学会員メーリングリストアーカイブ (2019年)

[dbjapan] DBSJ Newsletter Vol. 12, No. 2: 日本データベース学会受賞特集号


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┃ 日本データベース学会 Newsletter
┃ 2019年5月号 ( Vol. 12, No. 2 )
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目次:日本データベース学会受賞特集号
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1. 日本データベース学会功労賞
1-1. DBSJ功労賞を受賞にあたって
  川越 恭二(立命館大学特任教授)

2. 日本データベース学会若手功績賞
2-1. 日本データベース学会若手功績賞を受賞して 〜これまでの出会いに感謝して〜
  戸田 浩之(NTTサービスエボリューション研究所)

2-2. 日本データベース学会若手功績賞受賞にあたって 〜若手研究者としてのキャリア開拓とリスクテイクの視点〜
  清田 陽司(株式会社LIFULL 主席研究員/東京大学空間情報科学研究センター 客員研究員)

2-3. 日本データベース学会若手功績賞を受賞して 〜仲間と未来に出会うコミュニティ〜
  渡辺 知恵美(筑波技術大学 准教授/筑波大学 准教授)

3. 日本データベース学会上林奨励賞
3-1. 日本データベース学会上林奨励賞を受賞して 〜目を養い、地図を作る〜
  小出 智士(豊田中央研究所 / 名古屋大学)

3-2. 日本データベース学会上林奨励賞を受賞して 〜My Experience in Database Research: A Note for Young Researchers〜
  肖 川(大阪大学特任准教授)

3-3. 日本データベース学会上林奨励賞を受賞して 〜二兎を追い続ける〜
  数原 良彦 (Megagon Labs)

4. 編集後記
  北山 大輔 (日本データベース学会 電子広報編集委員会 担当編集委員)
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■1■ 日本データベース学会功労賞

日本データベース学会功労賞は、我が国のデータベース、メディアコンテンツ、情報
マネージメント、ソーシャルコンピューティングに関する科学・技術の振興をはかり、
もって学術、文化、ならびに産業の発展に大いに寄与された日本データベース学会の
会員の功労を賞するためのものです。

表彰規定や歴代の受賞者は以下のWebページからご確認いただけます。
日本データベース学会功労賞:http://dbsj.org/overview/award/#award_02

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■1−1■ DBSJ 功労賞を受賞にあたって  川越恭二(立命館大学特任教授)

このたび、日本データベース学会からDBSJ功労賞をいただきました。光栄なことでたいへ
ん嬉しく思っております。これもDBSJ喜連川会長をはじめ多くの先生方、研究者の皆様の
ご指導やご支援によるものと感謝しています。心よりお礼申しあげます。

さて、私は、コンピュータメーカにて20年間、私立大学にて21年間、企業と大学での仕事
を経験してきました。その経験を通じて感じた点から3点に絞って説明したいと思います。

まず、企業での20年間の活動ですが、DB設計支援、機械系CADとそのCADデータベース、
AI言語研究所でのAI応用、ワークステーション試作、マルチメディア事業推進、インタ
ネットサービスの企画などを行いました。一つのプロジェクトの期間は平均3年でした。
この短期間で、立上げ、方式開発、試作を行い、さらに製品化につなげます。また、研究
テーマはトップダウンによる決定やボトムアップによる研究提案で開始します。いずれに
せよ、自分の興味だけで特定研究テーマを継続することは難しく、自身の基盤技術を確立
しにくくなります。20年間の内、私のデータベース研究の活動はわずか6-7年でした。
しかし、データベース分野で活動されている大学の先生方とできる限り接触することと、
現在の仕事をたえずデータベース空間に射影することを心がけました。これによりデータ
ベースが私の基盤技術であることを自ら納得し、しかも外部からも認めていただけたと
信じています。

