学会員メーリングリストアーカイブ (2018年)

[dbjapan] DBSJ Newsletter Vol. 11, No. 5: KDD 2018, ASONAM 2018, DEXA 2018, ICML 2018, IJCAI-ECAI 2018


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┃ 日本データベース学会 Newsletter
┃ 2018年10月号 ( Vol. 11, No. 5 )
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本号では,幅広い分野から5件の国際会議に関する参加報告をご寄稿いただきま
した.データマイニング分野のKDD2018,データベース分野のDEXA2018,ソー
シャルネットワーク分野のASONAM2018,人工知能分野のIJCAI-ECAI2018,機械
学習分野のICML2018のご報告です.日本データベース学会とその周辺分野の技術
トレンドを知るために,とても有用な記事をご寄稿いただいております.
ぜひお読みになって頂ければ幸いです.

本号ならびにDBSJ Newsletterへのご意見あるいは次号以降に期待する内容につ
いてのご意見がございましたら news-com [at] dbsj.org までお寄せください.

               日本データベース学会 電子広報編集委員会
                       (担当編集幹事 倉島 健)

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目次
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1.KDD/ASONAM 2018 参加報告
磯 颯(奈良先端科学技術大学院大学)

2.DEXA 2018 参加報告
駒水 孝裕(名古屋大学)

3.ICML 2018 参加報告
田中 佑典(NTTサービスエボリューション研究所)

4.IJCAI-ECAI 2018 参加報告
赤木 康紀(NTTサービスエボリューション研究所)

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■1■ KDD/ASONAM 2018 参加報告

                                     磯 颯(奈良先端科学技術大学院大学)

KDDは,データマイニング分野のトップ会議であり,ASONAMは,ソーシャル
ネットワークの解析やそのマイニングに関する主要な国際会議の一つです.20
18年は両会議共にヨーロッパで同時期に開催されました.本稿では,両会議の
特色や雰囲気などを比較しながら,その参加報告をさせていただきたいと思い
ます.

◎ 各会議の概要

KDD2018は,8月19日から23日にかけてイギリス,ロンドンで開催されました.
論文は,Research paper と Applied Data Science paper のいずれかに投稿
されます.Research paperは,新たなモデルやアルゴリズムに関する論文,
Applied Data Science paperは,現実の問題に対する実践的な解法や実装した
システムによって得られた結果に関する論文が主に投稿されます.いずれも
競争率が非常に高く,Research Track に投稿された983本のうち181本(18.4%),
Applied Data Science Trackに投稿された,497本のうち112本(22.5%)の論文が
それぞれ採択されました.採択論文の傾向を,Bigramを用いた出現頻度を用い
て解析すると,Large scale, Real time, e-commerce と言った産業に関連する
ような語が上位に並んでいるほか,MLやNLP,CVといった分野でもホットトピッ
クである,reinforcement learning, multi-task と言った語も多く使用され
ていることが分かります.

ASONAM2018は,8月27日から30日にかけてスペイン,バルセロナで開催されま
した.論文は,Main Conference, Industrial Track, Multidisciplinary
Trackに投稿されます.特にMain Conferenceには293本の論文が投稿され,
Long, Short, Poster 合わせて109本の論文が採択されました.我々の論文
はMultidisciplinary TrackにShort paperとして採択されました.Main
conference採択論文の傾向として,多く論文にsocial networks, social media
と言った語が含まれていた他,cyberbullying detection (ネットいじめの検知)
やcompromised account (アカウントの乗っ取り)などの語が
上位に並んでいます.KDDと比較し,より社会的な問題に対して取り組んで
いる研究が多い傾向にあるようです.

◎ 会場の雰囲気

KDDの参加者は約3300人と非常に多く,日本からも多くの方が参加していまし
た.スポンサー企業には Google や Facebook と言ったBig4に名を連ねる企業だ
けでなく,ソフトバンクと提携したことで有名なDidiをはじめとする中国企業や
投資銀行の J.P.Morgan など,幅広い企業からの注目を集めていることがわかり
ました.

一方ASONAMは,会議に参加していればほぼ全ての参加者と顔見知りになることが
できる規模でしたが,日本人参加者には殆ど会うことが出来ず,日本からの注目
度は少ないようにも感じました.また,スポンサー企業は Elsevior 1社のみで
した.

