日本データベース学会

日本データベース学会 Newsletter 2026年5月号 (Vol.19, No. 2)

目次:日本データベース学会受賞特集号

  1. 日本データベース学会功労賞
    1. 日本データベース学会功労賞を受賞して ~研究データ資源の構築と共用~
      大山 敬三(国文学研究資料館/国立情報学研究所)
    2. 日本データベース学会功労賞を受賞して ~私とデータベースの関わり~
      土田 正士(東京都立大学)
  2. 日本データベース学会若手功績賞
    1. 日本データベース学会若手功績賞を受賞して 〜20代はデータベース、30代はAIチップ、では40代は?〜
      上田 高徳(日本アイ・ビー・エム株式会社)
    2. 日本データベース学会若手功績賞を受賞して 〜コミュニティに育てられ、新たな価値創出を目指して〜
      王 元元(山口大学)
    3. ⽇本データベース学会若⼿功績賞を受賞して 〜DBコミュニティを通して得た貴重な人脈〜
      豊田 真智子(NTT株式会社)
    4. ⽇本データベース学会若⼿功績賞を受賞して 〜皆様の支えへの感謝と、変わらぬ興味を胸に〜
      山本 岳洋(兵庫県立大学)
    5. ⽇本データベース学会若⼿功績賞を受賞して 〜懐の深いデータベースコミュニティと共に〜
      若林 啓(筑波大学)
  3. 日本データベース学会上林奨励賞
    1. 日本データベース学会上林奨励賞を受賞して 〜DBとHPCが交差するとき〜
      新井 淳也(NTT株式会社)
    2. 日本データベース学会上林奨励賞を受賞して 〜研究の歩みと今後の展望〜
      Imrattanatrai Wiradee(産業技術総合研究所)

本号では、DEIM2026のDBSJアワーの受賞者の声を特集し、ご寄稿いただいております。

本号ならびに DBSJ Newsletter に対するご意見あるいは次号以降に期待する内容についてのご意見がございましたら news-com [at] dbsj.org までお寄せください。

DBSJ Newsletter 編集委員会
(担当編集委員 北山 大輔)


1.日本データベース学会功労賞

日本データベース学会功労賞は、我が国のデータベース、メディアコンテンツ、情報マネージメント、ソーシャルコンピューティングに関する科学・技術の振興をはかり、もって学術、文化、ならびに産業の発展に大いに寄与された日本データベース学会の会員の功労を賞するためのものです。

表彰規定や歴代の受賞者は以下のWebページからご確認いただけます。
日本データベース学会功労賞


1-1.日本データベース学会功労賞を受賞して ~研究データ資源の構築と共用~

大山 敬三(国文学研究資料館/国立情報学研究所)

この度の功労賞の受賞にあたり,日本データベース学会ならびに我が国データベースコミュニティの皆様に心より感謝申し上げます。

私は1985年に東京大学文献情報センターに奉職して以来,1986年からは学術情報センター,2000年からは国立情報学研究所と,組織改編を経ながら40年以上にわたって共同利用機関に身を置き,情報検索やテキスト処理等の情報アクセス技術の研究に携わる一方で,情報学研究者コミュニティに向けたデータの共同利用に取り組んできました。日本データベース学会の関係では,2001年から2005年までTODの共同編集委員長を務め,2020年からは私が実行委員長を務めたIDRユーザフォーラムにおいてDBSJ DataChallengeを一体開催するなど,学会運営にも微力ながら貢献できたのではないかと思います。

この間,Webの爆発的普及,データサイエンスの展開,そして生成AIによる情報環境の劇的な変化などを経験しながら,情報アクセス技術やデータの共同利用の在り方を模索してきました。特に近年は研究データの公開・共有や利活用についての関心が高まる中,研究者コミュニティや関連企業の皆様のご理解もいただきながら,様々な制度的制約や研究者の負担と評価の在り方などの課題解決にも取り組んできました。今回の受賞は,そうした研究者コミュニティへの貢献についても評価いただけた結果と受け止めております。