次に、大学での研究と教育の活動ですが、私立大学では学生数が多く、毎年10数名の学生
が研究室に配属され、3~5割の学生が大学院に進学します。毎年20~30名の学生・院生を
原則教員1名で指導します。さらに、学生を1~3年間の研究で成長させ、自信を持たせて
企業に送り出すことが強く求められます。自分の研究テーマを学生に押し付けてしまうと
学生の自主性や積極性を阻害する可能性があると考え、私は学生にテーマを決めさせる
方法をとりました。この方法では、学生がデータベース以外の分野(例えばネットワーク、
セキュリティ、UIなどの)で研究したいと希望した際に指導できるかという不安がありま
した。しかし、自身の視野を広げるよい機会だと前向きに捉え、学生指導の前に関連論文
を読み続けることで学生の研究指導が行えました。これにより、分野外の国際会議にも
学生による論文発表ができました。さらに私の視野も拡大できました。

最後に、企業と大学を両方経験し人の育成の重要性を実感しています。人を育成すると
いう視点を共有することで、企業と大学の間での協力関係を強固にすることができます。
金銭的協力や研究成果提供だけでは長期的で密な交流には必ずしもつながらないように
思います。私は、企業時代でも頻繁に様々な大学の先生を訪問するよう心掛けました。
新しい話題を知ることができるよい機会でした。また、大学でも、指導した卒業生が大学
を訪問することで、私は産業界の状況を知ることができ、卒業生も最先端の技術や話題に
触れます。このような企業人と教員、教員と卒業生の関係だけでなく、人の育成を意識
して共同研究するということでも企業と学生間でも円滑な関係が形成できるでしょう。

今後も、IT社会でのデータベースの役割はますます重要となります。データマイニング、
データサイエンスだけでなくデータ〇〇等の新たな技術分野が形成されるでしょう。その
ような分野すべてがデータベースの発展分野であり、皆さまの研究対象になりえます。
最終的には個々人の脳内情報のすべてが保存・複製・利用・復元可能なデータベースが
実現できると私は信じています。夢ある研究対象に向けて、皆さまの研究成果を期待して
います。

功労賞をいただきありがとうございました。

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■2■ 日本データベース学会若手功績賞

日本データベース学会若手功績賞は、本会の活動に多大なる貢献をしてきた若手会員を
賞するもので、本会の対象とする研究分野において優れた実績を有する場合もその対象
となります。

表彰規定や歴代の受賞者は以下のWebページからご確認いただけます。
日本データベース学会若手功績賞:http://dbsj.org/overview/award/#award_03

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■2−1■ 日本データベース学会若手功績賞を受賞して 〜これまでの出会いに感謝して〜
  戸田 浩之(NTTサービスエボリューション研究所)

この度は、日本データベース学会若手功績賞という栄えある賞を頂き、大変光栄に思い
ます。そして、ご推薦頂いた先生方をはじめとして、日本データベース学会の皆様に感謝
を申し上げます。また、これまでご指導頂きました皆様には改めてお礼を申し上げます。

私は修士課程までは材料工学を学んでおり、NTT研究所に就職してから情報検索やデータ
マイニングの研究に関わるようになりました。そして、この分野で初めて研究発表をした
のが、熱川で開催されたDEWS2001でした。知っている人がほとんどいない中、合宿形式
の学会に多少の不安を感じましたが、始まってしまえば参加者同士が交流する機会も
多く、すぐに同年代の研究者や、その後お世話になる多くの先生方と話をすることができ
ました。これ以降、夏のデータベースワークショップやDBWeb等にも参加、発表するよう
になったのですが、その機会に専門知識を深めることはもちろん、多くの方々とつながり
を持てたのが、研究者としてのキャリアを歩む上で大変価値があるものだったと感じてお
ります。

その後、運営にも携わる機会を持たせて頂くようになったのですが、一番印象に残って
いるのは、WebDB Forumで産学連携に携わらせて頂いたことです。すでに筑波大学の森嶋
厚行先生や京都産業大学の中島伸介先生、そしてARGの岡本真さん等が産学連携のベース
は作られた後での参加でしたが、参加頂く企業にとっても一般の参加者にとっても意義が
ある連携の場をつくり、それを持続させるにはどうすれば良いのかを考えながら、取組ま
せて頂きました。普段接点が少ない両者の連携を考えることには難しさもありますが、
だからこそ生まれる価値もあると思うので、この場はぜひ今後も大切にしたいと思いま
すし、さらに有意義なものにしていければと思います。

