日本データベース学会

日本データベース学会 Newsletter 2026年4月号 (Vol.19, No. 1)

目次

  1. DEIM2026 開催報告
    大島 裕明(兵庫県立大学)
  2. AAAI2026 参加報告
    佐々木 勇和(大阪大学)
  3. PerCom2026 参加報告
    谷垣 慶(大阪大学)

本号では、DEIM2026の開催報告をご寄稿いただいております。また、国際会議AAAI2026およびPerCom2026の参加報告をご寄稿をいただきました。会議の動向やご自身の研究内容などのご紹介となります。

本号並びに DBSJ Newsletter に対するご意見あるいは次号以降に期待する内容についてご意見がございましたら news-com [at] dbsj.org までお寄せください。

DBSJ Newsletter 編集委員会
(担当編集委員 天方 大地)


1.DEIM2026 開催報告

大島 裕明(兵庫県立大学)

 DEIM2026は、いかがでしたでしょうか。ご意見、ご感想、励まし、クレーム(!)など、何らかの形でお伝えいただけますと、それがどのようなものであれ、私は大変うれしいです。神戸の心地のよい空気や、おいしい食べ物なども満喫していただけましたでしょうか。

 さて、第18回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(第24回日本データベース学会年次大会)、通称DEIM2026を、2026年2月28日(土)から3月5日(木)にかけて開催いたしました。本フォーラムは、これまでと同様の直列ハイブリッド形式を採用し、2月28日(土)から3月1日(月)まではオンライン開催、3月4日(水)および5日(木)は神戸国際会議場・神戸国際展示場にてオンサイト開催いたしました。最終的には、901名という非常に多くの方々にご参加いただくことができました。ありがとうございました。

 DEIM2026では、「自然言語処理・機械学習基礎」、「ビッグデータ基盤技術・データセキュリティ・プライバシ」、「情報検索・情報推薦・ソーシャルメディア」、「メディア処理・HCI・人間中心情報マネジメント」、「高度なデータ利活用・ドメイン応用(医療情報、教育、地理情報等)」の5つのトラックにおいて研究発表が行われました。一般発表の投稿数は445件であり、そのうち口頭発表とインタラクティブ発表の両方が行われたものが410件、口頭発表のみが35件でした。また、スポンサー企業による技術報告発表も17件行われました。一般発表のうち、学生による発表は383件、一般の発表は62件であり、学生による活発な研究発表が本フォーラムの大きな特徴となっています。

 論文内容については、萌芽的なアイデア段階の研究から、完成度が高く今後国際会議や論文誌への投稿が期待される研究まで幅広く見られました。データベースコミュニティの特徴でもあるように、基盤技術から応用まで多様な研究がバランスよく存在しており、いずれのトラックにおいても質の高い研究成果が見られました。これだけの研究成果が集まる場を持っているコミュニティはそう多くはありません。我々は、これらの成果が今後うまく社会に還元されるような仕組みを考えていかねばならぬと感じました。

 今年度の発表内容を俯瞰すると、大規模言語モデル(LLM)をはじめとする生成AIに関連する研究が引き続き多く見られました。コンテンツ理解、検索、推薦、対話生成、要約、教育支援、医療応用、さらにはマルチエージェント化など、様々な方向での活用や研究が進められていました。今後も生成AIは飛躍的な進展を遂げるでしょう。生成AIワイワイの流れはしばらく続くことが予想されます。生成AIを単なるツールとして用いるのか、生成AIそのものを研究対象とするのかも含め、我々は真剣に今後の生成AIとの付き合い方を考えなくてはいけないと感じました。

 グラフ処理、時系列解析、データベース内部処理、分散処理基盤といったデータ工学の基盤領域に関する研究も引き続き活発でした。さらに、医療、観光、教育、スポーツなど多様なドメインへの応用研究も多数見られ、DEIMの研究領域の厚みと広さが改めて確認できたと思います。

 オンライン開催は3日間で、最大12パラレルのセッションに分かれて口頭発表が行われました。Zoom EventsやSlackを活用することで、日本全国の参加者による活発な議論が展開されました。一方で、このような大規模化により、関心の近い発表どうしが並列に配置される場面も少なくなく、すべての発表を十分に追いきることの難しさも感じられました。