3月5日の受賞記念講演では「データの共同利用」をテーマとし,これまで私がかかわってきた情報検索サービス(NACSIS-IR),NTCIRプロジェクト,CiNii,情報学研究データリポジトリ(NII-IDR)を取り上げて,時々の情報環境や研究ニーズに応じて取り組んだデータベースの構築やデータセットの提供の考え方について振り返りました。

特にNII-IDRの活動は多くの関係者に支えられ,企業や研究者からデータセットを受け入れて,広く研究者に提供しています。もしまだNII-IDRをご存じでない方がいらっしゃいましたら,何をやっているものか一度ウェブサイトを覗いていただけると幸いです。

私は現在,日本文学に関する大学共同利用機関である国文学研究資料館に設置された古典籍データ駆動研究センターにおいて,古典籍(江戸期以前の書籍)を中心としたデータベースの構築や人文学におけるデータ駆動研究の推進のために,情報学との橋渡しとして異分野融合研究に取り組んでいます。文化も歴史も異なる分野の研究者と協働する中で,データに関する考え方が分野によって大きく異なることを実感する一方で,データベースや情報技術の持つ可能性を再認識することも多々あります。この分野にご興味をお持ちの方がいらっしゃいましたら,気軽に声を掛けていただけると幸いです。

日本データベース学会とデータベースコミュニティの皆様方の益々のご発展,ご活躍を祈念いたします。

著者紹介:
大山 敬三(国文学研究資料館 特任教授/国立情報学研究所 特任教授)

oyama
1985 年東京大学大学院工学系研究科電気工学専攻博士課程修了。その後,東京大学文献情報センター助手,学術情報センター助手・助教授・教授,国立情報学研究所教授及び総合研究大学院大学複合科学研究科教授を経て,現在,国文学研究資料館特任教授及び国立情報学研究所特任教授。情報検索,文書処理,情報アクセス・利用技術,人文情報学などの研究に従事。工学博士。

1-2.日本データベース学会功労賞を受賞して ~私とデータベースの関わり~

土田 正士(東京都立大学)

私は当時「花形」とされた世界一のメインフレームコンピュータの開発を希望し、1983年4月に入社した。しかし、配属はシステム開発研究所であった。大学の恩師を訪ねると、「花形はやめて、これからのデータベース分野は面白い」と助言をいただき覚悟は決まった。社会人人生は思わぬ方向転換から始まった。データベース製品で未出荷のものがあるという。上司からこう指示された。
「ソースコードを取ってきて」
空の磁気テープを持参してバスに乗り、電車を乗り継ぎ、ソフトウェア工場まで行った。今ならソースコードなどサイトからダウンロードすれば済むはずだ。新人時代にRDB(Relational Database)に出会い、そのソースコードの上に様々なアイディアを実装するという「モノづくり」に没頭できたのは幸いであった。以来40年を超えてデータベースに携わり続けている。

1990年代初め、ダウンサイジングやオープンシステムの潮流が到来した。当時、すでに海外のデータベース製品を扱っており、自社データベース製品開発に着手するかどうかは社内で大議論となった。そこで、システム開発研究所での1年半の先行(実質的には「潜行」)研究では高スケーラブルデータベース統合基盤の「アーキテクチャ設計」に専念し、渾身のアイディアを製品として実現した。今でこそクラウド時代では数万コアを超えたシステムを活用することが当たり前となっているが、当時4096コアは海外製品をはるかに上回る数字だった。将来的なニーズに応えるため高スケーラブルデータベース統合基盤はデータベース製品HiRDBへと引き継がれた。製品名には、”Highly scalable”RDBの略称HiRDBを採用した[1]。

1990年代後半に転機が訪れた。HiRDBで開発する仕様を国際標準にする必要性が生じ、ISOにてSQL標準化議論に加わり「標準化策定」に注力することになる。メディアコンテンツなど多様化する情報を一元的に扱うための各種検索機能(日本語文書全文検索,地図情報検索,画像情報検索,バイオデータ情報検索),ネイティブXML機能を製品として提供しつつ、そこで得た知見をISOでの活動にもつなげた。これまでは自社製品のために研究をしていたが、標準化となると広く業界や社会のための活動となる。立ち位置、価値観や考え方が変わり、日立での仕事を客観的にとらえ、またデータベースはどうあるべきかと考えるようになった。並行して、業務と両立しつつこれまでの研究成果をまとめた。2011年の春に学位を取得し、ついに「Dr.SQL」になった[2]。