このような経験をしてきた者として、若い人にアドバイスを送るとすれば、ぜひ学会に
参加して、発表するのはもちろん、色々な人と積極的に話をしてつながりを持って欲しい
ということです。DBSJ Newsletterの読者であれば、間違いなく、DBコミュニティで
つながりを持つことは、今後のキャリアを歩むうえでも大変有益なものになると思います。
もし誰と話せばいいのかわからない等あれば、こっそり声をかけてください。できる限り
のサポートはさせて頂きます。

私自身、研究の最前線から少し離れた仕事も多くなりつつあるところですが、若手として
賞を頂いたこともあり、フレッシュな気持ちを持って、新しい方向性の研究も立ち上げた
いと考えております。それにより新風を送り込むこと含め、今後もDBコミュニティに貢献
できるよう、精進していきますので、今後ともどうぞよろしくお願いします。

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■2−2■ 日本データベース学会若手功績賞受賞にあたって 〜若手研究者としてのキャリア開拓とリスクテイクの視点〜
  清田 陽司(株式会社LIFULL 主席研究員/東京大学空間情報科学研究センター 客員研究員)

このたびは、日本データベース学会若手功績賞という大変名誉のある賞を頂戴し、まことに
光栄に存じます。ご推薦くださった方々をはじめ、ご縁をいただいているデータベース
コミュニティの皆さますべてに心より感謝申し上げます。

私が初めてこのコミュニティにご縁をいただいたきっかけは、博士課程時代のマイクロ
ソフト社との共同研究プロジェクトにて、木戸冬子様(現NII)が山名早人先生につないで
いただいたことです。その後も、東大に助教として在籍時に、「情報爆発」プロジェクトに
おいて喜連川優先生をはじめ多くの方々とご一緒させていただきました。皆さまとの関わり
で、研究とビジネスの世界の近さに新鮮な驚きを得たことをいまも良く憶えております。
大学発スタートアップ(株式会社リッテル)の共同創業、その後のLIFULLによるバイアウト
の過程で、いったんアカデミアからは距離を置き、ほぼビジネスに専念することになりまし
たが、WebDB Forum 2011にて産学連携担当の岡本真様(アカデミック・リソース・ガイド
社)に協賛のお声がけをいただいたことが、データベースコミュニティに再び深く関わる
大きな転機となりました。以来、協賛を継続させていただく中で皆さまとのご縁がふたたび
深まり、2015年から2018年までWebDB Forum産学連携を担当させていただきました。色々
と行き届かない点もあり、関係各位にご苦労をおかけしたところもありますが、データ
ベースコミュニティにおける産学間の相互理解に少しでも貢献できたところがあれば、大変
嬉しく思います。

ところで、研究者が研究コミュニティ活動にコミットする意義は何でしょうか?
私が重要だと感じていることは2点です。一つ目は、産学の別を問わず、外部との濃密な議論
から得られる視点です。たとえば、アカデミアの研究者、他社の研究者との議論から第三者
的な視点を得ることは、独り善がりにならずに本質的な研究開発テーマを設定する上で必須
です。二つ目は、研究者としてのキャリアを開拓していく上でのリスクテイクの基盤づくり
です。私も、思い切ったチャレンジをする上で、コミュニティへの帰属感による心理的安全
性、多くの方々とのご縁が大きな支えになることを、何度も体験してまいりました。

LIFULLにおけるチャレンジの一つとして、NII情報学研究データリポジトリでの「LIFULL
HOME’Sデータセット」提供の取り組みがあります。データ資源へのニーズの大きさはかねて
より認識していたものの、LIFULLの最大の商品ともいえる不動産物件データを、学術用途
限定とはいえすべて外部に出すことにはリスクが想定されますし、提供コストも決して小さ
くはありません。提供に対するリターンが見えづらい中で、社内のステークホルダーを説得
するときには、ある種の怖さがあります。怖さを乗り越える上で、データベースコミュニティ
に属する先達の皆さまによる先例とともに、皆さまとの深いご縁をいただいていることが、
大きな支えとなりました。おかげさまで、提供開始より3年以上が経過し、物件間取り図の
解析などでトップレベル国際会議に採択される研究成果や、自社サービスへの実装可能性が
高い研究成果も生まれております。この場をお借りして、あらためてデータセット提供の
取り組みを支援してくださった皆さま、研究に活用してくださっている方々に感謝申し上げ
ます。

