日本データベース学会 Newsletter 2024年11月号 (Vol.17, No. 6)
若手研究者対談企画号
本号では,若手研究者の方々の対談記事を企画しました.産学両面で参加をお願いし,名古屋大学,富士通,NTTの方々に参加いただき,多様な意見を交換する対談になりました.研究者を志す若い学生の方のご参考になればと思います.
本号ならびにDBSJ Newsletterに対するご意見あるいは次号以降に期待する内容についてご意見がございましたらnews-com [at] dbsj.orgまでお寄せください.
DBSJ Newsletter 編集委員会(担当編集委員 駒水 孝裕)
対談企画について
駒水 孝裕(名古屋大学)
本企画も3回目となりました.当初の想定以上に多様な方々に参加いただき,若手研究者同士の交流というだけでなく,異分野・異業種の交流機会になってきました.多様な視点を持つ方々を対談という形で起こすことで,よりそれぞれの考え方の違いを感じ取れる記事になったと思いますので,ぜひご一読いただけると幸いです.
今回の対談には,以下の3名にご参加いただきました.
★ 杉浦 健人(名古屋大)
◆ 髙木 拓也(富士通)
♣ 熊谷 香織(NTT)
対談では,以下の質問を設定しました.
1. 氏名と所属と現在行っている研究を教えて下さい
2. 現在の職場で研究を行おうと志したきっかけや理由を教えて下さい.
3. 学生時代,大学での研究と企業の研究でギャップを感じたこととその理由を教えてください.
4. 取り組んでいる研究業務中で達成感を感じたこととその理由を教えて下さい.
5. 学生の頃と比較して自分が成長したと思うことを教えて下さい.
6. 今後に取り組みたいことを教えて下さい(キャリアパス,研究テーマ,気になる技術など).
7. 後日談:今回の対談企画に参加した感想を聞かせてください.
以下対談の内容になります.お楽しみください.
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◎氏名と所属と現在行っている研究を教えて下さい
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♣ 熊谷
熊谷 香織です.所属はNTT の人間情報研究所です.現在は映像処理の分野で,特に人が写っている映像を扱っていて,人物の行動認識などの研究をしています.
◆ 髙木
髙木 拓也と申します.所属は富士通株式会社の人工知能研究所です.富士通には国外にも研究所がたくさんあるんですけど,国内には七つの研究所があり,人工知能研究所もそのうちの一つです.研究分野はAIを使った意思決定に関する研究に取り組んでます.
★ 杉浦
杉浦 健人です.名古屋大学の大学院情報学研究科で助教をやっています.研究の内容はデータベースの中の索引構造の開発に取り組んでます.最近メニーコア CPU ってどんどんCPU コアの数が増えてるんですけど,コアを効率的に利用できるような索引を作る研究をやっています.
★ 杉浦
自分は,学生の頃の研究で確率的イベントスリームを使ってたんですけど,一個のアプリケーションで人間の行動を認識して,ラベル振って,パターン認識するんですけど,今の人間の行動認識ってどれぐらいの精度になってるんだろうなっていうところが気になります.
♣ 熊谷
そうですね.行動の中でもいろんな階層があって,歩くとか物を取るとか具体的な行動に関しては,公開データセットで8割,9割とかになっているんですけど,難しいのが文脈を理解して,例えば,小売店舗の中ですと,商品の陳列とか掃除とか,そういう抽象的な概念を考えつつ認識するところがまだAIでは認識難しいというところですかね.
♣ 熊谷
データベースコアの研究されていて,学生に興味を持ってもらって,研究室に入ってもらうところの工夫とかってされてたりするんでしょうか?結構ハードルが高いなと思ったのですが.
★ 杉浦
学生を呼ぶ時の魔法の言葉として「データベースみたいなミドルウェアについて詳しくなっとけば食いっぱぐれないよ」っていつも言ってますね.学生に対しては,ウェブサービスのボトルネックを解消する研修を2, 3ヶ月くらいでやってもらって,ミドルウェア触って性能改善する楽しさを経験してもらって,そこから興味を持ってもらうようにしてますね.