2010年代はビッグデータ時代を迎え、また2020年代はクラウド環境で本格的にAI応用のためのデータベースが試行され始めている。昨今、生成AIをビジネスシステムに活用する実践事例が急激に増加している。一般的にLLM(Large Language Model)は公開されている情報に基づいて学習されたものであるので、ビジネスシステムに適用するためにはSQLデータベースに格納されているビジネスデータでLLMを補強することが必須である。これをRAG(Retrieval-Augmented Generation)機能と呼び、次期SQL2027では主要な開発項目である。クラウド環境への浸透もありSQLデータベースの売上規模が十数兆円を超える勢いである。私は引き続き標準化の場に日本を代表するアーキテクトとして参画している。規格開発の場で議論されるのは、規格内容だけではなく、将来の方向性、実装技術など最新の技術動向、潮流を探る場としても重要である。今後とも、ビッグデータ時代、クラウド時代を経て、50年を超えて更なるデータ活用基盤がどうあるべきかを考え続けていけると幸いである。

[1] 土田正士,高スケーラブルデータベース統合基盤HiRDB物語,通信ソサイアティ
マガジン,No.64,春号,2023.
[2] 加山 恵美,DBプロに会いたい!日立の「Dr.SQL」登場-土田正士さん
(https://enterprisezine.jp/article/detail/4403) 公開日: 2012/12/17

著者紹介:
土田正士(東京都立大学)

tsuchida
1983年筑波大学大学院理工学研究科修了.同年株式会社日立製作所システム開発研究所入社.データベース管理システムの研究開発,ビッグデータ事業開発に従事.2011年静岡大学大学院自然科学系教育部情報科学専攻修了.博士(情報学).2018年国立情報学研究所を経て,現在東京都立大学ソーシャルビッグデータ研究センター所属.ISO/IEC JTC 1/SC 32日本代表,情報処理学会情報規格調査会SC32専門委員会委員長及びSC32/WG3(SQL)小委員会委員.2005年同会標準化貢献賞,2015年同会喜安記念業績賞,2020年同会CS領域功績賞.情報処理学会フェロー.

2.日本データベース学会若手功績賞

日本データベース学会若手功績賞は、本会の活動に多大なる貢献をしてきた若手会員を賞するもので、本会の対象とする研究分野において優れた実績を有する場合もその対象となります。

表彰規定や歴代の受賞者は以下のWebページからご確認いただけます。
日本データベース学会若手功績賞


2-1.日本データベース学会若手功績賞を受賞して 〜20代はデータベース、30代はAIチップ、では40代は?〜

上田 高徳(日本アイ・ビー・エム株式会社)

この度は、日本データベース学会若手功績賞という栄誉ある賞を賜り大変に嬉しく存じます。授賞式のため、数えること13年ぶりに DEIM に参加させていただき、旧知の方々とお話しすることができました。やはりここが自分の故郷であるという思いを新たにしたところです。長らくDEIM への貢献はできておりませんが、各種委員やWebDBのお手伝いなどさせていただき、なんとか大目に見て頂いてこの度の賞に選んでいただいものと考えております。これまでご支援くださった皆様に心よりお礼申し上げます。

思い返せば、私が初めて参加した学会は、学部4年の夏に新潟 月岡温泉で開催されたDBWS 2006でした。当時、同期とプログラミングコンテストで切磋琢磨していたところ、その優秀な彼が開発したプログラムが山名 早人 教授の目にとまり、まだ学部3年生ではありましたが、教授が実施されていたプロジェクトに私も参画することになりました。良い精度が出たため論文にまとめ、共著者ながら教授のご厚意でDBWSに参加させていただきました。当時は理由もなく研究職に憧れていましたが、DBWSは温泉地開催で様々な出し物もあり、私が勝手に持っていた学会のイメージとはかけ離れたものであったことを鮮明に覚えています。