いまの若手研究者を取り巻く環境は非常に厳しく、短期的に大きな成果が求められる状況で
あることを、私も強く感じております。こうした状況の中、コミュニティ活動に貴重な
リソースを割くこと、与えられた枠を飛び出してチャレンジすることは、これからのキャリア
開拓の可能性を広げる反面、確かにリスクが伴います。リスクをどの視点でとらえるかが
肝心だと思います。私と同世代の方々を見渡すと、「リスクを一切とらないことのリスク」
という代償がいかに大きなものかを痛感させられることがあります。長い人生の中でリスク
に直面することがいずれにせよ避けられないのであれば、積極的に前倒しでリスクテイクし
ていく方が良いのではないかと私は思いますが、いかがでしょうか?
コミュニティ活動に関わるのであれば、どうせなら「コミュニティを自分の研究活動のため
に徹底的に利用してやろう」くらいの心構えで関わる方が、結果としてコミュニティに
とってもプラスになると考えます。シニアの研究者の方々には、若手のそうしたチャレンジ
を、コミュニティ運営の仕組みの効率化、簡素化、環境づくりなどを通じて積極的に後押し
していただきたいと、切にお願い申し上げます。私も、DBSJ評議委員、DBS研究会幹事など
として、微力ながら若手の方々がチャレンジをしやすくする環境づくりに貢献させていただ
く所存です。引き続き皆さまからのご指導、ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

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■2−3■ 日本データベース学会若手功績賞を受賞して 〜仲間と未来に出会うコミュニティ〜
  渡辺 知恵美(筑波技術大学 准教授/筑波大学 准教授)

この度は日本データベース学会若手功績賞を頂戴し、誠に光栄でございます。ご推薦くだ
さった方々をはじめ、学会の皆様に心より感謝申し上げます。

思い出話になりますが、私が初めて学会に参加したのは札幌で開催された夏のデータベース
ワークショップ1997です。その時は聴講参加でしたが、当時お茶大非常勤講師としてOSを
教えていた慶應大学の清木康先生が懇親会等でご一緒してくださり、上林先生や増永先生、
北川先生をはじめ多くの先生方を紹介してくださいました。どの先生もキラキラと目を輝か
せながら研究話をしてくださり、データ工学の最新研究に夢中になって取り組む仲間同士で
集まるこのコミュニティは本当に素敵だと非常に印象深く覚えています。

その後卒業研究に関する論文の共著者の一人としてデータ工学ワークショップ(DEWS)
1998@水上温泉(現在のDEIM)に参加しました。当時はなかなかチュートリアルも発表も
内容を理解するのに四苦八苦しましたが、同年代の仲間と知り合うことができました。

学部4年の時に経験したこの二つのワークショップが私の原体験であり、その後もっと多く
の研究について勉強し理解できるようになって自立して研究がしたい、発表をして仲間同士
語り合って一緒に研究を進めたい、ということがモチベーションになって学生時代から今ま
でやって来ています。学生の頃に国内ワークショップや国際会議等で知り合った皆さんと
は、ほとんどの方が今でも公私ともにお世話になっています。

大学教員となってからはデータベースコミュニティの運営に携わる機会も多くなり、皆さん
に助けていただきながら私なりに貢献させていただいております。本コミュニティで開催
されるイベントが研究発表の場であることに加え、参加することで多くの仲間や新しい
アイデア、次のステップの機会などに出会う場となることを考えてサポートしているつもり
です。

ところで2009年から2016年まで定期的に開催していたDB・IR勉強会(ICDE, SIGMOD, 
VLDB, WWW, SIGIR等の論文を1日で全部紹介する会)、産後ちょっと余裕がなくて開催
できていないのですが、何か別の形ででも何か開催できればなぁ...なんて最近考える余裕
がやっと出て来ました。賛同してくださる方いたら声をかけてください。

