学会員メーリングリストアーカイブ (2019年)

[dbjapan] DBSJ Newsletter Vol. 12, No. 1: DEIM2019, BigComp2019, CIDR2019, AAAI2019, VLDB2020への道

  • To: dbjapan [at] dbsj.org
  • Subject: [dbjapan] DBSJ Newsletter Vol. 12, No. 1: DEIM2019, BigComp2019, CIDR2019, AAAI2019, VLDB2020への道
  • From: Takahiro Komamizu <taka-coma [at] acm.org>
  • Date: Mon, 1 Apr 2019 12:33:37 +0900

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┃ 日本データベース学会 Newsletter
┃ 2019年4月号 ( Vol. 12, No. 1 )
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本号では,会議の開催報告を二件,国際会議の参加報告を二件,VLDB2020に向け
た記事を一件をご寄稿いただきました.開催報告としては,3月に開催されたDB系
における国内最大級の会議であるDEIMフォーラム2019と京都で開催された国際会
議BigComp 2019の開催報告を掲載しております.国際会議の参加報告としてトッ
プレベルの国際会議であるCIDRとAAAIの二件を掲載しております.VLDB2020に
向けた連載記事として「VLDB 2020への道」についての記事を掲載しております.

本号ならびにDBSJ Newsletterに対するご意見あるいは次号以降に期待する内容に
ついてご意見がございましたらnews-com [at] dbsj.orgまでお寄せください.



日本データベース学会 電子広報編集委員会

             (担当編集委員 駒水 孝裕)

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目次
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1. DEIM フォーラム 2019 開催報告
     大塚真吾(神奈川工科大学)

2. IEEE BigComp 2019 開催報告
     吉川正俊(京都大学)

3. The latest database research topics from CIDR 2019
     Le Hieu Hanh(東京工業大学)

4. AAAI 2019 参加報告
     大塚淳史(NTT)

5. VLDB 2020への道(その1)
     天方大地(大阪大学)・石川佳治(名古屋大学)・鬼塚真(大阪大学)

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■ 1 ■ DEIM フォーラム 2019 開催報告
                       大塚真吾(神奈川工科大学)

第11回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM Forum 2019)
第17回日本データベース学会年次大会
http://dbsj.org/deim2019/

主催:電子情報通信学会データ工学研究専門委員会
      日本データベース学会
      情報処理学会データベースシステム研究会

日程:2019年3月4日(月)〜3月6日(水)
会場:ホテルオークラJRハウステンボス
        (長崎県佐世保市ハウステンボス町10番)

◎DEIMフォーラム2019開催概要

データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIMフォーラム)は,デー
タ工学と情報マネジメントに関する国内最大の研究集会です.本フォーラムでは
若手研究者の育成およびデータべース研究コミュニティの拡大を主眼としていま
す.今回の研究発表は425件(前回から63件増),参加者は676名となり,非常
に多くの皆さまにご参加いただきました.DEIMフォーラムにご参加いただいた
皆さま,運営にご協力いただいた皆さまには心より御礼を申し上げます.
(会場では約700名と発表していましたが,キャンセル等により最終的な参加人数
は676名となりました.)

◎今回の取り組み

今回の新たな取り組みとしては,協賛企業を募集し,常駐ブースの設置や協賛企
業セッション(技術報告・LT)を行いました.また,前回まで行っていたPh.D
セッションは廃止し,口頭発表に一般枠(発表時間18分)とPh.D枠(発表時間30分)
を設けました.昨年に引き続き,ベビーシッター派遣利用手引きの整備,レディ
ースフロア等の設置,Slackによるオンライン議論サービスを行いました.

開催場所につきましては,3年ぶりの九州開催(長崎県での開催はDEWS2005の
九十九島観光ホテル以来14年ぶり)となり,会場も九州の人気スポットのハウス
テンボスに隣接するホテルオークラJRハウステンボスを選定しました.ホテル
の多くの部分を貸し切って開催することにより会期中周囲に気兼ねなく議論や交
流を深めていただくことができました.また,料理と温泉施設には好評をいただ
きました.