それから 20代の殆どを大学での研究生活に費やし、特に、並列分散データストリーム処理やストレージに関する研究では、DEIM での最優秀論文賞や DBSJ ほか研究会連名での最優秀若手研究者賞など様々な賞をいただくことができました。これらの賞がなければ私の今のキャリアは存在せず、ご支援くださった皆様には感謝の言葉もございません。今回の賞はこの一連の成果の集大成として誇ることができると考えております。

博士課程修了後はIBM に入社し、これまた30代の殆どを費やしてシステムの高速化に取り組んできました。途中、ソフトウェアレベルでの高速化に限界を感じ、ハードウェアによる高速化を目指してAI チップ開発の世界に飛び込みました。5年間掛けて開発したAI チップはGPU比で25倍の電力効率と22倍のレイテンシ性能を達成し、まさに30代が終った時、Science に論文が掲載されました。この仕事は、大学時代に憧れていたデータベースの聖地、IBM Almaden Research Centerの一員として成し遂げたものです。結局はDBSJの皆様にご助言いただいたデータベースの研究活動が今の縁に繋がっているということになります。

20代はデータベース、30代はAIチップ、では40代になった今は何を成すべきでしょうか?AI の発展は目覚ましく、今後の人生で何に取り組むかは再考が必要に感じています。年齢を重ねるほど向上するという結晶性知能を活用し、現在の AI では難しい、分野横断的な仕事をなすべきではないかとも考えています。データ工学を学んできた視点では、現在の半導体分野におけるデータ管理には様々な改善の余地があります。そういった他分野の問題をデータベース分野でご紹介できないものかと考えています。多忙ゆえ実現できるか分かりませんが、もし今後お会いすることがありましたら、また暖かく迎えていただけますと幸いです。この度は本当にありがとうございました。

(本稿は結晶性知能を高めるべくAI を一切使わずに執筆しました)

著者紹介:
上田 高徳(日本アイ・ビー・エム株式会社)

ueda
2013年 早稲田大学大学院 基幹理工学研究科 情報理工学専攻 博士後期課程修了。博士(工学)。同年 日本アイ・ビー・エム株式会社入社。東京基礎研究所にて現在は超省電力 AI チップの研究開発を担当。並列分散データストリーム処理に関する研究などで、電子情報通信学会 論文賞、情報処理学会 コンピュータサイエンス領域奨励賞、DEIM 2012 最優秀論文賞など受賞。IEICEデータ工学特集号幹事、IPSJ TOD 編集委員、WebDB Forum 実行委員、同プログラム委員、IPSJ DBS運営委員、IEICE DE専門委員などを歴任。

2-2.日本データベース学会若手功績賞を受賞して 〜コミュニティに育てられ、新たな価値創出を目指して〜

王 元元(山口大学)

この度は、2025年度日本データベース学会若手功績賞という栄誉ある賞を賜り、大変光栄に存じます。選考委員の先生方、ならびに日頃より温かいご指導ご鞭撻を頂いておりますデータベースコミュニティの皆様に、厚く御礼申し上げます。

私は2014年に兵庫県立大学大学院環境人間学研究科にて博士(環境人間学)を取得後、京都産業大学、名古屋大学での研究員を経て、2016年より山口大学にて教育・研究活動に従事して参りました。学生時代、初めてDEIM(データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム)に参加した際の熱気と、諸先生方からの真摯かつ鋭いコメントに感銘を受けたことが、今の私の研究者としての原点となっております。

本賞の受賞は、私一人の力によるものではなく、これまでご指導いただいた多くの先生方のおかげです。博士課程での指導教員であり、研究者としての姿勢を説いてくださった角谷和俊先生(現・関西学院大学)、外部から貴重なアドバイスとご指導を賜りました田中克己先生(現・関西学院大学)、研究員として受け入れていただき、自由闊達な研究環境と議論の場を与えてくださった河合由起子先生(現・関西大学)と石川佳治先生(名古屋大学)、そして公私にわたり温かい助言と激励を頂いた中島伸介先生(京都産業大学)をはじめ、諸先生方には言葉に尽くせぬ感謝の念を抱いております。

