要

望に応じて,急遽,イスラム教の方のための祈祷室も用意しました.勉強になり

ました.

 

■おわりに

 

地理的距離のバリアが大きくて参加者が集まらないのではないかという大きな不

安の中で準備を進めてきました.MLSNSでの参加者募集に加え,印刷したフラ

イヤは9種,計15000枚を超えます.参加登録者数は,当初の早期割引終了予定日

には400名だったのが,その後も直前まで増え続け,思いがけずSIGIR史上初の規

模の会議となりました.予想の約2倍の規模となり,至らない点もあったことと

思いますが,国内組織委員会メンバと学生ボランティア各々の多大な尽力と会場

ホテルの柔軟なバックアップにより,会場の変更に次ぐ変更,ケータリング追加

Wifi増強など,バス18台によるバンケット会場への移動大作戦などを,乗り切

ることができました.おかげさまで,会議後のアンケートでも回答者の95%が「

満足」「非常に満足」でした.ありがとうございます.なお,会議の様子は,会

期中の写真と40周年Photo Archive[4]#sigir2017での検索などでご覧になれま

す.

 

SIGIR 2018Ann Arbor (MI, USA)2019Paris2020 は中国の西安(Xi'An)

す.

 

今後は,日本での情報検索研究のさらなる活性化と定着,国際コミュニティでの

日本発研究のVisibilityの向上という大きな課題があります.筑波大・上保先生

を中心にPOWIRというSIGIRCHIIRCIKMなど情報検索の国際トップカンファレ

ンスへの論文投稿を目指す国内若手著者のメンタリングワークショップも始まり

ました. 引き続き,ご支援ご参画くださいますようお願いもうしあげます.

 

[1]    ACMプレスリリース.

    http://www.acm.org/media-center/2017/july/sigir-2017

[2]    加藤誠. ACM SIGIR Conferenceとは?”. DBSJ Newsletter Vol. 9,

    No. 3 (201610).  http://dbsj.org/dbjapan/2016/msg00153.html

[3]    SIGIR Forum July (Special Edition) for the 40th anniversary

    (papers selected for the ACM SIGIR Test of Time Award from the

    years 1978-2001.

    http://sigir.org/forum/issues/july-special-issue-2017/

[4]    SIGIR 2017 Official Photos.

    http://sigir.org/sigir2017/program/photos/

 

(神門 典子 国立情報学研究所 情報社会相関研究系 教授)

 

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株式会社富士通研究所

人工知能研究所

丸橋弘治

博士(工学)

maruhashi.koji [at] jp.fujitsu.com