ベビーシッターサービスについては,チャイルドケア委員が中心となってベビー
シッター派遣利用の手引きを作成するとともに,補助要件や補助額算定基準を明
確にしました.会期中に会場内の一室にて乳幼児に対してベビーシッターがケア
を行いました.また,DBSJアワーの最後にハラスメント対策委員会の設置報告
があり委員を務めるの橋本先生によるハラスメント講習を実施し,参加者がハ
ラスメント問題について理解を深める機会を提供しました.宿泊施設ではレディ
ースフロアおよびメンズフロアを設置することで,女性そして男性が過ごしやす
い環境づくりを整備しました.

新たな試みとして,協賛企業を募集し,常駐ブースの設置や協賛企業による技
術報告セッションや昼食時にライトニングトークを行い,どちらも盛況でした.

例年同様,Slackを用いた会議中のオンライン議論を継続して行いました.発表
に対するコメントや関連研究の紹介など,Slackを利用して議論するという活用
事例も見られました.

◎プログラムハイライト

DEIM2019では2件の招待講演をいただきました.
YU Ge教授(Northeastern University)からは「A Fault-Tolerant Framework for
 Asynchronous Iterative Computations in Cloud Environments」と題して,クラ
ウド環境において反復計算を非同期で効率的に行う手法の紹介と大規模データ
を用いた実例についてご講演いただきました.

池内 幸司 教授(東京大学)からは「激甚化する水害に対する備え 〜防災分野
でのICT等の活用〜」と題して,近年の降雨や水害の発生状況とその特徴や新た
なリスクについてのご紹介や,今後の防災上の課題と防災分野におけるICT,地
球環境データ・社会経済データ等の活用などについてご講演いただきました.

日本データベース学会表彰式では,各種表彰が執り行われました.日本データ
ベース学会功労賞記念講演では,川越 恭二 特任教授(立命館大学)から,
「DBに魅せられて40年超: 企業と大学での研究・開発を経験して」と題して,
企業と大学での研究目的や方法の違いについて,これまでの仕事の紹介を交え
ながら,共通部分や各々の良さと難しさに関してのご講演ををいただきました.

研究発表は全部で425件(一般枠404件,Ph.D枠21件)の発表が行われました.
また,インタラクティブ発表として290件のポスター・デモ発表が行われまし
た.各発表には,座長1名と1名のコメンテータが付き,活発な議論が行われま
した.

インタラクティブセッションにおいては,学生プレゼンテーション賞の表彰が,
クロージングではインタラクティブ賞の表彰が行われました.

夜は,恒例のBoFセッションが開催されました.初日は,北川先生,喜連川先
生・清木先生・田中先生・中野先生・横田先生・吉川先生(以上五十音順)ら
による「あら還 三度参上! ー今年はこれまでのあら還暦と違うぞ!ー」が
が開催され,若手研究者との内容の濃い対話が行われました.
2日目は,国際会議VLDBが2020年に東京で開催されることを受けて本研究コミ
ュニティの研究力・技術力を強化することを目指す「VLDB突破会 -- 今年が正
念場 --」,企業研究者等による「就活生必見!企業で研究することの良いとこ,
悪いとこ」のBoFセッションが開催され,活発な意見交換が行われました.

◎DEIMフォーラム運営の裏話

DEIMフォーラムは,多くの運営組織メンバに協力を頂いて,過去の経験を生か
して組織的かつ効率的に運営がなされていますが,今回は発表件数と参加者数
が過去最高になり,過去の経験が適用できないこともあり,アナウンス等が遅
れ気味となり,参加者の方には色々とご迷惑をお掛けいたしました.
とくに発表件数が大規模化するにつれて,発表論文のセッション割り当てやコ
メンテータ割り当ての負担が非常に大きくなってきています.また,最終日は
16時前までとなってしまいました.
発表論文のセッション割り当てに関しては,引き続き筑波大の森嶋先生が研究
されているクラウドソーシングの技術を利用することで,初期のセッション構
成案を自動作成しました.前回までの経験をもとに様々な改良がなされており,
毎回作業量削減ができております.このように研究した技術を我々の手で利用
するということを今後も続けられればと思います.