これまで私は、Web情報学を基盤としつつ、異種メディア融合や観光情報学、そして近年では感性データ工学といった、実社会とデータの接点となる領域での研究に取り組んで参りました。これらの研究成果は、尊敬する先生方のご指導、そして共に研究を進めてきた共同研究者や研究室の学生たちの尽力なくしては成し得ませんでした。

また、DE研やDBS研の研究会運営や論文誌の編集委員など、学会活動にも微力ながら携わらせていただきました。若手研究者として、この温かく懐の深いコミュニティに育てていただいた恩義を、少しでもお返しできたのであれば幸いです。

今回の受賞を励みとして、今後もデータ工学分野のさらなる発展と、次世代の研究者育成に貢献できるよう、より一層の研鑽を積んでまいる所存です。今後とも変わらぬご指導ご鞭撻を賜りますよう、お願い申し上げます。

著者紹介:
王 元元(山口大学)

wang
2014年兵庫県立大学大学院環境人間学研究科博士後期課程修了。博士(環境人間学)。同年京都産業大学コンピュータ理工学部研究員、2015年名古屋大学大学院情報科学研究科研究員、2016年山口大学大学院創成科学研究科助教を経て、2022年4月より同准教授、現在に至る。主にWeb情報工学、異種メディア融合や観光情報学に関する研究に従事。IEEE、日本データベース学会、情報処理学会、言語処理学会各会員。

2-3.⽇本データベース学会若⼿功績賞を受賞して 〜DBコミュニティを通して得た貴重な人脈〜

豊田 真智子(NTT株式会社)

この度は、若手功労賞という栄誉ある賞をいただき、誠にありがとうございます。これまでご指導くださった方々、一緒にお仕事させていただいた方々、受賞に当たって推薦してくださった方々、多くの皆様に支えられて受賞できたものと痛感しており、心から感謝申し上げます。

私が初めてDBコミュニティに関わったのは、お茶大小口研に所属していた2005年のDEWSです。その後も夏のDBWSや翌年のDEWSという形で継続的に参加すると共に、当時の東大喜連川研、東工大横田研などとオフイベント(BBQや花火など)もご一緒させていただきました。また、DEWSでの宴会芸の披露なども加わり様々な方々と知り合いになれ、DBコミュニティが非常に居心地の良い場であると実感するようになりました。

社会人になってNTTに入社してからも、DBコミュニティに関われる分野での研究を進めたいという思いは消えず、現阪大の櫻井先生との出会いから一緒にデータストリームマイニングの研究を始めることになりました。櫻井さんをきっかけに部署や勤務地が異なり普段は会えない社内DBコミュニティの方々ともつながることができました。名大石川先生のもとで博士号を取得させていただき、その後はDBコミュニティの運営側に携わる機会を得ることができました。そのような機会もあり、学生後半からの人生においては、DBコミュニティ関連の新たな出会いが私の人脈の多くを占めています。

現在はマルチAIエージェントやグラフRAGに関する研究開発に従事しています。同じプロジェクトの若手メンバーはDEIMを貴重な研究発表・議論の場と位置づけ、論文投稿を行っています。また最近では、運営側に携わらせていただく新たなメンバーも出てきました。今後もDBコミュニティで活躍できる若手を輩出していけるよう、企業の立場から尽力できればと思います。

先日授賞式で11年ぶりにDEIMに参加しましたが、アットホームな場所に戻ってきた温かい感覚に包まれました。久しぶりに懐かしい面々にお会いしてお話をすることができ、短い時間ながらもとても楽しい記憶として残っています。当日お会いできなかった方々もたくさんいらっしゃいますので、今後の学会活動等を通してお会いする機会を大切にしながら、DBコミュニティの発展に貢献していきたいと思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

著者紹介:
豊田 真智子(NTT株式会社)

toyoda
2006年お茶の水女子大学大学院人間文化研究科修士課程了。同年日本電信電話株式会社(現NTT株式会社)入社。2012年名古屋大学大学院情報科学研究科博士後期課程修了。博士(情報科学)。2013年同志社大学嘱託講師、電子情報通信学会DE研専門委員、PAKDD2023レジストレーションチェアなどを歴任。データストリームマイニング、パターンマイニング、異常検知などの研究を得て、2026年よりマルチAIエージェントやグラフRAGに関する研究開発の主幹研究員・グループリーダー。