 3月3日(火)は移動日とされ、翌4日(水)より神戸国際会議場および神戸国際展示場にてオンサイトプログラムが実施されました。オンサイト初日には、4件のチュートリアルが実施されました。今回は、基礎から応用まで幅広いテーマに関するチュートリアルを行っていただくことができ、広い参加者層の多くの方に満足していただけたのではないかと思います。また、昼にはスポンサー様による3件のランチョンセミナーが開催され、こちらも大変な賑わいが見られました。午後にはインタラクティブセッションおよびオープニングが行われ、ポスター発表を中心とした密度の高い議論が各所で展開されました。多くの発表が行われたインタラクティブセッションでは、発表者と参加者との間で直接的かつ活発な意見交換が行われました。また、夜には「研究ライフをN倍ブチ上げるためにキミたちはどうしますか」という学生企画が開催され、研究内容のみならずキャリアや研究生活に関する議論が行われ、世代や所属を越えた交流の場が形成されました。

 最終日となる3月5日(木)には、インタラクティブセッションおよびDBSJアワーに続いて招待講演が実施されました。招待講演では、「情報」という概念そのものに立ち返る内容として、小野厚夫先生による「情報という言葉の履歴」、田中克己先生による「データサイエンスと情報学」と題した講演が行われました。言葉は大事だなあと改めて思いました。このような講演を拝聴し、私としてはいろいろ考える非常に良い機会となりました。

 運営の観点からは、参加者および発表者の皆様がDEIMの運営に非常に慣れておられたことが印象的であり、その点で運営として大いに助けられました。本フォーラムの規模は年々拡大しており、それ自体は決して悪いことではないと思います。しかしその一方で、個々の研究に対する深い議論の機会が相対的に減少している可能性も感じられました。DEIMは多様な研究が集まる貴重な場である一方で、今後は研究をより深く議論するための場の在り方についても、コミュニティとして検討していく必要があるのではないかと考えています。たとえば、WebDB夏のワークショップのように、特定のテーマについて集中的に議論を行う場の必要性も強く感じました。DEIMが単に規模の拡大を目指すのではなく、研究の質の深化や社会への還元をどのように実現していくかを、実行委員長としてはもうちょっと考えねばならんかったかなあと、少し反省です。

 DEIM2026は、多くの企業と団体からのご支援のもと開催されました。スポンサー数は28件にのぼり、プラチナスポンサー4件、ゴールドスポンサー19件、シルバースポンサー5件のご協賛を賜りました。産学連携の観点からも、本フォーラムは重要な交流の場として機能しています。

 本フォーラムの開催は、本当に多くの方々のご協力によって成り立っていると言えます。座長・コメンテータの方々には、セッション運営から個々の発表の評価まで、大変お世話になりました。また、運営を担っていただいた実行委員の皆様には、感謝しかございません。もちろん、研究発表を行っていただいた皆様や、議論に参加していただいた参加者の皆様が、第一にDEIMに不可欠な存在です。皆様に、心より感謝申し上げます。今後もDEIMが、データ工学および情報マネジメント分野の発展とコミュニティ形成に寄与する場として発展していくことを期待しております。

 最後の最後に、プログラム委員長の戸田浩之先生(横浜市立大学)に感謝を。夏から、毎週のようにミーティングしましたな。私は大変楽しかったです。我々は、ようやったと思います。ありがとうございました。また、どこかで一緒にやりましょう。

著者紹介:
大島 裕明(兵庫県立大学)
 2007年京都大学大学院情報学研究科博士後期課程修了。博士(情報学)。現在、兵庫県立大学大学院情報科学研究科/社会情報科学部准教授。主に情報検索、ソーシャルコンピューティング、デザイン学の研究に従事していると称しているが、DEIMの論文を眺めると研究分野の定義が揺らいでいる気もする。日本データベース学会、電子情報通信学会、情報処理学会(シニア会員)、ACM各会員。


2.AAAI2026 参加報告

佐々木 勇和(大阪大学)

 AAAI2026は1月20日から27日にシンガポールで開催されました.投稿数はおよそ29,000件, そのうち20,000件が中国からの投稿でした.AAAI2025と比べて投稿数はほぼ2倍と,AI会議の大規模化には驚かされます.採択論文数は,4,167論文で採択率は17.6%でした.

 私は初めてAAAIに参加致しました.研究トピックは,コンピュータビジョン,自然言語処理,データマイニング,機械学習,エージェントから応用科学やAI倫理など幅広く,自分の興味に合うものが探すのが大変な一方,多様な分野の研究動向の調査ができました.発表はポスター中心で会場が非常に広く,一度会った人とは二度と会えないような広さでした.

 私はExplaining Temporal Graph Neural Network via Quantum-Inspired Evolutionary Algorithmというタイトルの論文がポスター採択されました.時間グラフニューラルネットワークの予測に大きく影響したサブグラフを,Quantum-Inspired Evolutionary Algorithmという量子から着想を得ている進化アルゴリズム技術を用いて効率的に見つけるという技術を開発しました.本論文の日本語版はDEIM2025でも発表しております.