また,実行委員会とプログラム委員会のメンバ,コメンテータ,学生スタッフ,
その他の皆さまのご協力を得て,無事開催することができました.ご尽力頂い
た皆さまに心から感謝申し上げます.

◎おわりに

発表された方は,DEIMフォーラムの次のステップとして,フォーラムに投稿
した論文を完成させて国際会議あるいは論文誌に投稿することで,研究者とし
て成長を目指して欲しいと思います.例えば,信学会では「データ工学と情報
マネジメント特集」の和文誌と英文誌を企画していますので,ぜひ投稿をご検
討ください.参加される皆さまによるDEIMフォーラムのご支援とご協力の程,
今後とも宜しくお願いします.

大塚真吾(神奈川工科大学)

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■ 2 ■ IEEE BigComp 2019 開催報告
                         吉川正俊(京都大学)

2019年2月27日から3月2日まで京都で開催したThe 6th IEEE International
Conference on Big Data and Smart Computing (BigComp2019)の報告をします.
この会議は,データベース,ウェブ,人工知能,ネットワーク,スマートコン
ピューティングなど複数の研究領域に跨がる幅広いテーマを対象としています.
KIISE (Korean Institute of Information Scientists and Engineers) により創設さ
れ,これまでバンコク,チェジュ島(2回),香港,上海で開催され,今回が
日本では初の開催でした.IEEEは2017年からスポンサーになっています.

2017年4月にサンディエゴで開催された IEEE ICDE2017 のときに,当時
BigComp Steering Committee Chairをしていた韓国のKyu-Young Whang教授
から2019年始めに京都での開催を打診されました.2020年夏には東京でVLDB
が開催されますが,この時期であれば相互に干渉することはほぼないと考え引
き受けることにしました.当初は2月開催の希望がありましたが,日本の大学
の学務日程を考えると難しく,3月も他の国内学会と重なる可能性があるため,
その間隙を縫い,日程を,国立大学の個別入試直後の4日間に設定しました.
また,支出を抑えるために会場は京都大学に決定しました.

国際会議が成功するかどうかは組織委員会の構成でほぼ決まるため,
Kyu-Young Whang教授,次のSteering Committee Chairとなったシンガポー
ルのTok Wang Ling教授やKIISEの主要メンバーとも連絡を取り,国外,国内
の組織委員会の陣容を固めて行き,強力なチームを構成することに腐心しま
した.肝となる共同プログラム委員長のトップにはTok Wang Ling教授とも
相談し筑波大学の北川博之先生にお願いすることにしました.組織委員会の
全メンバーが揃ったときには会議の成功をほぼ確信しました.準備は,全員
が集まった実会議は一度も行わず,組織委員会の日本人メンバーを中心にス
カイプによる遠隔会議により進めました.以前に比べると準備のオーバーヘ
ッドは確実に減ったと感じます.

論文は,25カ国から170件投稿され,149人のプログラム委員による査読を経
て39件のレギュラー論文と34件のショート論文が採択されました.キーノー
トトークは,University of PennsylvaniaのZachary Ives教授による"The Quest
for Community Big Data Ecosystems"とUniversity of British Columbia の
Raymond Ng教授による"Big Data in Personalized Medicine"の2件です.どち
らも傑出した研究者が実社会の問題を計算機科学技術により解決するために
取り組んできたプロジェクトの紹介であり重量感のある講演でした.また,
公募を経て7件のワークショップと1件のチュートリアル(ソウル国立大学の
U Kang博士による"Lightweight Deep Learning with Model Compression")を
実施しました.