2-4.⽇本データベース学会若⼿功績賞を受賞して 〜皆様の支えへの感謝と、変わらぬ興味を胸に〜

山本 岳洋(兵庫県立大学)

このたびは、日本データベース学会若手功績賞という栄誉ある賞を賜り、大変光栄に存じます。ご推薦くださった方々、これまでご指導いただいた方々をはじめ、データベースコミュニティの皆様に感謝申し上げます。

DEIMでの授賞式でも少し触れさせていただきましたが、私がいまこうして元気な姿で皆様に対して感謝の気持ちを述べることができていることは、ただただ幸運であったと感じております。多くの方々にご迷惑をおかけしましたが、周囲の皆様の支えと温かい見守りのおかげで、今このように筆をとることができております。本来であれば、お世話になった方々お一人お一人のお名前をあげてお礼をお伝えすべきところですが、若手功績賞受賞というこの機会に、データベースコミュニティの方々へお礼をお伝えする場をいただけたものと思っております。この場をお借りして、関係するすべての皆様に深く感謝申し上げます。本当に、ありがとうございます。

私は長年、情報検索に関する研究に取り組んでいます。特に、ユーザと情報アクセスシステムとのインタラクションに強い関心を抱き続けております。DEIMの前身であるDEWS 2007(地元、広島での開催でした)に学部4年生で初めて参加した際の研究も、検索インタフェースに関するものでした。扱う対象やアプローチは変化してきているものの、私自身の根底にある興味は変わっていないのだなと、今回の受賞を機にあらためて実感しております。

このたびの受賞を大きな励みとし、自分らしいペースで研究を続けるとともに、データベースコミュニティの発展に少しでも貢献していければと考えております。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

著者紹介:
山本 岳洋(兵庫県立大学)

yamamoto
2011年、京都大学大学院情報学研究科博士後期課程修了。博士(情報学)。2019年、兵庫県立大学社会情報科学部准教授。2021年4月より、兵庫県立大学大学院情報科学研究科准教授。情報検索、特にユーザと情報アクセスシステムとのインタラクションに関する研究に従事。日本データベース学会、情報処理学会、電子情報通信学会、人工知能学会、ACM 各会員。

2-5.⽇本データベース学会若⼿功績賞を受賞して 〜懐の深いデータベースコミュニティと共に〜

若林 啓(筑波大学)

この度は日本データベース学会若手功績賞という栄誉ある賞をいただき、大変光栄です。これまでご指導いただいた方々、支えてくださった方々に御礼を申し上げます。

私が日本データベース学会に関わるようになったのは、学部3年生の時にDEIM(当時はDEWS)に参加したことが始まりです。その頃のDEIMは合宿形式で、夜遅くまで学生同士で「議論」をしていたのが懐かしく思い出されます。指導教員の三浦孝夫先生には、当時の未熟な私の取り組みを発表できる内容になるまでご指導いただいて、そのような経験の場を与えてくださったことに大変感謝しています。今振り返ってみれば、その中で少しずつ広がっていった学会のコミュニティの人々とのつながりが、これまで研究活動を続けてきて得られた最も大きな財産の一つになっていることを感じます。そのおかげで、学会の様々な仕事に携わる機会もいただきましたし、研究の様々な場面でもコミュニティの皆様に助けられてきました。そうしたつながりに支えられながら取り組んできた研究や学会活動を、このたび評価していただけたのだと感じています。

学会というコミュニティは、新しい技術、新しい研究展開を生み出す場である以上、常に変化し続けていく宿命を負っていると思います。その一方、データベースという研究分野は非常に奥行きがあって懐深い分野であり、今後もますます発展していくポテンシャルを強く感じます。直近では、LLMの登場で計算機科学分野の潮流が大きく変化しましたが、AIの生成する文章や画像、音声、動画、プログラム、ロボットの行動計画、内部表現やパラメータも、データという観点から捉えることができる以上、それらをいかに管理し、処理し、分析し、活用するかという課題は、データベースの研究分野の射程に十分入るものだと考えられます。特に日本のデータベースコミュニティは、データベースという分野を広く捉え、機械学習や自然言語処理、情報検索、HCIなど、データに関わる多様な研究分野の人々が集まる場を形成してきたという経緯があります。こうした学際性は、これからの新しい研究の潮流を柔軟に取り込むための大きな強みになるのではないでしょうか。