♣ 熊谷
最初に成功体験簡単に積んでもらって,入ってもらってみたいな感じですね.
◆ 髙木
杉浦さんは学生時代は違う研究をされていたのですね.アカデミアの人は結構,学生時代から一貫した研究テーマでやられてる方が多いのかなっていう印象を持っていたので,意外と思ったんですが,いつ頃から研究分野は変えられたんですか?きっかけとかはあったんでしょうか?
★ 杉浦
9割ぐらいは採択されたプロジェクトの都合だったんですけど,プロジェクトの中でデータベースの索引構造関係に取り組む人が空いてたので,やってみようってことで始まったっていうところですね.最近RDBの索引構造をやっている人がほぼほぼいないので,改めて開拓し直してる感じで,まあ楽しいです.
◆ 髙木
なるほど,縁があったんですね
● 駒水(司会)
大規模言語モデルってホットなキーワードですけど,高木さん,因果推論と大規模言語モデルってどういう関係性で見ていますか?
◆ 髙木
LLMが因果関係を捉えているのかどうかという話はよく議論されています.まだ答えは出ていないと思うんですが,最近の研究としては,LLMを使って統計的因果探索の性能を上げようっていうのはよくやられています.A が原因で B が結果であるというドメイン知識を事前に与えておくと因果探索の性能が上がるんですよね.シンプルなアイディアとしては,そのドメイン知識を提供してくれる専門家をLLMで置き換えちゃうやり方があります.ただこれはLLMがわかるような題材であって,もっと専門的な,例えば医療分野における遺伝子間の発現量の因果関係っていうのはLLMに聞いても正しい答えが返ってこないと思われるので,そこら辺はRAG (Retrieval Augmented Generation) で補うとか,そういうのが必要なのかなと思います.
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◎現在の職場で研究を行おうと志したきっかけや理由を教えて下さい.
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★ 杉浦
学生の頃からこの研究室に所属していたので,縁があり,続けてるっていう形ですね.索引についてやりませんか?という誘いがあったので,まあいい機会だなと思ったので.C言語とかC++言語をガリガリに触ってみたいと思っていたので,そういう自分が望んでいるものと一致したので,索引技術の研究やってるっていう形になります.
♣ 熊谷
大学院時代に学会に参加して,NTT の研究者と話す機会があり,職場と職場の人のイメージが湧きました.いろんなテーマで研究されている方がいて,面白そうだなって思ったところが大きな理由ですね.あとはエンジニアのアルバイトをしていたので,アカデミア以外の世界に興味があったのが大きいかなと思います.
◆ 髙木
学生時代は文字列情報学というデータ構造とアルゴリズムの研究をしていたのですが,共同研究で大変お世話になった方が富士通の研究所に勤めていらしたんですよね.やはり企業の研究だと,会社の方針などで研究テーマが決まることがどうしてもあります.なので自身の興味のある分野と少し離れた研究をすることもあるんですが,その方はそんな中でも研究時間を捻出してとても楽しそうに研究していて,この組織に入れば,私も楽しく研究できるかもしれないと思い入社しました.
★ 杉浦
自分がアカデミアを選んだ一番大きい理由は,最終的なビジョンとしてずっと研究続けていきたいなっていう気持ちがあったんです.なので,企業に入ったとしても,アカデミア戻ろうとは思ってたんですけど,ちょうど博士取った段階でそのまま大学に残れることになったので,大学でしばらくやってみようということで今こうやっています.熊谷さん,アカデミアと企業で,企業を選ばれた理由があればお聞きしたいです.