前年同時期に日本で開催された国際会議で開催直前に参加登録が急激に増え
たという経験を聞いていたため,参加者数が少な過ぎず多過ぎない適切な数
になるよう注意を払いました.当初予定していた京都大学の時計台ホールが
工事のため使えず定員が少なめのホールを全体セッション会場としていまし
たが,開催約1ヶ月前の事前登録締切の時点で想定参加者数を超え,全体セッ
ション会場の定員も超える恐れが出てきたため,その後は広報活動を一切行
わないことにしました.結果的には18カ国以上から300人以上の参加者があ
りました.参加者が全体セッション会場から溢れ出ることも無く安堵しまし
た.バンケットでは参加者に芸舞妓の舞踊を楽しんでもらいました.

振り替えると私がKyu-Young Whang教授と初めて会ったのは1985年に上林
彌彦先生が京都で開催された国際会議FODOでした.国際会議はそこで発表
される研究成果が一番の成果ですが,国境を越え研究者が共同作業を通じて
が知り合いになる契機を与えることも重要な機能だと思います.この国際会
議がそのような機会を提供できたなら嬉しく思います.

今回の開催に当たっては多くの方のご協力を頂きました.日本データベー
ス学会にはご後援を頂きました.株式会社インテージにはスポンサー(公式
表記ではPatron)としてご協力頂きました.また,Zachary Ives教授の招へ
いに際しては大阪大学の鬼塚真先生に大変お世話になりました.本国際会議
は京都市および公益財団法人京都文化交流コンベンションビューローの補助
金を活用して実施しました.さらに,立石科学技術振興財団からも補助を頂
きました.最後になりましたが,本国際会議を成功に導くために多くの時間
を割いて頂いた組織委員会及びプログラム委員会の皆様に感謝します.

吉川正俊(京都大学)

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■ 3 ■ The latest database research topics from CIDR 2019
              Le Hieu Hanh (Tokyo Institute of Technology)

This report provides general information about CIDR 2019, brief summaries
of one keynote and two research topics from CIDR 2019 program, and
some fundamental changes from CIDR 2020.

(1) About CIDR2019
CIDR2019 was hosted at Asilomar Conference Ground, California (US) from
January 13th to 16th, 2019. There were approximately 140 participants,
mainly from well-known database groups of the US and Germany universities.
Two keynotes and 29 research papers were presented combined from seven
sessions including hardware-conscious query processing, cloud, systems &
applications, query optimization, multimedia & multimodal, data integration,
and system correctness & performance. There were also two gong shows
(a kind of BoF section) in two nights where each author presented a 5-minute
talk. To present at the gong show, authors must have a one-page abstract
accepted by the program committee. For each night, there was a best gong
show award and this year’s prize was a red Polo shirt with Prof. Stonebraker’s
signature. The acceptance ratios of both research and abstract track were not
disclosed.

(2) Keynotes
There were two keynotes about DNA data storage (Microsoft and University
of Washington) [1] and modern data management environment inside a
medical company. The former keynote is fascinating and may become a
significant evolution in storing data. The DNA data storage has much higher
density as it uses four bits of ACGT to represent the data. So, one spot of
the DNA (~0.275 micrometers) can store up to 10TB of data showing that
the DNA storage can reach a 10 million times higher density than a modern
tape storage. As initial results, so far, 800MB of data have been stored and
fully recovered. The write and read bandwidth are O(KB/s) and O(MB/s).
The next challenges are getting the O(TB/s) of the bandwidth, providing
scalability, and reducing the computation cost.

(3) Research session
There was a big trend of applying machine learning techniques, i.e. 10 of
29 research papers. Although most of them focus on multimedia and
application such as item suggestion or object detection, there were two
interesting topics provided a vision of applying machine learning to the core
components of the database systems.

[Database System-Massachusetts Institute of Technology (MIT)]
The researchers from the database group of MIT presents a vision of
replacing all core components of the database systems by learned
components [2]. The data structure, the optimal data access, and the query
plan are learned based on modeling the data distribution, workload, and
hardware. The learned models are embedded through code synthesis in
every component of the database systems. Through the learned index
structure and query plan, the learned sort gained better execution time
than the radix sort. Learned scheduler also gained 21% better performance
than a fair scheduler. It also opens a database system in which the hardware
components (FPGA/GPU/CPU) can be customized.