諸先輩方が築き上げてこられたこのコミュニティを、今後どのように発展させていくべきなのかは、これからも考え続けていくべき重要な課題なのだと考えています。このコミュニティに育てていただいた一人として、日本データベース学会がそうした研究に携わる人々のつながりを支える場として発展し続けられるよう、これからも微力ながら貢献していく所存です。今後ともご指導ご鞭撻をいただけますよう、よろしくお願いいたします。

著者紹介:
若林 啓(筑波大学)

wakabayashi
2012年法政大学大学院博士課程修了。博士(工学)。筑波大学図書館情報メディア系助教を経て、2020年より准教授。機械学習、自然言語処理、マルチエージェント強化学習、創発コミュニケーション、AI内部機序解釈の研究に従事。IEICEデータ工学特集号編集副委員長、TOD幹事補佐、DEIM/SoC/WebDB実行委員、DBS研運営委員、DE研幹事補佐などを歴任。

3.日本データベース学会上林奨励賞

上林奨励賞は、故 上林弥彦 日本データベース学会初代会長のご遺族からご寄贈頂いた資金を活用し、データベース、メディアコンテンツ、情報マネージメント、ソーシャルコンピューティングに関する研究や技術に対して国際的に優れた発表を行い、かつ本会の活動に貢献してきた若手会員を奨励するためのものです。

表彰規定や歴代の受賞者は以下のWebページからご確認いただけます。
日本データベース学会上林奨励賞


3-1.日本データベース学会上林奨励賞を受賞して 〜DBとHPCが交差するとき〜

新井 淳也(NTT株式会社)

この度は上林奨励賞を賜り大変光栄に存じます。私のこれまでの研究を高く評価していただいたことを嬉しく思います。また、これまで私の研究を支えてくださったデータベースコミュニティの皆様に感謝申し上げます。

高校時代から大学入学頃にかけてマルチコアCPUが一般に普及したということもあり、私は学生の頃から一貫して並列計算に関心を持っています。東京大学の学部時代は米澤明憲先生の研究室に所属し、その後先生のご退官に伴い石川裕先生の下で修士時代を過ごしました。関心はやがてスーパーコンピュータへと移り、「京」で大規模な並列計算を行う興奮や初の国際会議参加であったSC12の熱気が今に至る高性能計算(HPC)分野への傾倒と、研究者としての進路選択を決定付けたと思っています。

そんな私がデータベース分野に足を踏み入れたのはNTTに入社したときです。大学時代はデータベース分野の研究に触れる機会がほとんどありませんでしたが、当時NTTに勤めていらっしゃった鬼塚真先生と塩川浩昭先生の指導の下で大規模グラフ処理の研究に取り組み始めました。私の印象では、データベース分野ではデータとワークロードの性質をよく観察し、それを捉えたアルゴリズムによって処理を高速化する方法論が特に重要視されているように感じます。このような方法論は当時の私にとって新鮮であり、この分野に引き込まれる理由のひとつになりました。また、アルゴリズムの改良は時に並列計算では及びもつかないような劇的な高速化を引き起こします。それを達成したときは驚くほどの高揚感がありましたが、後にほぼ同じアイデアが半世紀前にリチャード・ストールマンによって提案されていたことを発見し落胆しました。その研究をまとめた論文は手法の進歩性が認められたためか無事SIGMOD 2023に採択されました。

さらに、アルゴリズムによる計算自体の削減とスケーラブルな並列分散計算を組み合わせることで一層高い性能を得ることができます。2024年のSC24で発表した論文では、計算結果が不変となる部分をグラフデータから分離する前処理を導入することでスーパーコンピュータ「富岳」の幅優先探索の性能が顕著に向上することを示しました。もし私がデータベース分野に入っていなければそのようなアプローチは思いつかなかったかもしれません。