♣ 熊谷
学生時代にエンジニアのアルバイトしてて,その職場は,営業,エンジニア,リサーチャーが一緒に働いているという環境でした.リサーチャーが検討した技術をもとにプロダクトが開発されて,それを営業の人が売るところを見ていて,売るもののネタになっているものを作る人の仕事をしたいなっていう興味が湧いたので,職に就きました.将来的には技術を売るとかプロダクト開発とか,そういうところにも興味があったので,大学よりも企業の方がそういう機会に恵まれると思って,企業の研究所を選びました.
◆ 髙木
熊谷さんは入社後,アカデミアに戻るかもしれないなとか,そういったことは考えたことはなかったんでしょうか?
♣ 熊谷
社会人ドクターで大学に継続的に通っていたんですけど,今のところ,事業よりの仕事もしたい気持ちの方が強いですね.
◆ 髙木
博士に行くか就職するかの選択があったと思うのですが,皆さんが博士課程に進学しようと思った理由はなんですか?
♣ 熊谷
私は修士を卒業して社会人で博士を取ったのですが,正直に言うと箔がつくというところが大きいです.上司からも,国際会議の場ではもちろんですが,ビジネスの場面でも博士と認識してもらえると,技術的に詳しい人なんだっていう視点で話を聞いてもらえると聞いていました.企業研究者としても将来的に良いだろうと思い,取りました.
★ 杉浦
自分の場合は学部四年生の頃の卒業研究ですね.研究をやってるうちに,たぶん自分はこの分野に割と向いてるぞみたいなことを感じて,研究に興味を持ちましたね.情報工学だったら,仮に博士とる過程でなんかトラブルがあっても食いっぱぐれないだろうっていう目論見もあって,博士まで行くことを決めましたね.
◆ 髙木
学部の時から研究がうまくいってたんですね?
★ 杉浦
うまくいったと言えるかはわからないですけど,やっていて楽しいって言ったら浅いんですが,研究活動をしてちゃんと突き詰めていって,結果を出していくのが結構自分に向いてるなって思ったので.なんとかなるだろうみたいな.
◆ 髙木
私の場合は,修士課程在学中に就職活動しようと思った時に,エントリーシートと面接で決まるのが不満だったんですよね.修士まで頑張って研究室通って研究したけど,大半の企業は採用のために私の論文を読んだりしないんですよ.私の時にはなかった言葉だと思うんですけど,就職面接ではガクチカ(学生の頃に力を入れたこと)がよく聞かれますよね.私のガクチカは研究なんだけどなって思って.博士卒の場合は,就職活動する時に研究の話を聞いてもらって面談してもらうのが結構いいなっていう思いがありましたね.
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◎学生時代,大学での研究と企業の研究でギャップを感じたこととその理由を教えてください.
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◆ 髙木
企業研究所に勤めてきた方はみんな言うと思うんですけど,企業には大きな方針があって,個別のテーマはトップダウンで決まることも多いんですよね.もちろん企業研究所でもボトムアップに研究テーマを提言することもできますが,アカデミアではほぼ100%自分個人で決められると思うのでそこにギャップを感じます.企業の研究所には,長期的なテーマに取り組む研究チームもあれば,比較的短期的な成果を目指すチームもあり,会社全体として最適化されるようにポートフォリオを組もうとします.短期・長期のバランスは,どうしても景気や業績にも左右されます.そういった要因で自身の研究や取り組み方が変わるところにもギャップを感じますね.
★ 杉浦
学生時代の研究だと自分のテーマ一個だけでOKだったのが,助教とかのポジションになってくると,学生の卒論や修論のテーマを一緒に考えることになるので,思い描いてたよりも短期的なテーマを頑張って考えないとやばいぞっていうのは,ちょっとギャップとしてはありますね.卒業研究だったら一年で,修論だったら二年でテーマ組まなきゃいけないので,その辺りはちょっとギャップですね.
♣ 熊谷
外的要因で研究テーマを考えなきゃいけないことが多いというの面はもちろんあります.もう一つは目標とする成果の形について,学会投稿という形ももちろんあるんですけど,プロダクト開発とか事業応用に繋げるとか,技術のフェーズによっていろいろなパターンの成果の出し方があるなっていうところが,大きく違うところかなと思います.