◎ KDD Cup, DL(Deep Learning) Day

KDDでは,通常の会議の他に,KDDが主催するデータ分析 Competitionである
KDD Cupのセッションや,MLやNLP,CVなどの分野からDeep Learningで著名
な研究者のトークを聞くことのできるDL Dayなど,トピックを絞ったセッシ
ョンが設けられていました.

今年のKDD Cupは,都市の空気汚染予測がテーマとなっており,4188チームが
参加しました.セッションでは,そのWinning Solutionや,Kaggleの元1位
のMarios MichailidisによるKeynoteを聞くことができました.
Marios Michailidisのトークでは,実際にデータ解析のCompetitionに参加
する際の分析手順や,各工程に掛ける日数,データの種類ごとにどのような
特徴量設計をするなど,実践的な話を聞くことができました.

DL Dayでは,TeslaのDirector であるAndrej Karpathy や LINE (Network
embeddingの手法)でも有名なQiaozhu Mei,NLPで有名なRichard Socher,
Oriol Vinyals,Kyunghyun Cho などの名だたる研究者のトークを聞くこと
ができました.特に,Andrej Karpathyのトークが印象的で,彼がPh.D.
student の間,その時間のほとんどをモデルやアルゴリズムの開発に費や
していたのが,Teslaではデータ作成のためのインフラ構築にもっとも時間
を費やすようになったということです.研究として成果を出すことと,
製品を作り出すこととのギャップなど,改めて考えらせられました.

◎ 最後に

来年は,KDDがアラスカのアンカレッジ,ASONAMがカナダのバンクーバーで
開催されます.それぞれ日程が離れているため,今年のように同時に参加する
ことは難しいかもしれませんが,興味がある方はぜひ来年参加してみては
いかがでしょうか.

(磯颯 奈良先端科学技術大学院大学)

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■2■ DEXA 2018 参加報告

                                               駒水 孝裕(名古屋大学)

2018年9月3日から6日にかけて,ドイツのレーゲンスブルクで開催された
29th International Conference on Database
and Expert Systems Applications (DEXA 2018)
に参加しました.DEXAはデータベースおよび
関連技術に関する研究を対象とした会議で,ビッグデータ解析技術やデータ
プライバシー,セマンティックウェブ,情報検索,ソーシャルネットワーク
など,幅広い分野に関する研究が発表されました.今回のDEXAには160本の
論文の投稿があり,フルペーパ22本(採択率22%)とショートペーパ40本が
採択されました.採択率は例年通りでした.DEXAはビッグデータ分析に関す
る国際会議DaWaK,e-Government に関する国際会議EGOVIS,信頼やプライバ
シーに関する国際会議TrustBusおよび三つのワークショップ(BDMICS,
BIOKDD, TIR) と併設で開催されます.これらの会議とワークショップの参加
者は目算で百数十名程度おり,コンパクトな国際会議となっています.
DEXAは日本人研究者の参加も多く見られる会議で,今回も(把握できた範囲です
が)8大学/企業から14名の日本人が参加していました.

DEXAは他の会議や他のワークショップと同時並行で4日間の日程となってい
ます.DEXAが2パラレルセッションで他はシングルセッションで進行します.
DEXAでは併設会議のキーノートと合わせて毎日キーノートが用意されていま
す.DEXA以外の会議からもキーノートがあるので,少し視点の異なるキーノ
ートを聞くことができます.今回は4件のキーノートがありました.1件目は
National University of Singapore の Tok Wang Ling先生による
"Data Models Revisited: Improving the Quality of Database Schema Design,
Integration and Keyword Search with ORA-Semantics"でした.
ERモデルで表現している構造に対して,データベースで採用されている関係
モデルやXMLといった表現方法では未だ不十分であるという切り口のキーノ
ートでした.2件目は,Drexel University Philadelphia のIl-Yeol Song
先生による "Smart Aging: Topics, Applications, Technologies, and Agenda"
でした.歳を取るときの変化をモニタリングし,"スマート"な
歳の取り方をするための環境システムについての展望のキーノートでした.
3件目は,The University of Queensland のXiaofang Zhou 先生による
"Spatial Trajectory Analytics: Past, Present and Future"でした.
空間トラジェクトリデータの分析に関するこれまでの研究と今後の展望に
ついてのキーノートでした.4件目は,University of Piraeus の
Costas Lambrinoudakis 先生で,
"The General Data Protection Regulation (GDPR) era:
Ten steps for compliance of Data Processors
and Data Controllers - What about the Users ?"
でした.EUにおける個人情報の取扱いについてのコンプライアンスを満たすため
の必要事項についての議論をされたキーノートでした.