[Query Optimization-Technical University of Munich (TUM)]
Query optimizer requires accurate cardinality estimator. The Database
workgroup from TUM presents learned cardinality estimators in Group-by
and correlated join query [3, 4]. Most existing systems have a poor
estimate of the number of distinct groups. To get a good estimation at an
optimal time, they presented an estimation framework that combines
sketched full information over individual columns with random sampling
to correct for correlation bias between attributes. For join-crossing
correlation, a deep learning approach that learns to predict join-crossing
correlations in the data. The approach is based on a specialized deep
learning model to express query features using sets, so can keep the
capacity memorizing different permutations of a query’s features. It results
in smaller models and better predictions. Although the preliminary experimental
results were positive, however, there was controversial discussion from the
participants about the initial training data, the overall cost of the
deep-learning based methods compared with traditional methods.

There were also other modern topics presented at CIDR2019 such as
building a differential private SQL engine [5], a data relationship management
system [6] for different data sets, workflows, and schemas for efficient data
integration, etc.

(4) Fundamental changes from the next CIDR
There are several significant changes from the next CIDR.
1. CIDR will be organized every year instead of every two years, alternating
    between Amsterdam (even years) and the US (odd years).
2. An author can now submit at most two research papers for review. Until
    now, an author can only submit one research paper.
3. Participating in the conference will be easier as the locations should admit
    twice as many attendees.
However, CIDR will keep its characteristics, such as the single-track of
keynote, research session presented by senior authors.

(5) Conclusion
Participating in a conference like CIDR is an excellent chance to grasp the
latest research topics in database field. One of the efficient ways to attend
is to submit a full research paper or one-page abstract paper. The CIDR
2020 web page [7] is already opened, and the deadline for the submission
is August 23rd, 2019.

References
[1] K. Strauss, and L. Ceze, “DNA Data Storage and Near-Molecule Processing
     for the Yottabyte Era,” CIDR 2019 keynote.
[2] T. Kraska, et al., “SageDB: A Learned Database System,” CIDR 2019.
[3] M. J. Freitag, et al., “Every Row Counts: Combining Sketches and Sampling
     for Accurate Group-By Result Estimates,” CIDR 2019.
[4] A. Kipf, et al., “Learned Cardinalities: Estimating Correlated Joins with
     Deep Learning,” CIDR 2019.
[5] I. Kotsogiannis, et al., “Architecting a Differentially Private
SQL Engine,” CIDR 2019.
[6] Z. Ives, et al., “Dataset Relationship Management,” CIDR 2019.
[7] CIDR 2020 home page, http://cidrdb.org/cidr2020/index.html.

Le Hieu Hanh (Tokyo Institute of Technology)

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■ 4 ■ AAAI-19 参加報告
                           大塚淳史(NTT)

2019年1月27日から2月1日にアメリカハワイ州ホノルルで開催されたAAAI-19
(The Thirty-Third AAAI Conference on Artificial Intelligence) に参加致しました.
AAAIはIJCAIと並び,人工知能分野のトップ会議の一つであり,関連分野から
多数の研究者が参加します.会議では,テクニカルセッション(オーラル・
ポスター)の他,招待講演,併設国際会議,ワークショップ,チュートリアル
が開催され,いずれのセッションにおいても活発な議論行われます.今年の論
文投稿数は,アブストラクト投稿が7,754件,論文投稿が7,095件となり昨年と
比較して103%の増加となっています.採択数は1,145件(採録率16.2%)とな
り,昨年の採択率25%から10ポイント近く低下しています.