◆ 髙木
アカデミアで助教以上になると,どうしても研究以外の業務も行う必要があると思うんですけど,そういったところで当初考えていたアカデミア像とのギャップのようなものはなかったんですか?
★ 杉浦
助教だと授業がそんなにないってのもあるんですけど,演習とか実験の担当だけなので,まだそう感じないです.演習とかだとなんていうか,過去の資産があるので活用できたりするのと,もっといいものを作れるように考えるのは楽しいところなので,教育的なところも自分にはあってる気がします.
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◎取り組んでいる研究業務中で達成感を感じたこととその理由を教えて下さい.
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★ 杉浦
一点は学生と研究することが多いので,指導の特に実装関係ですね.学部生は結構手取り足取りしてあげることが多いんですけど,だんだん成長していって,GitHubでプルリクエストもらってほぼ9割完成みたいなことが出てくると成長してくれたみたいな達成感があります.もう一個は個人の研究で,索引構造をやってるんですけど,マルチスレッドとかの並列処理ってデバッガでも原因がわからないのがザラなので,ひたすらホワイトボードとにらめっこしながら考えて,解決していくと達成感が大きいですね.
♣ 熊谷
チームで開発したりだとか.予算を使って大規模なデータセットを作ったりとか.個人だとなかなか難しい技術検討をできていることを実感した時が,達成感感じたかなと思います.
◆ 髙木
チームでやって大きい成果が出ると達成感を感じることは企業ではよくあります.テレビで取り上げられるほどの成果っていうのも,私一人の研究だけではできなくて,いろんな人が関わってからできるんだなっていうのはよく思いますね.あとは企業ならではでいうと,お客様に技術を紹介したらすごい好評だったよとか事業部の方が報告してくれたりします.実際に使ってくれる人がいて喜んでくれた時に達成感を感じることが結構ありますね.
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◎学生の頃と比較して自分が成長したと思うことを教えて下さい.
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♣ 熊谷
課題設定の視野が広くなったっていうところがあって,学生の頃は論文調査で技術的な課題を中心に課題設定しかしてなかったんですけど,会社入って,世の中の動きだったりとか会社の方針だったりとかチームの目的とか,そういうことを考えて課題設定するところから,視野が広くなったかなって感じてます.
★ 杉浦
似たようなところで学生の頃の研究だと自分の研究を突き詰めればそれでOKみたいなところがあったんですけど,学生を持ち始めるとこの学生はこれができそうだけどこれはダメそうだみたいなところあるので,そういうとこ見ながらテーマを振ったりしていて,小さいチームではあるんですけど学生からマネジメントの視野が広がったっていうところは成長したところかなって思います.
◆ 髙木
私は興味を持つ研究の幅が広がりました.学生時代は離散アルゴリズムの中の1分野をずっと研究していて,正直それ以外は論文とかも読みませんでした.企業に入って全く別の世界も見てみると,学生時代やったことがこういうところで使えてるんだとか,今まで全然関係なかったと思ったところに興味を持って,研究を見られるようになりました.
◆ 髙木
企業研究所のよかったことの一つに,論文を出すだけでなくプレスリリースや特許,商品化など,達成感を感じられるイベントがコンスタントに発生するというのがあります.アカデミアで一人で研究してると,どうしても詰まってしまうとか,なんかあまりうまくいかないこともあると思うんですね.そういった際にモチベーションをどう維持していますか?
★ 杉浦
学生に割り当てる研究はもちろんうまくいかないこともあるので,研究成果的なところだけで達成感探そうとすると厳しいものはあるんですけど,その中でも割り当てた学生が成長してくれるので,そういうとこを見れるのはいい点という気はしてますね.
◆ 髙木
熊谷さんは会社では一つのテーマに集中してやられてるんですか?複数のテーマにある程度関わって並行してやってるんでしょうか?