DEXA2019は2019年8月26日から29日にオーストリアのリンツで開催されます.
まだCFPは出ておりませんが,例年3月末から4月初頭に締め切りがあります.
The Computing Research and Education Association of Australia
(CORE http://www.core.edu.au/)
による国際会議ランクでB評価(good conference)ですので,比較的狙いやすい
会議かと思います.投稿を検討してみてはいかがでしょうか.

(駒水孝裕 名古屋大学)

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■3■ ICML 2018 参加報告

                          田中 佑典(NTTサービスエボリューション研究所)

2018年7月10日から15日にかけて開催された
International Conference on Machine Learning (ICML)
に参加してきました.ICMLは機械学習分野で最もレベルの高い会議のひとつで,
今年はスウェーデンのストックホルムで開催されました.人工知能分野のIJCAI
およびマルチエージェントシステム分野のAAMASとの合同開催であることも相
まって,参加登録数は約5,000人と非常に盛況でした.また,論文投稿数は去年
に比べて45%増の2,473本であり,そのうち621本が採択されました(採択率
25.1%).全体としては大学などアカデミックからの発表が多く(70%程度),
残りはIT系企業(Google, Microsoft, Facebookなど)からの発表が多かったです.

会議はチュートリアル(9件),招待講演(4件),ワークショップ(合同開催も
含めて67件),そして10のパラレルセッションで行われる本会議から構成されて
いました.本会議では,採択された全ての論文について,口頭およびポスターに
て発表が行われました.各ポスターセッションは約3時間あり,活発な議論がな
されていました.

会議の全体的な印象としては,流行や方向性がはっきりしていると感じました.
最も発表数が多かった研究トピックは深層学習に関するものでした.全体のセッ
ションのうち25% (35/140) が深層学習関連のセッションで,中には立ち見が
出るほど人気のセッションもありました.今年の傾向として,ネットワーク
アーキテクチャについての投稿数は依然として多いものの,採択率はあまり
高くないとのことでした.深層学習における理論研究やVariational
AutoEncoder (VAE) のような深層学習の確率的な取り扱いについての研究,
敵対的生成ネットワーク (GAN)の研究などが目立っていました.関連して
印象に残ったのは,Max Welling氏による招待講演「Intelligence per
kilowatthour」の中で述べられた,「今後,AIアルゴリズムの良さは,単位
エネルギー当たりのインテリジェンスの量によって評価されるようになる」と
いうメッセージでした.この背景として,ニューラルネットのさらなる巨大化
によるエネルギー消費増大への懸念,および,モバイル環境でのサービス要件
として省エネルギー化の必要性が指摘されていました.現在は,ベイズモデリ
ングや枝刈りによるニューラルネットの圧縮技術について取り組みを進めて
いるとのことでした.

次に発表数が多かった研究トピックは強化学習で,全体のセッションのうち
12% (17/140) を占めていました.関連するものとしては,Benjamin Recht氏に
よるチュートリアル「Optimization Perspectives on Learning to Control」
が盛況でした.また,Manuel Gomez Rodriguez氏によるチュートリアル
「Learning with Temporal Point Processes」では,点過程をベースとして
“いつ行動を起こせば最適か”,というシステム制御のための新たな問題設定
の下で研究を進めているとのことでした.

その他にも,機械学習の公平性についての研究などが注目を集めていたように
思います。最後に,ICMLは技術的に非常にレベルが高い議論ができることは
もちろんですが,現在の機械学習分野の方向性を感じることができるという
意味でも良い会議だと思いました.私自身,純粋な理論研究をしているわけ
ではありませんが,今後の研究に役立つ情報がたくさん得られたと感じます.
ちなみに,会議の内容は部分的にWebで公開されていますので,是非ご覧に
なってみてください(https://www.facebook.com/icml.imls/?ref=settings)

来年はアメリカのロングビーチで開催されるようです.
是非,投稿・参加をご検討されると良いと思います.