 キーノートトークは毎日あったのですが,印象に残ってるのは,1994年にチューリング賞を受賞したEdward FeigenbaumのA Tribute to and Lecture by a Pioneer of AI on his 90th Birthdayです.90歳の誕生日ということでオンラインかと思ってたのですが,現地でプレゼンしておりました.プレゼンは若手研究者へのメッセージで2つ;一つは小さい問題ではなく大きな問題を解くこと,二つはトーマスクーンの科学革命の構造を読むことでした.トーマスクーンのような科学哲学的知見を学ぶようお勧めすることに非常に好感を持ちました.また,運営がa “true” pioneer of AIと trueを強調していたのも含意がありそうで面白かったです.

 次回のAAAI 2027は2月16日から23日にMontreal, Quebec, Canadaで開催されるとのことです.一度参加されてみると面白いかと思います.

著者紹介:
佐々木 勇和(大阪大学)

liu
大阪大学大学院情報科学研究科の准教授.グラフデータ分析と管理,信頼される人工知能,モバイル・時空間データ分析と管理,情報処理技術の異分野適用に関する研究をしています.2014年に大阪大学にて情報科学の博士を取得しました.博士後期課程の学生を募集しています.

3.PerCom2026 参加報告

谷垣 慶(大阪大学)

 2026年3月16日から20日までの5日間、イタリア・ピサの国立研究評議会(CNR)で開催されたIEEE PerCom 2026 (24th IEEE International Conference on Pervasive Computing and Communications) に現地参加し、論文発表を行いました。

 IEEE PerComは今年で24回目を迎え、パーベイシブコンピューティング・通信分野における最高峰の年次学術会議として世界中から研究者が集まります。今回は37カ国から約350名が参加し、224本の投稿論文のうち35本(採択率15.6%)が採択されました。国別投稿数では日本が51本と3番目に多く、この分野における日本の研究コミュニティの存在感を改めて実感しました。

 プログラム全体を通じては、ウェアラブルセンサーや無線通信を活用した行動認識からエッジコンピューティング、プライバシー・セキュリティなど幅広いトピックが扱われ、特に大規模言語モデルや基盤モデルをセンシングシステムへ応用する研究が多数登場しました。

 我々の研究室からは、前川先生がパネルディスカッション「What AI Did (and Didn’t) Do in Our PerCom Papers」に登壇されたほか、Qiaoさんと私の2本の論文が採択・発表されました。このパネルでは、コード生成をはじめとする生成AIが台頭する中で、研究においてAIに任せるべき作業と自分たちで行うべき作業の境界線について深い議論が交わされ、コミュニティ全体が生成AIのあり方を真剣に模索していることが伝わりました。

 私は「HARBench: A Comprehensive Benchmark for Evaluating Foundation Models in Sensor-based Human Activity Recognition」と題した研究を発表しました。本研究では、ウェアラブルセンサーを用いた行動認識における基盤モデルの性能を複数の評価軸から包括的に比較するベンチマークを提案しています。発表後の質疑応答ではHARBenchの今後の発展の方向性について議論が行われ、有益な示唆を得ることができました。

 数ある発表の中でも、Nirhoshan Sivaroopan氏ら(University of Sydney)による「RAG-HAR: Retrieval Augmented Generation-based Human Activity Recognition」が印象に残っています。本研究は、RAGの枠組みをセンサーベースの行動認識に応用したもので、訓練不要で新たな行動クラスに対応できる点が特徴的です。また、実機へ実装デモも同時に発表されており、システムの動作を実際に確認しながら発表者と直接ディスカッションすることができました。その場で私のHARBenchを今後の評価に活用したいという話にもなり、研究間の繋がりを実感できた貴重な交流となりました。

 会期中のポスターセッションでは、ドイツやイタリアをはじめ各国の研究者と多くの議論を交わしました。Physical AIやLLMの研究への取り入れ方、パーベイシブコンピューティングの今後の方向性など様々なホットトピックについて意見を交換し、自身の研究の方向性についても改めて深く考えさせられました。世界各国の研究者と直接議論できたことは、研究者として非常に大きな刺激となりました。

 次回のIEEE PerCom 2027はインド・ゴアでの開催が予定されています。パーベイシブコンピューティング・センシング分野にご興味のある方は、ぜひ論文投稿および現地参加を検討されてみてはいかがでしょうか。


            ピサの町並み


            ピサの斜塔


            会場の様子

著者紹介:
谷垣 慶(大阪大学)

liu
2018年、大阪大学入学。大阪大学大学院情報科学研究科博士後期課程在籍。ウェアラブルセンサーを用いた人間行動認識(Human Activity Recognition)の基盤モデル構築などの研究に従事。PNAS Nexus、ACM IMWUT、IEEE PerCom等に論文を発表。

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