近年ではLLMの発達によりテキストデータの情報を知識グラフとして構造化することが容易になりました。また、グラフで表現された情報をAIに活用させるための技術も発展しています。グラフの大規模化と用途拡大が進む中、その管理と処理を支えるデータベース技術は、スーパーコンピュータのような高性能システムにおいても重要性を増していくと考えています。次の時代に求められる技術の創出に向け、今回の受賞を励みとして一層力を尽くしてまいります。

著者紹介:
新井 淳也(NTT株式会社)

arai
NTTコンピュータ&データサイエンス研究所 主任研究員。博士(情報科学)。2013年3月東京大学大学院情報理工学系研究科修士課程修了、同年4月日本電信電話株式会社(現NTT株式会社)入社。2019年3月大阪大学大学院情報科学研究科 博士後期課程修了。大規模グラフ処理と並列分散計算に関する研究に従事。日本データベース学会、ACM、情報処理学会各会員。

3-2.日本データベース学会上林奨励賞を受賞して 〜研究の歩みと今後の展望〜

Imrattanatrai Wiradee(産業技術総合研究所)

日本データベース学会上林奨励賞を賜りましたことを、大変光栄に思っております。このような形で研究を評価していただきましたことに、選考委員の皆様へ心より御礼申し上げます。また、この賞は決して私一人の力によるものではありません。これまで多くの指導教員の先生方、同僚の皆様、共同研究者の皆様からいただいたご指導、ご支援、そしてご協力の積み重ねによるものです。この場をお借りして、皆様に心より感謝申し上げます。

振り返りますと、私の研究は一貫して、「構造化された情報をどのように活用すれば、知的システムが世界をより深く理解できるのか」という関心に導かれてきました。京都大学大学院情報学研究科における博士課程では、構造化知識を取り入れたデータマイニングの研究に取り組みました。SIGIR 2019で発表した国際会議論文では、関係抽出の課題を対象とし、文がエンティティのどのような属性を表しているかを分類する研究を行いました。特に、ゼロショット学習の設定に対応するために知識グラフ埋め込みを導入し、未知の関係に対してもモデルがより適切に一般化できることを目指しました。

その後、国立研究開発法人産業技術総合研究所(AIST)に研究者として着任してからは、研究の対象をヒューマン・マシン・インタラクションへと広げ、特にタスク指向対話、映像に基づく対話、質問応答システムに取り組んできました。一見すると、これらの研究は博士課程での研究テーマとは異なるように見えるかもしれません。しかし、私にとっては、「適切な情報を見つけ、それを正しく解釈し、人にとって有用な形で応答できるシステムをどのように設計するか」という共通の問いで結ばれています。

近年、AIシステムには、複数の種類の情報を同時に扱うことがますます求められるようになっており、この問いの重要性はさらに高まっています。現在は、テキスト、画像、動画、そして構造化データを組み合わせて扱うマルチモーダルな研究に取り組んでいます。異なる情報源の中から本当に重要な情報を的確に見極め、それを適切に活用したうえで、有用な、かつ事実に基づいた応答が可能なシステムの実現を目指しています。こうした研究成果の一部は、Findings of ACL 2023 や AAAI 2025 などで発表する機会にも恵まれました。

今後も、信頼性が高く実用的なシステムの研究を通じて、研究コミュニティに貢献していきたいと考えております。また、ささやかではありますが、自分自身の歩みが、若手研究者の皆様が好奇心と粘り強さをもってそれぞれのアイデアに挑戦するための後押しになれば、大変嬉しく思います。

このたびのご評価に心より感謝申し上げますとともに、今後も感謝の気持ちを忘れず、決意を新たに研究に励んでまいります。

著者紹介:
Imrattanatrai Wiradee(産業技術総合研究所)

wiradee
京都大学大学院情報学研究科社会情報学専攻にて修士号および博士号を取得。現在、国立研究開発法人 産業技術総合研究所(AIST)人工知能研究センター研究員。エージェントAI研究チームに所属し、マルチモーダルデータおよび知的システムを活用したヒューマン・マシン・インタラクションの高度化に関する研究に従事している。

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