(田中佑典 NTTサービスエボリューション研究所)

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■4■ IJCAI-ECAI 2018 参加報告

                          赤木 康紀(NTTサービスエボリューション研究所)

2018年7月13日から19日にかけて,スウェーデンのストックホルムで開催された
The 27th International Joint Conference on Artificial Intelligence
and the 23rd European Conference on Artificial Intelligence
(IJCAI-ECAI-18)の参加報告を行います.

IJCAIはAAAIと並ぶ人口知能分野のトップ会議であり,今回はECAIと合同で
開催されました.さらに今年に限り,FAIM (Federated AI Meeting) と呼ばれる
枠組みの中で,ICMLやAAMASといった人工知能に関連する別の国際会議と
同一会場で開催され,一部のチュートリアル・キーノート・ワークショップは
複数の国際会議による合同開催という形式をとっていました.

今年のIJCAIの採択率は20.5%(710/3470)であり,例年より採択率が5%程度
低くなっています.また,投稿数は昨年と比較して37%も増加しており,
人工知能分野に対する注目度の高まりを感じさせます.国別に見ると,
中国からの採択が325件(46%)と最も多く,次いでアメリカが122件(17%),
イギリスが37件(5%)となっており,日本からは17件(2%)が採択されていま
した.この数字を見ても分かる通り,中国が大きな存在感を発揮しています.
1つのセッションの発表の殆ど全てが中国からの発表であるようなケースも
幾つもあり,非常に印象的でした.

会議の中身についてですが,まず,8つもの招待講演により,人工知能に関する
広範な最新動向を掴むことができるようになっていました.特に,Facebook
Research の Yan LeCun 教授による世界のモデルを学習するための
"self-supervised learning" に関する講演,MIT の Josh Tenenbaum 教授に
よる 「人間のように学び人間のように考える人工知能」を目指した取り組み
に関する講演, Toulouse School of Economics の Jean-Francois Bonnefon
教授による自動運転における道徳的判断に関する講演などが印象的でした.

発表されていた論文については,会議全体で1つの大きな方向性・問題意識が
あるというわけではなく,それぞれの研究領域においてそれぞれが抱えている
問題をそれぞれの方法で取り組んでいるものが多いという印象でした.
それでも,各トピックに絞れば流行や方向性というものは存在しており,
例えば私自身が興味を持っている地理空間上でのデータマイニングについては,
既存のタスクに対して如何にして最新のディープラーニングアーキテクチャ
を適用し精度を高めるか,という大きなトレンドがありました.

また,様々なイベントが用意されており,研究発表以外の部分でも非常に楽しい
国際会議でした.印象に残っているのは,オープニングでの人間とロボットの
共同ダンス(非常に長くシュールだった),動物園やストックホルム市庁舎で行
われたレセプション,三十年戦争時代に建造された巨大な戦艦ヴァーサ号を眺め
ながらのバンケットなどです.特に,ストックホルム市庁舎で行われたレセプシ
ョンは,「こんなところで飲食していいのだろうか」と思ってしまうほど歴史的
な価値の高い建物で行われており,金色の壁画を眺めながら懇親会を行うという
珍しい体験をすることができました.

最後に,我々の発表した研究に関して紹介させて頂きます.我々の論文の題名は
"A Fast and Accurate Method for Estimating People Flow from
Spatiotemporal Population Data"
で,入力として「エリア別の時間ごとの人口分布」という集計化された形式の
データが与えられた場合に,「エリア間の真の移動人数」を推定するというタス
クに取り組んだ論文です.人間の移動の確率モデルに工夫を入れることによっ
て,従来手法に比べて精度の高い推定を可能にしました.さらに,高速な推定を
可能にする,近似的な推定アルゴリズムも提案しています.

IJCAIは,様々な分野の最新の動向を横断的に見ることのできる質の高い
国際会議だと感じました.IJCAI2019はマカオで行われます.締切は現時点で
は2019年2月25日となっており,まだ時間に余裕はあると思われますので,
投稿先として検討してみてはいかがでしょうか.

(赤木康紀 NTTサービスエボリューション研究所)

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