分野別では,Machine Learning分野で最多の2,555件の投稿がありました.次
いでNLPが1,123件,Visionが1,057件となり,以上3分野で全投稿論文の61%
(採択論文の59%)を占めます.昨年度から投稿数が大幅に増加した分野と
しては,Reasoning(投稿件数昨年度比+196%)やHumans and AI (+161%)
が挙げられており,一方でCognitive Systems (-56%) や,Human Computation
(+0.9%) は投稿件数が減少または横ばいとなった分野として紹介されていまし
た.国別の投稿件数の割合では,中国が2,419件(うち382件採択)の論文を
投稿しており全体のトップとなっています.次いでアメリカが1,280件(うち
264件採択)の投稿をしており,日本は全体3位の208件(うち33件採択)の
論文を投稿していますが,トップの2国とは大きく差が開いており,AI分野
においては,中国とアメリカの2国が突出しているという現状が顕著に示され
た結果といえます.また,本会議の特徴的な傾向として,全投稿の68.5%に
あたる論文が,学生をfirst authorにした論文であることが挙げられていました.

会議のOpening talkは,ソーシャルロボットJoboのファウンダーであるMITの
Cynthia Breazeal氏による,AIやロボットが果たすべき社会的貢献についての
講演であり,その他にも,GoogleのIan Goodfellow氏の敵対的学習についての
講演やJD.comのYu Zheng氏のスマートシティに関する講演など合計8件の招
待講演が開催されました.講演については,一部はAAAI-19のWebページで
ビデオ配信 (https://aaai.org/Conferences/AAAI-19/invited-speakers/) されて
います.

テクニカルセッションでは,1セッションで10件程度の論文が紹介されます.
そのうち3~4件程度は,オーラル発表として質疑応答ありの発表を行います.
その他の論文はスポットライトとして,2分程度の紹介時間(質疑なし)を与
えられ,実質的な議論は後のポスターセッションで行うことになります.発
表論文の傾向としては,先に上げたMachine Learning,NLP,Visonを中心に
深層学習全盛となっており,8割~9割の発表は深層学習を用いた印象でした.
その中でも,敵対的学習や強化学習を中心に,深層学習のネットワーク構造
だけでなく,学習方法やデータ拡張に関する発表が多くなっていました.


次回のAAAIは2020年の2月7日~12日までの期間でアメリカのニューヨーク
で開催されます.AI全般を扱う会議ですので,幅広い研究分野について,最
新の動向を知ることができます.また,多くの企業がブース出展しており,
招待講演も含めて,ビジネスや社会的動向の調査もできるのではないかと思
います.近年は投稿件数の増加から,採択率は低下していますが,データベ
ース学会に関連する領域についても多くの論文が投稿されていますので,ぜ
ひとも投稿・参加をご検討いただければと思います.

大塚淳史(NTT)

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■ 5 ■ VLDBへの道(その1)
   天方大地(大阪大学)・石川佳治(名古屋大学)・鬼塚真(大阪大学)

「VLDBとは? ~スコープ,トラック,投稿形式~」
天方大地(大阪大学)・石川佳治(名古屋大学)

この記事では,VLDB (International Conference on Very Large Data Bases)
のスコープ・トラック・論文の投稿形式について簡潔に紹介します.詳細に
ついては,ホームページ (https://vldb2020.org/) を御覧ください.本記事は
今後のDBSJ newsletterにて連載予定となっております.VLDB2020は,東京
で開催されるので,本連載でVLDBへの関心が高まり,日本からの投稿数お
よび採択数が増加すれば幸いです.

#スコープ.
VLDBは,データベース分野のトップ会議(SIGMOD・VLDB・ICDEはデー
タベース分野の3大会議とされています)であり,非常に長い歴史(VLDB
2020は46回目)を保有しています.また,企業からの関心も非常に高く,
VLDB2019では,amazon,Microsoft,facebook等の多くの有名企業がスポ
ンサーとなっています.VLDBのスコープは,"broad range of topics related
to all aspects of data management"(VLDB2020のホームページから抜粋)
とあるように,データ管理に関する研究です.近年発表されている論文は,
時空間データベースやグラフデータベースにおける問い合わせの高速化,
クラウドソーシング,分散処理がやはり多く見受けられますが,それ以外
のトピックも採択されています.特に,最近では機械学習に関する論文が
増加している傾向にあり,例えばVLDB2018 (http://vldb2018.lncc.br/program
-structure.html) では,機械学習に関するデータベース技術で1つのセッショ
ン (Database Techniques for Machine Learning) が構成されていました.ま
た,知識グラフやセマンティックWebも取り扱っており,(非自明な)高
速化アルゴリズムを取り入れることができれば,(主観ですが)VLDBのス
コープに十分入り得るのではないかと思います.