♣ 熊谷
研究と開発と事業応用みたいな三つのフェーズでざっくりと並行してやっていて.研究で論文書くところは中長期的に長い目で見てて,逆に開発とかは結構コンスタントに成果が出るので,その点でバランスがいいですね.頭の使い方がフェーズによって違うので,混乱しそうっていうのはありますけど,メディアの露出があるのは,刺激的ですね.技術の動画作ってもらって,プロにかっこいい動画作ってもらったりとか,そういうところで嬉しさはありますね.
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◎今後に取り組みたいことを教えて下さい(キャリアパス,研究テーマ,気になる技術など).
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★ 杉浦
せっかくデータベースの研究に取り組んでいるんで,1回ぐらい自分でデータベース作りたいっていう気持ちはありますね.全部やろうとすると大変すぎるので,データストアくらい実装することになるかもしれないんですけどチャレンジしたいと思ってます.
◆ 髙木
最近マネージャー業務にも少し関わるようになってきました.自分の関わっているプロジェクトのプロダクトをうまくインパクトある形で出したら,一緒に働いているチームの研究者たちも喜んでくれるだろうし,まずはそこに挑戦したいと思ってます.あとは,企業の研究者とアカデミア研究者っていう立ち位置があると思うんですけど,企業の研究者でありながらも,アカデミアに接近してる人っていうのは昔から結構いて,わたしも学会活動とかでどんどん貢献できたらいいなと思っております.
♣ 熊谷
私もやっぱりチームで今プロダクトを作っていて,事業会社に営業かける段階なので,実際に事業会社と一緒にサービス化したりとか,プロダクト化したりとかして,世の中に出していくところを経験してみたいなと思っています.
★ 杉浦
キャリアパスに向けてどう成長したいか考えてることがあったら聞かせてください.自分だと,キャリアパスとしては大学に残りたいなとぼんやり思ってるんですけど,教授になって研究室を始めると中小企業の社長みたいなもんだっていうことを聞くので,そうなってくるとお金取ってくる力だったり,学生を教育する力など,いろんな能力がいるのでその辺頑張りながら伸ばしたいと思っています.
◆ 髙木
研究業務だけでなく,チーム間の連携とか,この技術をここに持っていくと喜ばれそうだなとか,そういったことを考えて動くことが必要になってきています.そういった能力を身に着けたいですね.
♣ 熊谷
私も目標とするところがプロダクトだったり,事業応用なので,どういう技術が求められてるのかの理解とか,予算取ってくるとか,皆さんがおっしゃる通りで中小企業の社長みたいな話になってきちゃうんですけど,研究を個人でやる以外のところを今後は経験して成長したいなと思っています.
● 駒水(司会)
皆さん色々キャリアパスを考えていらっしゃると思うんですけど,転職や出世を考えて,こういうアウトプットを積極的に出していきたいと思ってることがあれば教えて下さい.
◆ 髙木
研究能力の向上のためっていうのがあるんですけど,企業の研究者でありながら,アカデミアに近いコミュニティに少しでもいるっていうのも大事と思っています.職場では研究員が科研費やACT-Xなどに積極的に応募しています.あとは大学の通常の講義を持っている方もいます.そういった経験を積み,それを活かして企業でインパクトのある研究成果を出せたらいいなと考えています.
♣ 熊谷
将来的には研究した技術をもとにこうプロダクトを作って,それを事業化していくところを一貫して見れるような人になっていきたいなっていうのがあります.今のところは,研究論文とか筆頭著者で書く時期かなと思ってるんですけど,将来的には開発とか事業の経験も積んでいきたいなって思ってます.
★ 杉浦
まだ若手なのでやっぱり筆頭著者で論文を書こうってのはもちろんあるんですけど,それ以外のところで言うと,最近は作った実装をちゃんとオープンソースで公開して誰でも使ってもらえるように整備するところまで含めて研究するっていうのは意識してますね.そういうので人と繋がれるメリットがあるので,そこら辺を意識してやってます.