最後に、データベース研究をはじめこのコミュニティに参加するきっかけを作ってくださった
故市川哲彦先生、大学院での研究を大変熱心に指導していただき今に至るまでお世話になって
いる増永良文先生、また仕事および人生のパートナーとしてともに歩んでいる夫天笠俊之に
感謝いたします。

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■3■ 日本データベース学会上林奨励賞

上林奨励賞は、故 上林弥彦 日本データベース学会初代会長のご遺族からご寄贈頂いた資
金を活用し、データベース、メディアコンテンツ、情報マネージメント、ソーシャルコン
ピューティングに関する研究や技術に対して国際的に優れた発表を行い、かつ本会の活動
に貢献してきた若手会員を奨励するためのものです。

表彰規定や歴代の受賞者は以下のWebページからご確認いただけます。
日本データベース学会上林奨励賞:http://dbsj.org/overview/award/#award_04

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■3−1■ 日本データベース学会上林奨励賞を受賞して ~目を養い、地図を作る~
  小出 智士(豊田中央研究所 / 名古屋大学)

この度は名誉ある上林奨励賞を頂き誠にありがとうございます。ご推薦いただきました
皆様、日本データベース学会の皆様に心から御礼申し上げます。

今回の受賞理由に ICDE 2018 および ACM TSAS (2018) の2つの論文を挙げていただき
ました。これらの論文は自動車などから得られる時空間軌跡データに対して文字列索引を
用いて高速かつ省メモリな時空間索引を構築する、というテーマについて研究したもの
です。この研究は社内で大規模時空間データを取り扱う業務を行った際に、自分たちに必要
な問い合わせを研究した例がほとんどなかった、という実務的な課題が原点になってい
ます。研究のアイデア自体は2015年初頭にはあったのですが、それがこうして世の中に出る
までには実に3年以上の時間がかかったことになります。特にICDEの論文については採択
までの間、別のトップ国際会議から二回リジェクトされています。その際に共同研究の先生
方からは「この研究はトップ会議に通るはずなのでめげずに頑張ろう」というような言葉を
頂き、なんとか三度目の正直で採択に漕ぎ着けることができました。自分一人でやっていた
とすると、三度目もトップ会議に投稿する勇気は出なかったかもしれません。

最近は自分の研究だけでなく、後輩の研究を見る機会も増えてきました。その際に強く思う
のは、数学やコンピュータ・サイエンスの能力とは別に、自分自身の「目を養う必要が
ある」ということです。日々の雑談から生まれる多くの小さなアイデアの中から宝石の原石
を見つけることは容易ではありません。そのような研究の方向付けは自分自身が (願わくは
一流の) 研究者であり続けることでのみ達成できるのではないか、と思います。一方で
「データ」を取り扱う研究領域は急速に進展しており、広範囲に渡るキャッチアップが
難しくなってきているとも感じます。個人的な意見ではありますが、研究者として優れた
業績を残し続けるためには「自分独自の研究分野の地図を持っている」ことが必要条件では
ないか、と感じています。この地図は他人と同じものではダメですし、違いすぎてもダメ、
というものではないでしょうか。残念ながら私自身はそのような確固たる地図を持っている
と確信するには至っていませんが、今後も地道に研究を続け、気づいたときにはそうなって
いるよう、皆様方のお力を借りながら今後も精進していきたいと思います。

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■3−2■ 日本データベース学会上林奨励賞を受賞して ~My Experience in Database Research: A Note for Young Researchers~
  肖 川(大阪大学特任准教授)

I have been engaging in database research since 2007. My research 
interests include similarity query processing, query suggestion, data 
integration, textual databases, graph databases, and spatio-temporal 
databases. It is a great honor to receive the DBSJ Kambayashi Young 
Researcher Award, especially as a foreign faculty member.

Unlike most researchers in Japan’s database community, I received my 
Ph.D. degree in Australia. The overseas experience is one of the key 
factors that I believe contribute to my success in research. I joined 
the database group in the University of New South Wales in 2007. My 
supervisors, Prof. Xuemin Lin and Prof. Wei Wang, provided me with 
excellent resources, so I was able to quickly get into the rhythm of 
top-level research. During the first two years of my Ph.D. study, I 
worked with a few talented collaborators, and we published four 
papers at top database conferences. The good start highly motivated 
me to pursue my personal ambition in research career. For the 
students and the young researchers in Japan, there are opportunities 
to go abroad and visit top database research groups (e.g., as a 
postdoc), especially the leading groups in the USA. I believe this 
would help raise the level of the students/young researchers’ 
research, and hence benefit their early career.