#トラック
VLDB2020では,Research Track,Industrial Track,PhD Track,および
Demonstrationが用意されています(チュートリアルとワークショップも
ありますが,本記事では対象外とします).Research Trackはさらに複数
のカテゴリに分かれており,Regular Research Papers,Experiment and
Analysis Papers,およびVision Papersの3つが存在します.本記事ではこ
れらについて紹介します(その他のカテゴリについては今後の記事で紹介
予定です).

まず,Regular Research Papersは,Foundations Papers, Algorithms Papers,
System papers,およびInformation System Architecture Papersの4つに
分かれます.これはあくまでも,査読をスムーズに行うためであり,採録
論文が公開されるときには4つのうちのどれであったかは明記されないよう
です.著者は投稿時に選択することになります.
-  Foundations Papers および Algorithms Papersは,前者が主に理論等の基
   礎的な領域を対象としており,後者はアルゴリズムに関する提案が中心の
   論文を対象としています.
-  System papersは,システムに関する論文のカテゴリです.システム関係
   の論文は,落とされやすい(理論的検証が不十分など)という問題が前々
   から指摘されており,その問題への対応とも考えられます.
-  Information System Architecture Papersは,"The key contribution of those
   papers lies in an innovative architecture for a new type of data management
   system"とあるように,新たなデータ管理システムに対する提案を主題と
   した論文を募集しているようです.System papersと比べて,今後の(シ
   ステムへの)影響とビジョンを評価されるカテゴリとなっています.
次に、Experiment and Analysis Papersは,新たなアルゴリズム等を提案す
るのではなく,同じ(または類似した)問題に取り組んだ既存のアルゴリ
ズムやシステムを網羅的に実験・評価・比較した結果を紹介する論文用の
カテゴリです.このカテゴリに採択されるためには,再現性の保証が必須
となっております.最後に,Vision Papersは,今後実世界で起こりうる課
題やプロジェクトの提起に関する論文用のカテゴリです.それらに対して
解法を提案する必要はありませんが,課題やプロジェクトの成功の評価指
標が何であるかについて述べる必要があります.

まとめると,これまで(PVLDB Vol. 12まで)との差異は以下のようにな
ります.
-  これまでは,Regular Research Papers, Experiment and Analysis Papers,
   Vision Papersに加えてInnovation Systems and Applications Papersという
   カテゴリがありましたが,廃止されました.
-  Vision Papersのページ数が6ページに削減されました.
-  Regular Research Papersについては,投稿時に4つの分類のどれに対応
   するかを選ぶことになりました.
-  Experiment & Analysis Papersについては,再現性の保証のための取り
   組みへの参加が必須となりました.

#投稿形式(PVLDB)
VLDBで発表するためには,PVLDB (The Proceedings of the VLDB Endowment)
に採択される必要があります.PVLDB (https://www.vldb.org/pvldb/) は,
「毎月」論文募集を行っています.VLDB2020では,2019/4/1から2020/3/1
の間にPVLDBに投稿され,かつ採択された論文に発表の機会が与えられます.
PVLDBの主な特徴は以下の通りです.
-  x月ラウンドの締切では,x-1月20日に投稿サイトがオープンされます.
   例えば,5月1日締切のラウンドで投稿したい場合は,4/20から5/1の間
   に投稿する必要があります.
-  採択された論文はジャーナルペーパーとして扱われます(近年,SIGMOD
   とICDEもrevisionフェーズを含む査読プロセスを採用していますが,論
   文誌扱いとされるのは現在VLDBだけです).また,採択された論文は無
   料でアクセス可能です.
-  投稿月から約2ヶ月後に初回判定が行われます.判定は,採録 (acceptance),
   改訂 (revision),不採録 (rejection) があります.改訂の場合は,修正期間
   が最長3ヶ月与えられます.
-  不採録となった論文は,1年間PVLDBに投稿禁止です.
-  論文はvldbフォーマットで最大12ページ(vision paperは6ページ)となっ
   ています.ただし,refenreceは含まれません.また,シングルブラインド
   で査読されます.