◆ 髙木
企業でもどんどん OSS 出していきましょうというのはやってます.出すとしたら組織としての意思決定が必要になって,個人の考えで勝手に公開することはできない.自身の研究成果をどんどんオープンにしていけるっていうのは羨ましいところと思いました.
★ 杉浦
企業のほうでOSS作られるとなんていうか,企業で作ったOSSっていう箔が付くからちょっと羨ましいなと思いますね.
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その他
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◆ 髙木
大学と企業の共同研究の在り方についてお聞きしたいです.大学の先生にはやりたい研究テーマがあり,それが必ずしも企業のやってほしいこととマッチしないことが多い.そんななか,どうすればいい共同研究ができるんだろうと考えています.皆さん,こういうふうにしたらもっと企業と大学が一緒に仲良く,お互いの利害が一致するように研究できるのになっていうのがありますか?
★ 杉浦
個人的なところで言うと,大学で研究してると最終的なクライアントに対する意識が希薄になっていくところはあるので,やっぱクライアントに近いところで研究できるっていうのは利点と思っています.共同研究の話とかで,研究ではなくて,既存のフレームワークで開発するだけな話に着地してしまうところがあって,バランスが難しいなっていうところはありますね.
◆ 髙木
今後って意味だと将来,例えば,10年,20年,30年後とかでもその研究者続けていく時に,やってる研究テーマが,そのまま続くイメージをもってなくて,30年後は恐らく違うことをやってるだろうなって,思うんです.その時に,常にモチベーションを保って,研究者としてやっていくっていうのには,どうしたらいいんだろうかと思うんですよ.ずっと研究者でいるためにはどうしたらいいのかっていうのは,私は答えがないので,こうしたらいいんじゃないかみたいのがあったら,その教えてください.
★ 杉浦
どんなプロジェクトで,どんなテーマであってもやっていたら結構深くて面白いぞっていうのはどこでもあると思うので,そこでモチベーションを保っていくんじゃないかなって気はします.学生の頃のデータストリーム処理の研究から索引構造とやってる内容ががっつり変わったんですけど,それも楽しいっていうのはあったので,きっとどんな研究も楽しかろうくらいの気持ちではいますね.
♣ 熊谷
現場の人にヒアリングするみたいな機会があって,直接困ってることを聞くと,どうにかしたいなみたいな気持ちになって,自分の中でそういう欲求が出てくるなって感じたことがあったので,多分30年後になっても困ってる人はいると思うので,解決する手段として,今の専門分野ではないかもしれないですけど,何かしら技術をベースに解決していくところは変わらず取り組んでいるんじゃないかなって思っていますね.現場の声を聞くところがモチベーションの保つところなのかなって感じてます.
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後日談:今回の対談企画に参加した感想を聞かせてください.
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★ 杉浦
お二人との対談とても楽しく過ごすことができました.今回アカデミアからは私だけでお二人とも企業に所属されている方でしたので,普段から意識していることやキャリアパスもやはり異なるのだなということを再認識し,諸々刺激的な時間でした.改めまして,対談に参加された髙木様,熊谷様,ならびに企画いただいた駒水先生誠にありがとうございました.
◆ 髙木
非常に充実した時間を過ごすことができました.普段の仕事ではお会いできない皆様とお話しでき,とても刺激を受けました.また,この対談を通じて自分自身を見つめ直し,今後のキャリアについて再考する良い機会となりました.素敵な企画にお声がけ頂きました駒水先生,本当にありがとうございました.
♣ 熊谷
お二人の仕事やキャリアのお話,新鮮でとても貴重な時間を過ごすことができました.お互いの職場で異なる部分も多くあるものの,将来的には教育やマネジメントの経験をして業務の幅を広げていきたいというところに共通点を感じ,印象的でした.改めて,杉浦様,高木様,そしてこのような機会をご用意頂きました駒水先生,本当にありがとうございました.
● 駒水(司会)
最後までお読みいただきありがとうございます.
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