Another key factor I would like to mention is to keep good momentum 
after graduation. Since the competition in Japan’s database community 
is not as intense as USA’s or Hong Kong’s, it is easy to lose 
momentum when a student graduates and starts to work as a faculty 
member in a university. However, receiving a Ph.D. degree is a start 
rather than a finish. For many worldwide-renowned researchers, the 
early career is their most productive years. Hence it is important to 
keep focus and achieve as a young researcher.

VLDB 2020 will be held in Tokyo. It is a great opportunity to make 
submissions and propagate the database research of Japan to overseas 
researchers. It is my pleasure to work with the collaborators in 
Japan, and hopefully this would contribute to Japan’s impact and 
prestige in database research.

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■3−3■ 日本データベース学会上林奨励賞を受賞して 〜二兎を追い続ける〜
  数原 良彦 (Megagon Labs)

この度は名誉ある上林奨励賞をいただき、誠にありがとうございます。ご推薦くださった
方々、日本データベース学会のみなさまに心より感謝申し上げます。いままでご指導いた
だきました皆様に改めてお礼申し上げます。

自分は欲張りです。能力以上のことを欲しがり、無茶をします。そしてことごとく失敗を
します。修士を出てからの10年間の研究生活を振り返ると、常に複数のことに取り組んで、
これという成果が出ないまま終わるということを繰り返してきたように思います。周りか
らは一つのことに集中しなさいとたしなめられるのですが、やっぱりどうしても欲張って
いろんなことに手を出してしまう性格のようです。

MIT客員研究員時代、社長訪問の準備と研究で多忙を極める中、さらに友人Y君の結婚式二
次会の映像製作という役を自ら引き受けました。睡眠もままならぬ極限状態の中、ゾンビ
ものまね動画というインスピレーションが生まれました。世間でゾンビものまね芸人とい
う概念が生まれる以前の話です。あのとき動画をYouTubeにアップロードしていたら、今
頃YouTuberか芸人になっていたかもしれません。Publish or perishという言葉を身を以
て知りました。ちなみにそのとき取り組んでいた研究が、今回の受賞理由になったWWW
'17の論文になりました。この頃から少し違った景色が見えるようになってきたように思
います。この話は研究と関係ないように聞こえると思いますが、自分の中では大きなブレ
イクスルーでした。

二兎追うものは一兎も得ず、器用貧乏、多芸は無芸、という言葉があります。いずれも否
定的な意味で使われます。しかし、自分の能力を超えて二兎を追うこのスタイルは、一芸
に秀でることができず、一芸だけでは勝てない自分なりの、ひとつの戦い方なのだと信じ
ています。そんな自分ですが、まわりの人には必ず「若いうちはひとつのことに集中した
方がよい」と伝えています。なぜなら、二兎を追うやり方はひとつのことに集中できない
人間の言い訳に過ぎないからです。二兎を追い続けたその先に何があるのか、新しい世界
が待っていることを信じて、走り続けていきたいと思っています。

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■4■ 編集後記  北山 大輔 (日本データベース学会 電子広報編集委員会 担当編集委員、工学院大学)
令和初のDBSJ Newsletterであり、連休中の発行となりました。私自身、DEIM2019では、
ローカル共同委員長という役割があり、表彰のあったDBSJアワーの時間は会場におれず、
受賞時のお話を聞くことができませんでした。受賞者の声特集を作りながら、真っ先にその
思いを知ることができ、非常に楽しく編集を行っています。また、こうやって受賞者の声を
取り上げることで、私のように参加できなかった方も含め、皆さまにその時の雰囲気をお届けできれば幸いです。

本号ならびに DBSJ Newsletter に対するご意見あるいは次号以降に期待する内容について
のご意見がございましたら news-com [at] dbsj.org までお寄せください。

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