以上,簡潔ではありますが,VLDBのスコープ,トラック,投稿形式につい
て紹介しました.繰り返しにはなりますが,詳細はVLDB2020のホームペー
ジでご確認下さい.VLDB2020で発表する場合でも締切はまだまだ先となり
ますので,投稿を是非ご検討下さい.

天方大地(大阪大学大学院情報科学研究科 助教)
石川佳治(名古屋大学情報学研究科 教授)


「VLDB突破会の活動状況」 鬼塚真(大阪大学)

2020年にVLDB国際会議の東京開催に合わせて,VLDB突破会の取り組みを
2017年8月より実施している.VLDB突破会の狙いは,VLDBを含む難関会議
への論文投稿数の増加,および採択率の向上である.これらの目標を実現す
るため,SIGMOD, VLDB の投稿締め切り前にVLDB突破会(研究会)を実施す
るとともに,DEIMのBOFセッションで投稿・採択に関する経験談の共有を
行ってきている.直近のDEIM2019 のBOFでは,VLDB2020の実行委員長で
ある石川佳治先生からVLDB2020 の準備状況をご報告頂き,また肖川先生に
は過去の経験を踏まえて採択率を向上する具体的なノウハウについて共有し
て頂いた.肖川先生の許可を得て,発表スライドは以下に公開されているの
で,皆さんには是非ともご活用して頂きたい.
URL https://sites.google.com/site/chuanxiao1983/publication/publication
-files/deim2019-topdbsubmission.pptx

VLDB突破会は以下の3つの点を運営方針としている.
1.   SIGMOD/VLDBあるいはそれらに準じるレベルの国際会議において採択
      経験のある方々に,VLDB突破会への参加・メンターとしての協力をお
      願いする.
2.  メンターによるサポートの元,若手研究者のSIGMOD/VLDBへの論文投
     稿を支援する.
3.  SIGMOD/VLDB の投稿閉め切り一か月前後の時期を含めて,年に3-4回
     のVLDB突破会(研究会)を開催する.特に,投稿締め切り1か月前の
     VLDB突破会では,参加者は投稿論文を完成させてVLDB突破会に参加し
     て頂くことで,論文執筆・採択のノウハウの共有して,締め切りまでに
     投稿論文の質の向上させることを支援する.

VLDB2020向けの投稿は 2019/3/2より開始されており,最終締め切りは1年
後の2020/3/1である.平均的な採択率は15-20%程度を考慮すると,最初の
投稿で採択される確率は低いと考えた方が良い.このため,SIGMOD, ICDE
など他の国際会議への投稿を併用して VLDB2020での採択を狙う必要があり,
時期的にはまさに正念場の時期に差し掛かっている.特に9月までにSIGMOD
あるいはVLDBに投稿することが大きなマイルストンになると思われるので,
次回のVLDB突破会は6月あるいは7月に実施する予定である.

VLDB突破会では,dbjapanのコミュニティからの参加を待っております.
また,研究論文だけではなく開発事例に関する発表も重要であるので
 (industrial paper),大学だけではなく企業からの参加もご検討の程よろしく
お願いいたします.

鬼塚真(大阪大学大学院情報科学研究科 教授)

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Takahiro Komamizu
Ph.D. in Engineering
Nagoya University
E-mail: taka-coma [at] acm.org